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2025.08.21
【あの時、歴史が動いた⁉:第5回】~風雲児よ、何処へ~ ピエール・クックジャン編
高級時計の聖地、スイス。永世中立国でもある同国は、外からの圧力には屈しない。それは同時に、閉鎖的でもあるということ。フランス、ドイツ、イタリアに隣接していながらも、EUには加盟しておらず、通貨は未だスイスフラン。長い歴史を持つ時計ブランドの多くが今もなお現役なのは、急激な変化を好まず、伝統を重んじて歴史を守って来たからだ。退屈なルールに風穴を開けようとした時代の風雲児たちは、時に激しく攻防を繰り広げ、戦ってきた。そんな彼らは得てして、同じ場所にとどまらない。
時代の風雲児 #04
ピエール・クックジャン ~ムーブ2個入れという力わざをやってのけた大型腕時計の極み~
Profile:大手宝飾メゾンからの依頼で一点モノの製作を手がけていた彼は、世界で活躍するセレブリティからの信頼も厚かった。中でもラテン系のツボを押さえていたドゥ・ラ・クールの時計は、レアル・マドリード時代のモウリーニョ監督やクリスティアーノ・ロナウドも愛用していた。

時計好きが思わず欲しくなる時計は、どんな時計なのか。最新の傾向を分析して、そのキーワードを選出。ひねりの効いたタイトルとともに紹介したこの号は、かつてないセールスを記録した。じわじわと人気が高まりつつあり「エキゾチック時計」の代表格としてドゥラクールを紹介した。
リミッターを解除したムーブ2個分の大型ケース
大きくて力強く、存在感のある腕時計。昨今の時計トレンドは「小型化」のようだが、腕元で最大限にアピールできる腕時計は、時代を問わず人気が高い。大型時計といって真っ先に名前が上がるのは、パネライのサブマーシブル、オーデマ ピゲのオフショア、ウブロのビッグ・バンといったところか。そんな「巨」のカリスマ達が可愛く見えるほど、強烈なインパクトを残したデカ時計があった。ドゥラクールという腕時計を、覚えているだろうか。
ドゥ・ヴィットやドゥ・ベトゥーンなど、「ドゥ」で始まるブランドが活躍した頃と重なるため、混乱する人がいるかもしれない。ドゥラクールのCEOとして時計をデザインしていたのが、ピエール・クックジャン。彼が生み出す時計はとにかく斬新だった。17歳で宝飾デザイナーとしてデビューした彼の時計は宝石を敷き詰めたモデルも多かったが、何より他と一線を画していたのは、その大きさ。
大きい理由はW(ダブル)。丸と四角を混ぜた変形トノーケースにトゥールビヨンを2つ、クロノグラフにいたっては自動巻きムーブメントを丸ごと2個搭載。つまりは時計を2個腕につけているようなもの。腕時計だけでは物足りず、いつも同デザインのベルト(バックル)を腰に巻いていたクックジャンのジーンズ姿が、懐かしい。
2007年冬号で掲載
[時計Begin 2025 SUMMERの記事を再構成]