2019.10.30

防水時計の覇者、ミドーを知るための5つのキーワード

祝! オーシャンスターコレクション75周年

構成・文/TAYA

2019年9月、スペイン・ビルバオにてスイスの老舗時計ブランド、ミドーのオーシャンスターコレクション75周年を祝う式典が開催され、同時にミドーがオフィシャルパートナーを務めるレッドブル・クリフダイビング・ワールドシリーズ2019のグランドファイナルが行われた。半世紀以上前に誕生したオーシャンスターとは? なぜ、スペインなのか? そして、ミドーとクリフダイビングの関係は? 5つのキーワードからその謎を解き明かしていく。

1 防水パッキンシステムの先駆け「コルク・クラウンシーリングシステム」

1930年代にミドーが開発し、のちに「アクアデュラ」と名づけられたコルクを使用したリューズの防水システム。図の13番の部分がコルクを使用したパッキン部分である。

腕時計における防水パッキンとして、現在主流のOリングが採用され始めたのは1960年代。1930年代に、いちはやくパッキンをつかった防水システムに注目し、その素材に「コルク」を採用したのがミドーであった。その効果を証明するため、当時、ニューヨークにあったアメリカ政府御用達の検査機関ETL(Electrical Testing Laboratories Inc.)にテストを依頼。摂氏+50度~-40度、13気圧防水(120m防水相当)、6600バールの気圧(高度1万3300m~1万6600m相当)での動作テストが実施された。6つのミドーの時計がテストされ、高度1万3300m相当の気圧テストをクリアできなかった1つを除く5つがすべてのテストをクリア、その高い気密&防水性能が証明された。

2 1944年に誕生の防水時計「オーシャンスター」

いまではブランドのアイコン的存在の一つである、ミドーのダイバーズウォッチコレクション、オーシャンスター。1944年にコルク・クラウンシーリングシステム採用の防水時計として誕生。1959年には、モノコックケースでさらに防水性能を高めたオーシャンスター コマンダーが登場。ケース内の気密性が向上したため、内部のオイルの劣化を防ぎ、メンテナンス頻度も減るなどの効果も生まれた。これにより、世界中に「良質な防水時計」としてのミドーの名を広めた。

1960年代のオーシャンスターの広告。航海の目印である灯台の光をイメージしたビジュアル。灯台=海を征服する人類を導くシンボルとして、堅牢かつ薄型、そして安全と信頼性を想起させるビジュアルとなっている。

1965年のオーシャンスターの広告。この年、オーストラリア南極観測隊の公式時計に選ばれる。こちらはそれにちなんだ広告。南極の過酷な環境でも精確な時を刻み続け、その高い防水性、堅牢性が注目された。

1980年代の「オーシャンスター」の広告。「KING OF WATERPROOF WATCHES」(防水時計の王者)というキャッチコピーで、その傑出した防水性能を強くアピール。

ミドーが1953年に特許を取得した防水チェック装置「スーパーウォーターテスト」。

1960年代のオーシャンスターの広告。航海の目印である灯台の光をイメージしたビジュアル。灯台=海を征服する人類を導くシンボルとして、堅牢かつ薄型、そして安全と信頼性を想起させるビジュアルとなっている。
1965年のオーシャンスターの広告。この年、オーストラリア南極観測隊の公式時計に選ばれる。こちらはそれにちなんだ広告。南極の過酷な環境でも精確な時を刻み続け、その高い防水性、堅牢性が注目された。
1980年代の「オーシャンスター」の広告。「KING OF WATERPROOF WATCHES」(防水時計の王者)というキャッチコピーで、その傑出した防水性能を強くアピール。
ミドーが1953年に特許を取得した防水チェック装置「スーパーウォーターテスト」。

3 ブランド名の発祥とも関わりが深い「スペイン」

ミドーの創業は1918年11月11日。第一次世界大戦の休戦協定が結ばれたその日に、ジョージ・シャレン氏により設立された。ミドーは、スペイン語の「yo mido」(私は計測する)に由来し、スペイン語を操った彼の弟アンリ・シャレン氏が命名したといわれている。今回、オーシャンスターコレクションの75周年式典が開催され、ミドーがオフィシャルパートナーをつとめるレッドブル・クリフダイビング・ワールドシリーズ2019のグランドファイナルが開催されたのもスペイン・ビルバオ。スペインにゆかりのある同ブランドならではである。

2019年9月にスペイン・ビルバオ市内、スペイン王室ゆかりのマリーナで開催されたオーシャンスターコレクション75周年記念式典。この時、オーシャンスター トリビュートが発表された。

1918年、スイス・ゾロトゥルンにて創業当時のミドー本社。現在は、スイス・ジュラ渓谷の麓、ル・ロックルに本拠地を構える。

ミドー創業者ジョージ・シャレン氏。見た目の美しさ、信頼性、機能性の融合という哲学のもと、タイムレスなデザイン、質の高い素材、技術革新というミドーのDNAは、創業以来100年以上守り続けられている。

