2018.12.22

リシャール・ミルの“ウチの薀蓄”「日本に入荷した1億円時計複数本はすべて即完売した」

オーバー1億円の時計たちは実は抽選で購入者が決まる

 


RM 53-01 トゥールビヨン パブロ・マクドナウ

ポロ競技の衝撃に耐える
ポロ競技のパブロ・マクドナウ選手とのコラボ。進化したケーブルサスペンションに加え、スティックが当たっても風防が飛散しないよう、2枚のサファイアクリスタルを貼り合わせたラミネート構造を採用した。限定30本。手巻き。ケース49.94×44.35mm。カーボンTPTケース。ラバーストラップ。予価1億230万円。年内発売予定。お問い合わせ:リシャールミルジャパン

 

限定モデルに希望者殺到、買えるか否かは運次第

1億円超えの超高額腕時計──購入できる人間などいるのかと、訝りたくなるが、これが大人気なのだという。こんな景気のいい話が聞けるのは、時計界で今、最も勢いのあるリシャール・ミルだ。毎年のように素材や構造で世界初を発表してセンセーションを巻き起こし、世界中の時計好きな富裕層を虜に。生産数が限られているのも、彼らの購買欲をそそるのだろう。その証拠に過剰なまでにハイスペックを追求した限定モデルは、SIHHで各国で取り合いになり、即完売になる。

そんな状況は、今年も例外ではなかった。新作「RM53‐01トゥールビヨン パブロ・マクドナウ」も、激しい争奪戦が繰り広げられた。限定数は30本。日本も複数本の入荷を確保したが、購入希望者は、その数を超えたというから驚きだ。では、どうやって購入者を選ぶのか。過去の購入実績により優先順位が決まる……のではない。直営ブティックと正規販売店で、エントリーを受け付け、公平に抽選で、購入者が決められるのだ。日本でこのモデルが手に入れられるか否かは運次第。1億円予算があっても、強運の持ち主でなければ手に入らない。

まるで浮いているようなムーブメント

5000Gにも耐える宙吊り構造
ムーブメントは、表と裏からそれぞれ2 つのアーチでパーツを挟んだ構造。それを囲むフレームには、2本の径0.27㎜のケーブルが取り付けられ、10個の滑車を介して立体的に交錯しながらムーブメントを吊り、極めて高い耐衝撃性能を得た。ケースにはカーブと窪みがあり、この立体的な造形で剛性を高めている。ポロ競技中に着けても安心。

 

リシャール・ミルの時計はなぜ高い?

ケースもムーブも手間を惜しまない
メゾンが好んで用いる耐衝撃性や剛性を高める新素材は、加工が難しい。さらにフォルムも複雑。難加工材を複雑な形状に切削するには、時間もかかり、モデルごとに対応した工作機械も必要となる。またムーブも、耐衝撃性を高めるために歯車の噛み合わせや高さが完璧に合うよう丁寧に組み立てている。この時間と手間が、高額の理由だ。

リセールバリューが高い理由

日本独自に正規認定中古を販売
リシャールミルジャパンは、ネオヴィンテージと名 Shop Data付けた正規認定中古のブティックも展開している。正規品を手放す際、自社で引き取り整備をし、次のオーナーへ正規品として受け渡す流通システムによって、リセールバリューも高めているのだ。そのブティックは、ラグジュアリーそのもの。

 

[時計Begin 2018 AUTUMNの記事を再構成]
写真/小澤達也(Studio Mug)、岸田克法、谷口岳史 文/髙木教雄、岡崎隆奈