2025.11.13

インデックスは“進化した載せ”か、“伝統の彫り”か

【学ぶぞ、本格時計】パーツで分けて、すべてを理解しよう!

なんとなくは分かっているけど、人には説明できない……。そんな時計の専門用語を一度しっかりマスターすれば、本格時計の真の価値が見えてくるはずだ!

[ダイアル編]
小さいパーツにこそブランドの本気が隠れている【インデックス】

小さいパーツにこそブランドの本気が隠れている【インデックス】

ベル&ロスがリードするワンランク上の光

紫外線を蓄え発光する日本企業の大発明!

紫外線を蓄え、暗所で発光する──現在、針とインデックスで多用される蓄光性夜光顔料スーパールミノバ®は、1993年に日本の根本特殊化学がN夜光の名で開発したものであり、後にスイスのRCトライテック社がスーパールミノバ®と名付けて生産するようになった。それまでの夜光顔料トリチウムのように放射能を発せず、安全。しかも衝撃に強く割れにくいため、時計界で広く普及するに至った。当初、発光色はグリーンとブルーしかなかったが、顔料を加えることで今ではさまざまな色が実現されている。また発光量と発光時間に応じてスタンダード、A、X1、X2などのグレードがあり、X2がもっとも明るくかつ長く光る。

スーパールミノバ®は、針や植字インデックスの上に載せるか、それ自体でインデックスを描くのが一般的な活用法である。それをベル&ロスは、針と植字、さらにスケルトンダイアルのフレームを取り囲むように施して、まるでネオンサインのような夜の顔を創り上げた。しかも高輝度のグレードを用いることで暗所での十分な視認性を確保。これは夜光による新たな機能美だ。

BELL & ROSS(ベル&ロス)
BR-03 スケルトン ラム セラミック

BR-03 スケルトン ラム セラミック

光るスケルトン
スーパールミノバ®をインデックスに載せるのに加え、ダイアルのオープンワークを縁取るように塗布。グリーンの輝きで暗所での印象を近未来的にした。自動巻き。ケース41×41mm。セラミックケース。ラバーストラップ(ベルクロストラップ付属)。99万円。

問い合わせ:ベル&ロス 銀座ブティック
ベル&ロス公式サイト

スーパールミノバ®️《X1C3》

スーパールミノバ®️《X1C3》
C3はスーパールミノバ用の顔料の1つでより鮮やかなグリーンを呈する。その中でもより高輝度なグレードX1を採用。鮮烈かつ強烈なグリーンの光をかなえた。

BELL & ROSS(ベル&ロス)
BR-03 ダイバー ラム アウトライン

BR-03 ダイバー ラム アウトライン

縁取って光らせるという新発想
時分針とインデックスのアウトラインにスーパールミノバ®X2を塗布。少ない発光面積でも、海中での十分な視認性とネオンサインのような個性的な外観を両立させた。限定500本。自動巻き。ケース42×42mm。セラミックケース。ラバーストラップ(ベルクロストラップ付属)。82万5000円。

スーパールミノバ®️《X2》

スーパールミノバ®️《X2》
輝度と発光時間において最上級グレードのスーパールミノバ®。既存のX1と比べて暗所での減衰が緩やかで、長時間視認性を維持することができる。

インデックスは“載せる”ではなく“彫る”!?

ナオヤヒダの手彫りインデックス

これまでの顧客リストには、錚々たる時計愛好家が名を連ねる。ナオヤヒダ&Co.は、1990年代から時計界でキャリアを積み、深い知見を持ち、ヴィンテージウォッチの収集家でもある飛田直哉氏が設立したマイクロメゾンである。歴代モデルにはいずれも飛田氏が好む、1920~’30年代の腕時計がまとっていたエレガントな雰囲気とサイズ感が投影されている。これを称して現代のヴィンテージウォッチ。そして2018年に完成したプロトタイプ「NH TYPE 1A」から一貫してダイアルには無垢の金属を用い、メゾンの彫金師、加納圭介氏の手でインデックスが彫られてきた。

手彫りインデックスは、懐中時計や初期の腕時計で試みられていたが、手間がかかるため現行モデルでの採用例は極めて稀。今年初登場した永久カレンダーでは、メインダイアル、インダイアル、外周のミニッツトラックをそれぞれ別体とすることで各インデックスを外周ギリギリに彫ることを実現。ダイアルの印象がより濃密になり、また各表示の優れた視認性をかなえた。

NAOYA HIDA & Co. (ナオヤヒダ&Co.)
NH TYPE 6A

NAOYA HIDA & Co. (ナオヤヒダ&Co.) NH TYPE 6ANAOYA HIDA & Co. (ナオヤヒダ&Co.) NH TYPE 6A

待望の複雑機構誕生!
ブランド初の永久カレンダーウォッチが、オーストリアのマイクロメゾンHabring2とデュボア・デプラ社との協力で実現。インデックスを手彫りしたダイアルには、スターリングシルバーを用いた。手巻き。径37mm。SSケース。カーフストラップ。完売。

問い合わせ:ナオヤヒダ&Co.
ナオヤヒダ公式サイト

究極の刃《ハンドエングレービング》

究極の刃《ハンドエングレービング》
インダイアルにインデックスを手彫金する様子。温めて軟化させた樹脂にパーツを固定し、彫り進める。上部に備わるプレートで、メインダイアルの裏側から固定する仕組みだ。

[時計Begin 2025 AUTUMNの記事を再構成]

※表示価格は税込み