2019.11.25

30万円で手に入るグランドセイコー最強のクォーツ「9F」とは?【納得価格の〈嬉〉時計】

グランドセイコーの9Fを、ただのクオーツと決して侮るなかれ。超高精度と力強さ、そして独自の機構でクオーツの常識を覆す。

 

フラットなケースで9Fクオーツの新境地を開拓!

「スポーツ派」にはこの搭載機!

ケースに切り立つようにベゼルを造作。大型のラグは、強い傾斜でファセットカット。既存のGSにはなかった力強いフォルムが新鮮だ。スポーティな外観に、Cal.9F82を搭載。カジュアルに使いこなしたい1本。

 

 

GRAND SEIKO(グランドセイコー)
右/SBGV245
左/SBGV243
造形や色、素材でGSのイメージを一新

大型の針をクオーツで実現。その針と植字インデックスには、ルミブライトが組み込まれ、暗闇で強く光る。ケースには強い筋目が施され、ストラップはナイロン製と、GSに新風を吹き込む意欲作。右はグレーでシックな装い。左はビビッドなイエローを効かせ、若々しい印象に仕立てている。クオーツ。径40㎜。SSケース。コーデュラナイロンストラップ。各30万円。お問い合わせ先:グランドセイコー専用ダイヤル

 

GSらしさが堪能できるクオーツを超えたクオーツ

1970年代半ばに一旦は途絶えたグランドセイコーの名が、見事に復活を果たしたのは1988年のこと。その新生GSが搭載したムーブメントは、“年”差±10秒という超高精度クオーツだった。そして1993年、その技術を進化させたクオーツを超えたクオーツ「キャリバー9F」が誕生する。

超高精度を叶える一番の理由は、水晶振動子にある。ごくわずか生じる固有振動数の個体差をより分け、厳選。さらに3ヵ月の間、電圧をかけてエイジングさせることで、振動数を安定させてから使用しているのだ。さらに独自の温度補正回路を搭載することで、年差±10秒の高精度は実現される。

しかも9Fは、高精度なだけではなく、パワフルでもある。一般的なクオーツはトルクが小さく、機械式のような大型の針は動かせない。そこでモーターへのパルス信号を通常の1秒に1回から2回にする「ツインパルス制御モーター」を開発。信号を増やすことで、ローターからの軸トルクを高め、大型の針を動かせるようになった。その秒針の動きは、輪列終端に設置したゼンマイによるテンションで、歯車間の遊びを極小化する「バックラッシュオートアジャスト機構」で制御され、正確にインデックスを指し示す。また、ジャンパーバネを備える日回し車による瞬転式日付表示も、トルクの大きな9Fにしかできない。クオーツを超えたクオーツと称賛されるゆえんだ。

ほかにも時・分・秒の各針を取り付ける軸をそれぞれ完全に独立させているのも、9Fの特徴。この「3軸独立ガイド構造」は、各軸が干渉し合わず、独立して回転し、針の動きを滑らかにする。さらに針合わせの際に時針と分針がぶれず、耐久性も向上する。

これら独創的かつ革新的な機構を盛り込むことで、9Fはクオーツの常識を覆した。その外装は、GSらしく極めて上質。しかも機械式やスプリングドライブのGSと比べて、価格的に抑えられている。別格の高精度と最上級の仕上げの外装とが身近な価格で得られる9Fは、賢者の選択である。

 

9Fクオーツの一番人気は「厚銀放射」ダイヤル!

「クラシック派」にはこの搭載機!

シルバーのダイヤルの表面に、繊細な筋目模様が放射状に広がる。サンレイやソレイユと呼ばれるこの装飾でも、GSは独自性を発揮。熟練の手業が作り出す厚銀放射は、深みと厚みのある美観で他社を圧倒する。

 

SBGX263
GSらしい機能美と高性能を凝縮

ケースのフォルムとダイヤルのデザインは、GSの王道。袖口にしっくりと収まる小振りなサイズにもかかわらず、強い存在感を放つのは厚銀放射ダイヤルによる。光を受けてニュアンスを変えるその色は、シャンパンゴールド風で高級感をより増す。精度や機能の高さはそのままに小型化したCal.9F62搭載。ブレスレット仕様でこの価格は、まさに納得!径37㎜。SSケース&ブレスレット。23万円。

 

 

 

[時計Begin 2019 AUTUMNの記事を再構成]
写真/谷口岳史 文/髙木教雄 構成/市塚忠義