2025.11.19

パテックの”キバタン”はクロワゾネ! エナメルの違い分かりますか②

【学ぶぞ、本格時計】パーツで分けて、すべてを理解しよう!

なんとなくは分かっているけど、人には説明できない……。そんな時計の専門用語を一度しっかりマスターすれば、本格時計の真の価値が見えてくるはずだ!

[ダイアル編]
色分けの決め手はダイアルの土台作り
超名門こだわりの伝統技法 【エナメルダイアル】

繊細な金属加工技術で色違いの釉薬を注し分ける

時計界きっての名門パテック フィリップも、優れたエナメル技術の継承者である。むろん全てが、グラン・フー・エナメル(日本語では本七宝)だ。単色使いはもちろんのこと、細密画、フランケなどもメゾンの職人の手によってかなえられている。その中で、特に名高いのが、線状のゴールドで輪郭を囲い、その内側に釉薬を注して色分けをするクロワゾネ。この技巧を用い、さまざまなエリアの地図をダイアル中央に描き出したワールドタイマーは、時計愛好家垂涎の傑作である。

また金線に代わり、下地となるゴールドプレートを彫金して土手を作り、異なる釉薬で色分けるシャンルヴェも得意とする。今年の新作では、この技術でスプリットセコンド・クロノグラフの2トーンダイアルを作り上げた。

クロワゾネもシャンルヴェも前述したように複数回の焼成を必要とするため、均一な色と質感を得るのが極めて困難。焼成後、丁寧に研磨することで釉薬の凹凸を消し去り、さらに艶を増すことで、グラン・フー・エナメルダイアルは、より色鮮やかに進化する。

《クロワゾネ》(有線七宝)

クロワゾネ

クロワゾネ

クロワゾネとは、仏語で“仕切られた”との意。金線でモチーフの輪郭を囲い、異なる色の釉薬を注し分けるから、日本語では有線七宝、金線七宝と呼ばれる。ゴールドの素地に下絵を描き、その輪郭に沿って金線を曲げるだけでも高等技術だ。パテック フィリップのクロワゾネは、写真にあるように下地に彫金や鎚目なども併用している。

PATEK PHILIPPE(パテック フィリップ)
ゴールデン・エリプス 黄色い冠羽のキバタン

PATEK PHILIPPE ゴールデン・エリプス 黄色い冠羽のキバタン

日本画を本七宝で再現
松の枝にとまるキバタン(オウムの仲間)のモチーフは、江戸時代の画家、伊藤若冲の絹本絵から着想して生まれた。20色の釉薬と15回の焼成で、松の葉や羽毛の質感まで再現した。限定10本。自動巻き。ケース39.5×34.5mm。18KYGケース。アリゲーターストラップ。参考商品。

PATEK PHILIPPE(パテック フィリップ)
ゴールデン・エリプス 時計の歯車

PATEK PHILIPPE ゴールデン・エリプス 時計の歯車

本七宝で描くCal.240
クロワゾネに加え、細密画や釉薬をぼかすグリザイユなどを駆使。時計の輪列とPATEKの文字とを鮮明に表した。限定10本。自動巻き。ケース39.5×34.5mm。18KWGケース。アリゲーターストラップ。参考商品。

《シャンルヴェ》

シャンルヴェ

ゴールドの素地を彫り下げてくぼみを形成し、その中を釉薬で埋めることで色分けを行うエナメル技巧で、日本語では生地彫り七宝。2~3世紀の欧州初期にあったケルト美術で盛んに用いられていた。彫り残した素地と同じ高さになるまで、施釉・焼成を繰り返す。また多くは彫り残した部分にもエナメルが施される。釉薬の色ごとに土手のような隔壁で区分けされるため、彫りがそのまま意匠となる。

PATEK PHILIPPE(パテック フィリップ)
スプリット秒針 クロノグラフ Ref.5370

PATEK PHILIPPE スプリット秒針 クロノグラフ Ref.5370

1枚板の2トーン 伝統的なキャリングアーム式水平クラッチを採用したスプリットセコンドクロノの新装。ブラウン×ベージュの2トーンダイアルをシャンルヴェで1プレートに仕立て上げた。外周のタキメーター部もシャンルヴェを用いている。手巻き。径41mm。18KRGケース。アリゲーターストラップ。4571万円。

問い合わせ:パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター
パテック フィリップ公式サイト

[時計Begin 2025 AUTUMNの記事を再構成]

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