2018.10.20

【シチズンの工房へ行ってきた!!】機械式の心臓部(テンプ)もマシンが組み込んでいた

もはや職人の「勘」を超えている!?

機械式ムーブメントの組み立て工程で、最も繊細な作業が要求されるのがテンプの組み込みだ。シチズンは、その自動化にも成功。人の手を凌駕するほどの正確な動きで、時計に命を吹き込む。

正確無比なアームがテンプを正しく設置
テンプは別の工場でひげゼンマイと緩急針などが取り付けられ、殿岡工場に運ばれる。写真は上位機Cal.90系のテンプの組み込み工程。左に見える黒いノズルがバキューム口で、テンプを吸い上げ地板の所定の位置に正しくセットする。

 

人の目と手とを借りながら精度と大きな振り角を得る

機械式ムーブメントを手組みする際、各パーツをピンセットでつまみ上げ、所定の位置にセットする。シチズンの自動製造ラインで、ピンセットに代わってパーツを持ち上げ、セットしているのはバキューム。各マシンのロボットアームには、それぞれが扱うパーツのサイズや形状に合わせたノズルが取り付けられている。そして正確にパーツを吸い上げ、所定の位置に運び、セットした後、吸引を止める仕組みだ。

驚くべきことに、形状が複雑な脱進機のアンクルや繊細に取り扱わなければならないテンプまで、同じ原理で自動で組み込まれていた。先にセットされたガンギ車と、爪石が正しく当たる位置に正確にロボットアームがアンクルを設置。その際テンプの軸(天真)の振り石と、連携するY字になったハコが正しい位置に来ているかは、人の目で確かめて微調整される。数少ない、人の手が介在する工程の一つだ。

続くテンプの組み込みでは、バキュームで持ち上げた瞬間にひげゼンマイが縦に伸びてたゆむ。それが絡まぬように所定の位置に運び、天真の軸受けに差し込まれる。その際、天真の振り石は、しっかりとアンクルのハコの間に来ている。驚くべき正確さだ。

ブリッジの取り付けとネジ留めも、自動。テンプを固定した後、ひげゼンマイの歪みなどが目視で全品検査され、不良はその場で調整を行う。時計精度を司る、脱進機とテンプの検査には、どうしても人の目と手が不可欠。しかし以降の歩度調整は自動化されていて、精度と量産性とが両立される。

キャリバー82系では、精度を+40~-20秒(キャリバー8203は+20~-10秒)に設定。どちらも量産型では優秀な数値だ。自動ラインが、この性能の低価格化をかなえる。

 

自動製造ラインのスタートはコレから
Cal.82系の地板。同じ向きにしかセットできない専用トレーに固定され、ベルトコンベアーで各工程へと運ばれる。つまり製造ラインのここがスタート。トレーも自社で開発・製造する。

微細な筒カナの組み込みも全自動!
歯車の軸への筒カナの取り付けも自動で行う。その上に位置する金属製のノズルが、筒カナを吸い上げ軸に取り付け、グッと押さえつける。写真は、Cal.82系の自動巻き機構の切り換え車。

センサーで組み付け不良を監視
ブリッジのセットまでが終わった状態のCal.82系。上から赤いレーザーを照射し、各パーツが正しく組み込まれているかをセンサーがチェックしている。ライン上で全品検査を行う。

外観の品質検査は人の目と手で
ブリッジのネジ留めも済んだCal.90系。組み上がり具合とブリッジなどに傷がないかなど外観の状態を調べるのは、人の目だ。ホコリや微細なゴミなどがある場合は、手で取り除かれる。

 

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チタンブレスレット。6万5000円。

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[時計Begin 2018 AUTUMNの記事を再構成]
写真/岸田克法 文/髙木教雄 構成/市塚忠義