2026.09.29

わずか3作で揺るぎないポジションを確立。独立系時計界の新星ペテルマン・ベダ、日本上陸までの軌跡

GPHGを席巻する新鋭マイクロメゾン、ペテルマン ベダがアワーグラス銀座で取扱開始

マイクロメゾンが時計界を動かす時代

ハイエンドなタイムピースの愛好家のニーズを的確に捉え、日本の腕時計シーンをリードし続けるリテーラー、アワーグラス銀座。近年は、とりわけ独立系マイクロメゾンの取り扱いに力を注いでいる。

ここ数年、マイクロメゾンへの注目度は高まる一方だ。各メゾンの個性はさまざまだが、ヴィンテージの銘品をインスピレーションソースとしてハイエンドウォッチを再定義し、文字盤にはギョーシェやエナメルなどのメティエダールを取り入れ、ムーブメントのコンポーネンツにも最大限の時間をかけて丁寧な面取りや装飾仕上げを施すなどの共通点が見られる。
時計業界のアカデミー賞ともいわれるジュネ―ブ・ウォッチ・グランプリ(略称GPHG)でも、部門ごとのグランプリ受賞作やノミネート作にマイクロメゾンのモデルが名を連ね、存在感をアピールしていることに加え、ルイ・ヴィトンをはじめ、若く才能のある独立時計師やマイクロメゾンを対象としたアワードなどを設ける動きも見られる。今やマイクロメゾンは、ビッグメゾンにとっても見過ごせない存在であり、緊密な関係性の構築が急がれる対象にもなってきている。

こうした状況下、この5月からアワーグラス銀座で取り扱いがスタートしたのが、ガエル・ペテルマンとフロリアン・ベダという、30代前半の新進気鋭の二人の時計師ユニットによるブランド「ペテルマン ベダ」である。

ジュネーブ時計学校から始まった二人の物語

二人は、ジュネーブの時計学校の同級生として出会い、切磋琢磨しながら、ガエルは卒業後、19歳でA.ランゲ&ゾーネに入社した。ランゲ1、永久カレンダーと年次カレンダー部門で働いた後、スイスに戻ることを決意し、2014年からアンデルセンのアトリエの仕事と、自身のプロジェクトの両方をスタートさせる。またオークションハウスのクリスティーズから依頼されたヴィンテージモデルの修復にも携わっている。
2017年には、ローザンヌ近郊の故郷ルナンの地に、自身の工房を開設。そのすぐそばにルノー・エ・パピの共同創業者のドミニク・ルノーのアトリエがあり、彼の仕事をサポートしながら親交を深めることになった。

フロリアン・ベダも、ヴァシュロン・コンスタンタンでインターシップを経験した後、ガエルと同じジュネーブの時計学校で4年間学び、ハリー・ウィンストンでキャリアをスタートさせる。ケース製作に続いて、プチ・コンプリケーションを手掛け、スウォッチグループ傘下となる時期まで約2年半をそこで過ごした。
その間も、時計学校時代から親交を深めてきたガエルとは連絡を取り合っており、それがきっかけとなって2014年にA.ランゲ&ゾーネへの転職を実現させる。そしてガエルがスイスに戻るまでの約半年間、グラスヒュッテでルームメイトとして共同生活を送っている。
フロリアンは、ガエルがランゲを去った後も在籍し、ランゲの一部のモデルのケースを除く、ほぼすべての製造工程を手掛ける部署でトータル2年間にわたりキャリアを重ねた。
その後、彼もスイスに戻り、次なる進路を模索しているときに、ガエルからの誘いでパートナーシップを締結することとなり、こうして二人は2017年、20代の若さでペテルマン ベダを設立した。

独自のコンテンポラリー・ウォッチメイキング

ペテルマン ベダは、ガエルがルナンに設立したアトリエを拠点としている。ジュネーブの華やいだ環境からも、ヴァレ・ド・ジュウのような時計ファクトリーやアトリエが密集している場所からも距離を置き、適切な時間の流れの中で時計製作を進めたいという思いが、そこにあるという。
ヴィンテージタイムピースの修復で得た知見から、伝統に根差しながら現代を生きる独自のコンテンポラリー・ウォッチメイキングを目標に掲げている。

GPHG受賞への第一歩「リファレンス1967」

「リファレンス1967」

二人は2017年から開発をスタートさせ、プロトタイプの製作を経て、2018年にファーストモデル「リファレンス1967」を発表する。直径39㎜のRGまたはWGケースに、初の自社開発ムーブメントCal.171を搭載した3針モデルで、1940年代の時計師、ロベール・ガフネが開発した、ガフネ機構と呼ばれるデッドビートセコンド機能を備えていた。ムーブメントの設計には“隣人”ドミニク・ルノーからの助言やサポートもあったという。

