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2025.12.25
パテック フィリップが約27億円! 世界記録を連発するオークションハウス「フィリップス」に注目
入札はもちろん出品者としてオークションに参加するなら今がチャンス!

世界的に物価高騰が嘆かれているが、腕時計もまた例外ではない。もともと高額な高級腕時計市場ではあるが、スイス勢ブランドを中心に、その価格は上昇傾向にある。日本の場合は、そこに「円安」がのしかかり、時計ファンにとっては、なかなか辛い状況だろう。
しかし、それほど悲観的になる必要はない。時計の販売価格が上がっているのは、単なる物価高騰という側面のほかに、高級時計の価値が、これまで以上に認知されているという事実があるからだ。
電池や太陽エネルギーを必要とせず、ゼンマイを巻けば半永久的に動き続ける機械式時計の価値が今、再評価されている。これまで数百年という時代を生き抜いてきたように、機械式時計の資産価値の高さが認められ、その結果として販売価格が上がっているのだ。

その証拠に、生産者側が価格を決めるのではなく、消費者側によって価格が決定するオークションハウスにおいて、記録的な数字で落札された腕時計が次々と誕生している。中でも時計部門が好調なオークションハウスとして有名な「フィリップス」に、いま熱い視線が注がれている。
フィリップスは、ニューヨークを拠点に活動しているオークションハウスの老舗。1796年にロンドンで設立され、200年以上の歴史を誇っている。現代アートを中心とした美術品を得意としており、ここ数年ではとりわけ時計分野において頭角を表してきている。
フィリップスの時計オークションが行われるのは、通常年6回。ニューヨーク、ジュネーブ、香港の3都市で開催されている。では早速、近々のオークションで落札された、希少な時計の数々を紹介していこう。
F.P. ジュルヌ FFCプロトタイプ
2025年12月のニューヨークオークションに出品
落札価格:USD 10,755,000(約16億7900万円)
*レート:USD 1 = 156.12円

2021年のオンリーウォッチオークションに出品する時計として、F.P.ジュルヌが映画監督フランシス・フォード・コッポラからのアイデアを受けて製作した腕時計。これはそのプロトタイプで出品者はフランシス・フォード・コッポラ本人。

「五本の指のみを使って時間を表現できないか?」というフランシス・フォード・コッポラの無理難題にこたえ、9年の歳月を掛けてブランド初となるオートマタを駆使した時計を完成させた。5本の指が上下に動き、その組み合わせによって「時」を表示。そしてこの義手を囲む分インデックスのリングが1時間で1回転し、義手の上にある三角のマーカーによって分表示を行うという衝撃的な作品。

ケースの素材はプラチナ。F.P.ジュルヌの腕時計における最高落札額を記録した。フランシス・フォード・コッポラは、映画「メガロポリス」の資金のためにこの時計を手放すことを決断したと語っている。
パテック フィリップ Ref. 1518, ステンレススチール
2025年11月のジュネーブオークションに出品
落札価格:CHF 14,190,000 (約27億590万円)
*レート:CHF 1 = 190.69

1941年に誕生したパテック フィリップの「Ref.1518」は、世界で初めて永久カレンダーを搭載した腕時計と言われており、中でもステンレススティールの個体は、世界でも4本のみしか存在が確認されていない超希少モデルだ。

落札された写真のモデルは1943年製。落札金額1420万スイスフランは、日本円にすると約27億1100万円となる。これによりビンテージ・パテックフィリップの腕時計における落札価格の世界記録を打ち立てた(パテック フィリップの史上最高額は2019年の懐中時計「グランドマスター・チャイム」で、その落札価格は31万ドル(約48億円)。
ちなにこの「Ref.1518」は、2016年にも1100万スイスフラン(約21億円)で落札されており、今回は、その記録を6億円以上も更新したわけだ。2017年に1780万ドル(当時のレートで約20億円)で落札されたロレックス デイトナ“ポール・ニューマン”Ref.6239のフィリップス最高記録を上回ったかと思われたが、ドル円に換算すると1760万ドルになることから、これは歴代2番目に記録となった。

SS製の「Ref.1518」は、これまで4本しか確認されていないと述べたが、こちらの個体はケースバックに「1」という数字が刻まれており、最初の1本目であることを意味している。時計は1943年に製造され、1944年2月22日にハンガリーのブダペストで販売された。
パテック フィリップRef. 3971, Dore(フランス語の金色)文字盤
2025年11月の香港オークションに出品
落札価格:HKD 10,130,000(約2億930万円)
*レート:HKD 1 = 20.66円

先に紹介したパテック フィリップ初の永久カレンダー「Ref.1518」を受け継ぐモデル。「Ref.1518」は1941年から1954年まで製造され、その後継機種として1950年に「Ref.2499」が誕生。

「Ref.2499」は1985年まで続くロングセラーとなったが、1986年に発表された「Ref.3970」に、永久カレンダー搭載クロノグラフの座を譲ることになった。その後「Ref.3970」は2004年まで生産された。
「Ref.3970」のケースは、最初期はスナップバック式であったが、すぐにスクリューバック式に変更されている。こうして防水性が高められるとシースルーバックのモデルも誕生。それが写真の「Ref.3971」である。