名づけ親とも言える、創業者の弟、アンリ・シャレン。スペイン語に堪能で、後に共同経営者となる。

2019年9月にスペイン・ビルバオ市内、スペイン王室ゆかりのマリーナで開催されたオーシャンスターコレクション75周年記念式典。この時、オーシャンスター トリビュートが発表された。
1918年、スイス・ゾロトゥルンにて創業当時のミドー本社。現在は、スイス・ジュラ渓谷の麓、ル・ロックルに本拠地を構える。
ミドー創業者ジョージ・シャレン氏。見た目の美しさ、信頼性、機能性の融合という哲学のもと、タイムレスなデザイン、質の高い素材、技術革新というミドーのDNAは、創業以来100年以上守り続けられている。
名づけ親とも言える、創業者の弟、アンリ・シャレン。スペイン語に堪能で、後に共同経営者となる。

4 革新的で、いつの時代も新しい「歴史的な建築物」

「inspired by architecture」(建築物にインスパイアされて)というモットーに基づき、タイムレスなデザイン、機能美を追求するミドー。コレクションの中には、歴史的建造物からインスパイアされたモデルも存在する。今回、オーシャンスターコレクション75周年記念式典の地に選ばれたスペイン・ビルバオも、グッゲンハイム・ビルバオ美術館を中心に名建築の宝庫なのである。

2014年、ミドーとUIA(国際建築家連合)はパートナーシップを締結。世界の建築家との交流を促進し続けている。写真は、ミドー現社長フランツ・ヒューゴ・リンダー氏(左)と当時のUIA会長アルベール・デュプレ氏。

ミドーがオフィシャルパートナーを務めるレッドブル・クリフダイビング・ワールドシリーズ2019のグランドファイナルは、スペイン・ビルバオ市内中心を流れるネルビオン川にかかるサルベ橋で行われた。2007年に追加された赤いゲートはフランス人アーチスト、ダニエル・ビュラン氏による。

スペイン・ビルバオ市内の地下鉄は、英国人の建築家ノーマン・フォスター氏が手がけた。ガラスを多用したキャノピー型のエレガントな入り口が特徴である。

スペイン・ビルバオ空港、ネルビオン川に掛かるスビスリ橋(通称カラトラバ橋)は、同国の建築家サンティアゴ・カラトラバ氏による。

スペイン・ビルバオ空港、ネルビオン川に掛かるスビスリ橋(通称カラトラバ橋)は、同国の建築家サンティアゴ・カラトラバ氏による。

スペイン・ビルバオ市内、スビスリ橋のたもとにあるツインタワービルは、磯崎ゲートと呼ばれる住居と商業施設の複合ビル。建築界のノーベル賞といわれるプリッカー賞受賞の日本人建築家、磯崎 新氏の設計。

スペイン・ビルバオ市内のアスクナ・セントロア。1909年建造で以前ワイン倉庫として利用されていた。ビルバオのもっとも象徴的な歴史的建造物を文化とスポーツの複合施設として生まれ変わらせたのは、フランス人デザイナーのフィリップ・スタルク氏。

2014年、ミドーとUIA(国際建築家連合)はパートナーシップを締結。世界の建築家との交流を促進し続けている。写真は、ミドー現社長フランツ・ヒューゴ・リンダー氏(左)と当時のUIA会長アルベール・デュプレ氏。
ミドーがオフィシャルパートナーを務めるレッドブル・クリフダイビング・ワールドシリーズ2019のグランドファイナルは、スペイン・ビルバオ市内中心を流れるネルビオン川にかかるサルベ橋で行われた。2007年に追加された赤いゲートはフランス人アーチスト、ダニエル・ビュラン氏による。
スペイン・ビルバオ市内の地下鉄は、英国人の建築家ノーマン・フォスター氏が手がけた。ガラスを多用したキャノピー型のエレガントな入り口が特徴である。
スペイン・ビルバオ空港、ネルビオン川に掛かるスビスリ橋(通称カラトラバ橋)は、同国の建築家サンティアゴ・カラトラバ氏による。
スペイン・ビルバオ空港、ネルビオン川に掛かるスビスリ橋(通称カラトラバ橋)は、同国の建築家サンティアゴ・カラトラバ氏による。
スペイン・ビルバオ市内、スビスリ橋のたもとにあるツインタワービルは、磯崎ゲートと呼ばれる住居と商業施設の複合ビル。建築界のノーベル賞といわれるプリッカー賞受賞の日本人建築家、磯崎 新氏の設計。
スペイン・ビルバオ市内のアスクナ・セントロア。1909年建造で以前ワイン倉庫として利用されていた。ビルバオのもっとも象徴的な歴史的建造物を文化とスポーツの複合施設として生まれ変わらせたのは、フランス人デザイナーのフィリップ・スタルク氏。

