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2025.11.14
ルクルトは35層ラッカー! ダイアル塗装はここまで行ってる
【学ぶぞ、本格時計】パーツで分けて、すべてを理解しよう!
なんとなくは分かっているけど、人には説明できない……。そんな時計の専門用語を一度しっかりマスターすれば、本格時計の真の価値が見えてくるはずだ!
[ダイアル編]
ブランド独自の感性は“見る”じゃなくて“感じる!”【色づけ・塗装】
ダイアルに「奥行き」が生まれる魔法のレシピ
カラーダイアルは色づけするか錯覚させるか
懐中時計の時代からダイアルの色付けには、いくつもの技巧が試されてきた。現在多用されるのは前出のガルバニックを含むめっき、後述するエナメル、そしてラッカー塗装。また近年では、金属を蒸着させることで多彩な色を得るPVDも多用されている。
中でももっとも広く普及しているのが、ラッカー塗装である。それも年々技術が向上し、ラッカーでもエナメルに似た質感が得られるコールド・エナメルや、手間がかかり品質の維持も難しいグラデーション塗装が、多くのブランドで採用されるようになってきた。グラデーションダイアルの普及は、より繊細な噴霧ができ、噴出量が細かくコントロールできるスプレーガンが生まれたことによるところが大きい。また自動でグラデーション塗装ができる専用マシンが登場したことで、一気にその数を増やしたのだという。一方、高級時計のグラデーションダイアルは、ラッカーやニスを幾層にも重ね、また手作業も織り交ぜながら質感と審美性とを高めている。
またPVD以外にも、科学の力を利用したカラーダイアルが生み出されている。オリエントの光学多層被膜技術がその1つ。これは多層膜で凹凸を形成して、ある範囲の波長の光しか反射させない技術であり、自然界でも蝶の羽根などに見られる構造色に分類される。すなわち実際に色付けするのではなく、光の反射で色を錯覚させているというわけだ。この構造色ダイアルは、他社にも少数ながら存在する。今後注目を集めそうな気配の新技術だ。
何度も何度も塗り重ねるとか
《35層ラッカー》


透明ニスを下地とし4層のカラーラッカーを塗布。その上から黒ラッカーでグラデーションをかけた後、透明なラッカーを30層塗り重ね、色の深みと全体の奥行き感を高めていく。
JAEGER-LECOULTRE(ジャガー・ルクルト)
ポラリス・クロノグラフ

仕上げ分けも注目
オーシャングレーと名付けた新色は、別体とした時インデックスエリアにもグラデーションを途切れず連続させている。一方中央部とは異なる仕上げで、ニュアンス豊かに仕立て上げた。自動巻き。径42mm。SSケース。キャンバスストラップ(ラバーストラップ付属)。233万2000円。
問い合わせ:ジャガー・ルクルト
ジャガー・ルクルト公式サイト
手作業による吹き付け塗装
《グラデーション》

下のモデルもそうであるように、グラデーションダイアルは近年採用例が増えている。スプレーガンの噴出量の調整によって色の濃淡が表現されるが、匙加減は高級ダイアルの場合、職人の腕頼り。色の変化は、個々に微妙に異なる。
FRANCK MULLER(フランク ミュラー)
ヴァンガード スリム スフマート

色の濃淡で時の感情を表す
スフマートとはダ・ヴィンチが確立した光と影のぼかしで立体感を生み出す絵画技法。それをダイアルに応用し、時の流れをブラウンの濃淡の移ろいで視覚化した。自動巻き。ケース52.3×42.5mm。18KPGケース。カーフ+ラバーストラップ。385万円。
問い合わせ:フランク ミュラー ウォッチランド東京
フランク ミュラー公式サイト
ほんとは無色、見えているのは幻?
《光学多層膜技術》

ダイアルのめっき層の上に積層した被膜によって形成したナノレベルの超微細な凹凸が、ある範囲内の波長の光(この場合は緑のエリア)しか反射しないため緑に見える。被膜の構造によって色を操っているため、構造色と呼ばれる。
ORIENT STAR(オリエントスター)
M34 F8 デイト

グリーンの流れ星に願いを
ダイアルは、ペルセウス座流星群をイメージした繊細な型打ち模様の上に光学多層皮膜を形成。2つの効果で、見る角度で色調や模様が次々と移ろう表情豊かなグリーンダイアルが生み出された。自動巻き。径40mm。SSケース&ブレスレット。36万3000円。
問い合わせ:オリエントお客様相談室
オリエント公式サイト
[時計Begin 2025 AUTUMNの記事を再構成]
※表示価格は税込み