オークションに出品された個体は1989年製。ケースの素材は18Kイエローゴルドで、直径は36㎜である。シースルーバックからは、ヌーベル・レマニア製のエボーシュをブラッシュアップした美しいムーブメントを観賞することが可能だ。
実用性が高く耐久性に優れる、パテック フィリップのこの世代の永久カレンダー搭載クロノグラフを探している愛好家は多いため、これからさらに価値が上がることが予想される。
それでは最後に、2026年のオークションスケジュールと、オークションへの参加方法、そして出品方法についてまとめておこう。日本ではなかなか見ることのできないレアモデルを落札できるのことがオークションの醍醐味だが、いま日本においては、「出品者側」で参加するメリットが大きい。入札は「現地通貨」で行われため、円安の日本出品商品への購入意欲が極めて高く、落札された場合も「現地通貨」で支払われるからだ。
【2026年オークションスケジュール】
2026年5月9日〜10日:ジュネーブ時計オークション
2026年5月30日〜31日:香港時計オークション
2026年6月13日〜14日:ニューヨーク時計オークション
【オークションへの参加方法】
1 入札する作品の決定、コンディション確認
オークションカタログで興味のある作品があれば、オークション開催地でのプレビュー(下見会)にて実際の作品を確認するか、コンディションレポートを問い合わせる。フィリップスではサービスとして作品のコンディションレポートを提供しているが、作品の状態を保証するものではない。落札後のキャンセルはできないため、できるだけ自身で作品を確認することが好ましい。
2 入札
オークションの参加方法は、以下4つ。
■オークション会場での入札(In-Person Bid)
事前、または当日会場にてご登録の上、パドルを挙げて参加。
■書面による事前入札(Absentee Bid)
入札用紙にご希望のロットと最高入札額等を記入し、オークション開催前にEメールにて送付。
■電話中継による入札(Telephone Bid)
オークション開催中にフィリップス担当者と電話を通して参加。
■オンラインまたはアプリからの入札(Online Bid)
ウェブサイトまたはアプリ(iOS、Android)から事前入札およびライブ(リアルタイム)での入札が可能。オークション開催前に事前登録が必要。入札をせずにオークションをライブで見る場合、事前登録の必要はなし。
詳細はこちら/オンライン入札のガイド
※はじめてオークションに参加される場合は本人確認書類の登録が必要。
※優先入札制度(Priority Bidding)については、時計部門は除外。
3 落札・支払い
落札された方へ請求書および作品の引き渡しについての案内を送付。請求には落札価格(ハンマープライス)に14.5~27%の落札手数料が加算される。作品はオークション開催地での直接渡しや、輸送手配が可能(オークション開催地からの輸送費用および輸入税等は落札者の負担)。
【オークションへの出品方法】
1 査定
フィリップスのスペシャリストが無料で作品の評価、査定。作品詳細(作家名、タイトル、サイズ、技法、制作年、来歴情報 等)および画像(作品の裏表・サインの分かるもの)をTokyo@phillips.comに送付。または、弊社ウェブサイト(https://www.phillips.com/sell)から出品フォームを記入して提出。その後、オークション出品に適しているかが確認され、適している場合は予想落札価格/エスティメートが提示される(実際に作品を拝見して価格等が変更になる場合もあり)。
2 オークション時期・開催地 / 出品条件の提示
フィリップスでは、ロンドン、NY、香港、そしてジュネーブ(時計と宝石のみ)でオークションを開催。作品に最も適したオークション時期と開催地、また最低落札価格(リザーブ)および出品条件(出品手数料、輸送費、保険費用など)を提示。
3 出品決定、作品のお預かり
出品が決定したら出品契約書を交わし、初めての人は口座を開設(口座開設については、こちらを参照)。作品を期日までにオークション開催地へ送付。出品者自身で輸送手配もしくは、フィリップスにて輸送の手配も可能。
4 オークション開催
作品がカタログに掲載され、オークションに出品される。
5 支払い
出品した作品が落札された場合、オークション開催日から約35日後、落札者の支払い全て確認後に、出品代金が支払われる。落札価格(ハンマープライス)から出品手数料と諸経費を差し引いた金額をオークション開催地から送金。なお、不落札となった場合は担当者より連絡。
*支払いは基本的にはオークション開催地の通貨(別通貨を希望する場合は事前に相談)。
*支払いは、落札者からの入金確認後。
2月中旬に東京、大阪で査定会を実施!
フィリップスの時計部門は年に2回、日本でも査定会を実施している(次回の審査会は2026年2月16日〜21日に東京と大阪で開催予定)。電話等で予約して会場に向かえば、その場で査定額を提示。もちろん、査定後に出品をしないという判断も可能だ。次回のオークションは2026年の5月。自宅にお札を貯めておいても、その価値が上がることはなさそうだが、箪笥に眠っている希少な腕時計があるとしたら、その価値は上がり続けている可能性も! さらに日本から出品される時計は、「JAPAN condition」と記載され、それだけでプレミアムな価値がつくことも。出品すればオークションカタログにも掲載されるので、手放したとしても良い思い出になるだろう。
PHILLIPS(フィリップス)東京 Tel.03-6273-4818
Email:tokyo@phillips.com
文/市塚忠義