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2025.12.16
ウルベルクだからこその発想&技術が生んだ“宇宙を測る”腕時計
sponsored by URWERK

“らしく”ない針表示に秘めたウルベルクらしさ
「ウルベルクと聞いて何が思い浮かびますか?」。席に着くとフェリックス・バウムガルトナーから先に質問された。「やっぱりサテライトアワーですね」。そう答えると彼は納得したような表情でインタビューが始まった。
ウルベルクのアワーグラス銀座での取り扱いが1周年を迎え、共同創業者で時計師のフェリックス・バウムガルトナーが新作を携え、同店を訪れた。ウルベルクは1997年、彼とデザイナーでアーティストのマーティン・フレイにより設立、当初からサテライトアワーによる独自時刻表示を特徴とするモデルで注目を集めたブランドだ。
この機能はワンダリングアワーとも呼ばれ、時を示す数字を配したディスクやキューブが分目盛り上を移動しながら時刻を表示し、60分経過するごとに時を示す数字が切り替わる。一見アヴァンギャルドだが、実は古典的なクロックにインスパイアされたという。
「私の父はアンティーククロックの修復師で、その中に17世紀のイタリアのナイトクロックがありました。ローマ法王をはじめ、時の権力者や富裕層が愛用したものです。文字盤に針がなく、聖人の肖像画などが描かれ、その上の弧状の分目盛りを、時を示す数字がなぞっていく。内部にろうそくやランプを灯し、開口部から時刻表示が照らされ、深夜でも時刻が分かる。サテライトアワーは幼少期に目にしたその時計が着想源なのです」
ウルベルクのコレクションは、このサテライトアワーを用いたもののほか、原子時計とリンクさせるなどして精度を徹底的に追求したクロノメトリー、さらにスペシャルプロジェクトの3カテゴリーから構成されている。
「この『UR-10スペースメーター』はスペシャルプロジェクトに属す、宇宙や空間を計測する機能を持った時計です。今、私たちは同じ卓を囲んでいますが、地球は自転と同時に公転しながら、もの凄いスピードで宇宙空間を移動している、つまり私たちは一緒に旅をしているんです。この時計は、その考え方を反映させたものです」
ウルベルクには珍しく、針による表示の新作は、センターの時分針のほかに、3つのインダイアルを備えている。2時位置のインダイアルの針は約22秒で1周。これは地球が10km分自転するのに要する時間だ。4時位置のインダイアルの針は約34秒で1周。これは公転軌道上を1000km移動したことを意味する。9時位置のものは約36分で1周。この間に約1000km自転し、公転軌道上を約6万4000km移動したことが分かる。
ケースバックには24時間計があり、1日で約4万75km自転し、宇宙空間を約257万km移動したことが示される。またデュアルフロー・タービンもサファイアバックから覗く。空気抵抗を生むブレードを取り付けたローターを二重に設置、それぞれが逆方向に回転し、機構にダメージを与えないよう巻き上げ速度を適正に保つ。
\ 宇宙船のような「デュアルフロー・タービン」 /

「この時計の着想源は、1893年のシカゴ万博でスイス館に展示された、ギュスターブ・サンドという時計師が製作したクロックです。時刻表示がなく、経過時間と地球の移動距離を示す機能を備えていました。この時計も父が修復を手掛けたもので、15年前に私に贈ってくれたのです。それが時間と宇宙空間との関係性を表現した時計を製作する契機になりました」
ウルベルクでは、これまでにも地球の自転・公転距離を表示する機能とサテライトアワーを組み合わせた「UR-100 スペースタイム」など、宇宙空間と時間との関係から発想したモデルを発表してきた。新作の「UR-10 スペースメーター」も、この流れに位置付けられる。
「サテライトアワーと名付けたのは、直観的に衛星が動く様子を想起させたからで、その時から宇宙への意識は始まっていました。それが父から贈られたクロックで、より明確になった。マーティンの父親も科学関連の仕事に従事していた人で、彼のデザインにはNASAやスプートニクなどの影響を感じさせるものもあります。時計業界では、時計師と経営面を担うビジネスマンが共同してブランドを運営するケースがよくありますが、ウルベルクは時計師とアーティストというレアな形でスタートし、現在も私とマーティンという感性の合う者同士でアイデアのやり取りをしながら、バランスの取れた関係を続けています。現在、約20名のスタッフで年産約200本。自分たちのやりたいことを実現するには、ちょうどいい規模です。私は今年50歳になり、2年後にウルベルクも30周年を迎えます。30周年に向けて新しい発表ができる準備を進めています」
ウルベルクならではの時の表現と技術がどう進化するのか、期待が高まる。
URWERK(ウルベルク)
UR-10 スペースメーター

地球が自転と公転によって移動した距離を計測できる機能を搭載。ケースサイドでネジ留めする構造は、ジェラルド・ジェンタをオマージュし「ノーチラス」の方式を模したもの。自動巻き。サイズ縦44×幅45.4mm。チタンケース(裏蓋はSS)&ブレス。3気圧防水。限定25本(ブラックバージョンもあり限定25本)。7万スイスフラン。

❶約22秒で1周し、地球が10km自転したことを表示
中央にブルーのサークルとEARTHと表記された2時位置のインダイアルでは地球の自転距離を表示。22秒で針が1周すると、10km自転したことを意味する。
❷約34秒で1周し、公転軌道を1000km移動したことを表示
センターにホワイトのサークルとSUNと表記された4時位置のインダイアルでは公転距離を表示。34秒で針が1周し、公転軌道上を1000km移動したことを示す。
❸約36分で1周し、自転1000km公転6万4000kmを表示
9時位置のインダイアルの針は36分で1周。内側のブルーのサークルは自転距離を示し、この間に1000km自転したことを示す。ホワイトは公転を意味し、6万4000kmの移動距離を示す。宇宙と時のロマンを感じさせる。
ウルベルク共同創業者
フェリックス・バウムガルトナー

1975年スイス シャフハウゼンで、祖父も、父も時計師の家系に生まれる。1997年、マーティン・フレイとウルベルクを設立。1999年より独立時計師アカデミーメンバー。「我々の時計は、オープンマインドで、好奇心旺盛で、自分に自信のある方に選ばれています」
問い合わせ/アワーグラス銀座
TEL:03-5537-7888
※表示価格は税込み
[時計Begin 2026 WINTER&SPRINGの記事を再構成]
文/まつあみ 靖