5 0.1秒単位での精確さ、美しさを追求する「クリフダイビング」

20m以上の高さから華麗な技を披露しながら飛び込むクリフダイビング。踏切から着水まで3秒未満。着水時の時速は約80キロ。美しさと1秒以下での精確さが求められる競技だ。「極めて高い精度」、「性能」、「審美感」を追求するため、自己を超越し完璧さを求め不断の革新的努力をする点で、ミドーのブランド哲学と共通するのである。

Credit Romina Amato/Red Bull Content Pool/カナダ人建築家フランク・ゲーリー氏による、スペイン・ビルバオ市内のグッゲンハイム・ビルバオ美術館を借景とし、ミドーがオフィシャルパートナーを務めるレッドブル・クリフダイビング・ワールドシリーズ2019のグランドファイナルが開催された。

レッドブル・クリフダイビング・ワールドシリーズ2019のグランドファイナルの舞台は、スペイン・ビルバオ市内・ネルビオン川のサルベ橋。グッゲンハイム・ビルバオ美術館を眼前にする橋の高さは約24m。例えば、ミドーフレンズであるイタリア人アレッサンドロ・デ・ローズ選手の場合。体重75キロの彼の落下時間は約2秒強。その間に旋回、宙返りを披露するわけだが、ここからも卓越した集中力とスキルが求められることがよくわかる。

防水時計の先駆者、オーシャンスターコレクション75周年記念モデル

オーシャンスター トリビュート/自動巻き。径40.5mm。SSケース&ブレス(替えストラップ付属)。20気圧防水。80時間パワーリザーブ。12万1000円。

最新技術で蘇る、1960年代傑作ダイバーズ

1944年に誕生した、オーシャンスターコレクション75周年を記念して発表されたコチラのモデル。逆回転防止ベゼルを装備し、ボックス型サファイアクリスタル風防、しなやかで装着感の良い11連ブレスが非常にクラシック。ミドーのフラッグシップムーブメント「キャリバー80」を搭載し、パワーリザーブ80時間を誇る。ダイヤルはブラックとブルーの2色。それぞれにダイヤルカラーに合わせた替えストラップ(ブラックダイヤル・モデルはラバー製、ブルーダイヤル・モデルはファブリック製)が付属する。ケースバックには、オーシャンスターのシンボルであるヒトデのレリーフが入っている。

お問い合わせ:ミドー/スウォッチ グループ ジャパンTel. 03-6254-7190

オーシャンスター トリビュート/自動巻き。径40.5mm。SSケース&ブレス(替えのラバーストラップ付属)。20気圧防水。80時間パワーリザーブ。12万1000円。

オーシャンスター トリビュート/ブラックダイヤル・モデルの替えストラップ(ラバー製)を装着したところ。自動巻き。径40.5mm。20気圧防水。80時間パワーリザーブ。12万1000円。

オーシャンスター トリビュート/自動巻き。径40.5mm。SSケース&ブレス(ファブリックストラップ付属)。20気圧防水。80時間パワーリザーブ。12万1000円。

オーシャンスター トリビュート/ブルーダイヤル・モデルの替えストラップ(ファブリック製)を装着したところ。自動巻き。径40.5mm。20気圧防水。80時間パワーリザーブ。12万1000円。

オーシャンスター トリビュートのケースバックには、スターフィッシュ(ヒトデ)のトレードマークが刻印されている。このシンボルマークは、防水時計であることをアピールするために、1942年に誕生。

ミドーのフラッグシップムーブメント「キャリバー80」。ローターには、ジュネーブストライプとMIDOのロゴがあしらわれている。25石。2万1600振動/時。パワーリザーブ80時間を誇る。

オーシャンスター トリビュート/自動巻き。径40.5mm。SSケース&ブレス(替えのラバーストラップ付属)。20気圧防水。80時間パワーリザーブ。12万1000円。
オーシャンスター トリビュート/ブラックダイヤル・モデルの替えストラップ(ラバー製)を装着したところ。自動巻き。径40.5mm。20気圧防水。80時間パワーリザーブ。12万1000円。
オーシャンスター トリビュート/自動巻き。径40.5mm。SSケース&ブレス(ファブリックストラップ付属)。20気圧防水。80時間パワーリザーブ。12万1000円。
オーシャンスター トリビュート/ブルーダイヤル・モデルの替えストラップ(ファブリック製)を装着したところ。自動巻き。径40.5mm。20気圧防水。80時間パワーリザーブ。12万1000円。
オーシャンスター トリビュートのケースバックには、スターフィッシュ(ヒトデ)のトレードマークが刻印されている。このシンボルマークは、防水時計であることをアピールするために、1942年に誕生。
ミドーのフラッグシップムーブメント「キャリバー80」。ローターには、ジュネーブストライプとMIDOのロゴがあしらわれている。25石。2万1600振動/時。パワーリザーブ80時間を誇る。