2019.09.23

アナログ回転盤でデジタルウォッチを作ったら、こうなった【個性派時計アカデミー#3】

視認性最高のデジタル表示

コンプリケーションの難題を新発想で見事にクリア

独自開発のアワー&ミニッツディスクが高度に連携してジャンプ!センターに浮かび上がる時刻表示は明瞭そのものだ。ジャンピング表示の常識を超えた、会心の複雑機構。

時刻の読み方 9時41分
時刻の読み方は一般的なデジタル表示と同様。「時」と「分」の間9時41分 には「:」マークが配される。

 

10枚の回転盤が連携してデジタル表示を作り出す

4N
4N-MVT01/D01/42

名門ムーブメントブランド「ルノー・エ・パピ」が参画し、4年がかりで開発した回転ディスク表示のコンプリケーション。世界限定16本。手巻き。ケース37×52㎜。18KWGケース。カーフストラップ。3気圧防水。3000万円。お問い合わせ先:ノーブルスタイリング

 

ココが個性的!

数字を複数ディスクが分割担当
「メカニカル・トランジスター」機構で10枚のディスクを効率的に駆動。ニッケルとシリコンを用いたモジュール式の回転盤は最小の力で回転させることができ、駆動時間の延長にも貢献。

シリコン素材をムーブの主要部分に採用
フェイス下方にエスケープメントをセット。ひげゼンマイの素材は最新式のシリコンで、さらに駆動輪列の歯車にもシリコンを採用。精度や駆動効率が大幅に向上している。

<b>数字を複数ディスクが分割担当</b><br>「メカニカル・トランジスター」機構で10枚のディスクを効率的に駆動。ニッケルとシリコンを用いたモジュール式の回転盤は最小の力で回転させることができ、駆動時間の延長にも貢献。
<b>シリコン素材をムーブの主要部分に採用</b><br>フェイス下方にエスケープメントをセット。ひげゼンマイの素材は最新式のシリコンで、さらに駆動輪列の歯車にもシリコンを採用。精度や駆動効率が大幅に向上している。

 

最先端の回転盤が織りなす、思わず見とれる“表示テク”

数字入りのディスクを瞬時に回転させて時刻を表示するジャンピング機構は、ポピュラーな複雑機構。だが「時」と「分」の両方で行おうとすると、スペース的な制約で数字を縮小せざるを得ない、また両者を並べて表示するのが困難など、俄然難易度が上がる。

この問題を、華麗な手腕で解決したのがこちら。フェイス中央に、液晶のそれに勝るとも劣らぬ明るさで「時」「分」が“デジタル表示”されるのだ。

使用ディスクはなんと10枚。4枚が「時」、1枚が「分」の10の位、5枚が同・1の位を担い、連携して時刻を示す。消費トルクを最小限に抑える新機構を採用しており、多数のディスクをゼンマイの残量に関係なく安定して駆動させることが可能だ。パワーリザーブは10日間で、複雑機構の可能性を従来とは異なる方向性で開発した。まさに“個性派”の名にふさわしい。

 

ブランド名は「4NUMBERS」(4つの数字)の略

独創的なコンプリケーションで知られる「オートランス」の立ち上げに関わったフランソワ・カンタンが2009年に設立。指針を用いない、回転ディスクのデジタル表示の可能性を追求し続けている。

カンタンはテクノロジーについて学んだ後、1986年からフリーデザイナーとして活躍。欧州のブランドで人気モデルを多数手がけた。

 

[時計Begin 2019 SUMMERの記事を再構成]
文/川口哲郎