A.ランゲ＆ゾーネの“ウチの薀蓄”「ランゲ1の秒針はゼロで止まる！」

ゼンマイ残量がなくなると秒針がゼロの位置で止まる

ゼンマイを使い切らず精度の安定を促す
大写しになった2つの針の内、右がパワーリザーブ計。これが残量0位置を示していて、左にある秒針は0 を指して止まっている。今のA.ランゲ＆ゾーネが搭載するCal.L121.1は、ツインバレルによる72時間駆動。しかし実際には、およそ100時間分の主ゼンマイが収められていて、パワーリザーブ計と連動するゼロ停止機構を備えることで、最もトルクが安定する72時間分だけが使われる設計とした。高精度追求の、高い志の表れだ。

パワーリザーブ計と連携し秒単位の針合わせを容易に

「ランゲ１」は、その名の通り再興を果たしたA．ランゲ＆ゾーネの記念すべきファーストモデルの一つだ。現行モデルは、第２世代。２０１５年に外観はほぼそのままに新開発のキャリバーＬ１２１.１を搭載し、誕生した。このムーブには、精度を追求するランゲらしい独自の機能が備わっている。パワーリザーブ計の針が残量０の位置まで来ると、秒針も０位置で停止するのだ。

また通常の時計はゼンマイの残量がゼロの状態で左右に振ってテンプを動かすと秒針が進むが、パワーリザーブ計がゼロを示したランゲ１を揺らしても秒針は微動だにしない。これは、ゼロ停止機構が、秒針が載る四番車の動きを止める設計になっているから。パワーリザーブ計の針が残量ゼロ位置に来るとレバーが動き、四番車の軸に取り付けられたパーツを押してブレーキをかける仕組みだ。リューズによる秒針停止機構の応用であり、信頼性と耐久性も高い。実に巧妙な設計だ。

ランゲ1
ランゲを象徴する＂顔＂
ランゲのアイコンの第2 世代、旧作と並べて見比べても、外観の差はほぼない。一切の表示が重ならず、見やすいダイヤルの配置は黄金比に基づき、手を加える必要がないほど完成度は高い。特許を取得するアウトサイズデイトは、瞬転式に進化した。手巻き。径38.5㎜。18KPGケース。アリゲーターストラップ。355万円。
お問い合わせ先：A.ランゲ＆ゾーネ

コレが「ゼロ停止」のメカニズムだ！

ゼロ停止の秘密を四番車に発見！
ランゲお馴染みの4分の3プレートに隠れて見えない、輪列が上図。秒針が載る四番車の軸には、突起状の小さなパーツが取り付けられている。パワーリザーブ計が0を示すと動き出すレバーが、この突起に当たり、ブレーキをかける。突起の位置は、レバーが当たった際、秒針が0を指すよう絶妙に計算されている。

コチラも「ゼロ停止」搭載してます！

[時計Begin 2018 AUTUMNの記事を再構成]
写真／小澤達也（Studio Mug）、岸田克法、谷口岳史　文／髙木教雄、岡崎隆奈