ムーブメントのプレートとブリッジはジャーマンシルバー製で、面取り、ブラックポリッシュ、コート・ド・ジュネーブやペルラージュなどの装飾仕上げが、見えないところまで手作業で時間をかけて施された。時、分、秒針も手作業で仕上げられている。
文字盤は、セクターダイヤルのデザインを再解釈したサファイアクリスタルをベースとするセミオープン仕様。文字盤の製作はカリ・ヴティライネンのダイヤルアトリエとして知られるコンブレミンが担当した。
中央のプレートの5時位置と9時位置付近には、受け石となる大型のルビーを象徴的にフィーチャーしている点も目を引く。

ところでモデル名の「1967」は、スイスで最初の腕時計用のクォーツムーブメントのプロトタイプが完成した年に因んだという。デッドビートセコンドのステップ運針が、クォーツウォッチの秒針の運針と同様の動きをみせるとことへの、彼らなりのユーモアが込められたネーミングのようだ。

このタイムピースは、2020年のGPHGにおいて、若手ブランドを対象とした「オロロジカル・レヴェレーション」部門でグランプリを受賞している。

クロノグラフで頂点を極めた「リファレンス2941」

第2章となる「リファレンス2941」は、2023年に発表された。直径38.6㎜のプラチナケースに、スプリットセコンド・モノプッシャー・クロノグラフ機能を備えた自社製手巻キャリバー202を搭載。前作「リファレンス1967」からの流れを汲むオープン仕様の文字盤はコンブレミン社製。時間をかけて仕上げられたムーブメントの美しさを、表からもシースルーバックからも鑑賞できる。
このタイムピースもGPHG 2023のクロノグラフ部門で、グランプリを獲得している。

新境地を示した第3作「リファレンス1825」

「リファレンス1825」

2025年には第3章となる「リファレンス1825」を発表。シンプルな2針+スモールセコンド仕様ながら、中央に配置されたベル型ブリッジを軸にシンメトリーに設計され、ソリッドゴールド製の歯車類や大型ルビーなどを採用した手巻キャリバー233が、直径38㎜のRGケースに収められた。コンポーネンツの仕上げの素晴らしさは、前2作と同様。文字盤はセクターダイヤルのデザインは踏襲しながら、これまでのオープン仕様から初のクローズド仕様に変更された。オリヴィエ・ヴォーシェ社が手掛けたこの文字盤は、WG製のダイヤルプレートの表面をレーザーによってテクスチャー仕上げし、その上から半透明のグリーンのグラン・フー エナメルを施して仕上げられている。

第1作の「リファレンス1967」はRG、WG各限定10ピース、第2作の「リファレンス2941」は限定10ピースだったが、「リファレンス1825」は2026~29年までの4年間の製作がアナウンスされており、これまでのモデルと比べると、より多くの本数の製作が期待されている。

アワーグラス銀座限定モデル「リファレンス1826」

「リファレンス1826」

2018年のファーストモデルから、わずか3作で時計業界に於ける揺るぎないポジションを確立したペテルマン ベダ。その取扱いが5月からアワーグラス銀座でスタートしたことを記念し、日本限定モデル「リファレンス1826」がRGケースとWGケースの2仕様で発表された。
「リファレンス1825」をベースとしつつ、ケースサイズを38㎜から36.4㎜にダウンサイジングし、より洗練されたプロポーションにリデザインされた。
RGケースには、オリヴィエ・ヴォーシェ社がシャンルヴェ・エナメル技法を用いて製作したホワイト・アイボリーのセクターダイヤルが、WGケースには、同じくブラックのセクターダイヤルが組み合わせられた。ムーブメントは、「リファレンス1825」と同じく、キャリバー233を搭載。それぞれ限定5モデルが製作される。

「リファレンス1826 WGケース」

[リファレンス1826 RGケース」

日本市場への期待とアワーグラス銀座の思い

アワーグラス銀座は、ペテルマン ベダの取り扱い開始に際し、こうコメントを寄せた。

「ガエル・ペテルマンとフロリアン・ベダのお二人は、ともにA.ランゲ&ゾーネ 出身であり、弊社もかつてA.ランゲ&ゾーネのブティックを運営していたという経緯もあるため、そういう意味で、縁があるという事を強く感じました。 またシンガポールのアワーグラス主催で開催した「IAMWATCH 2024」で初めてお二人に会いましたが、日本市場に進出したい、という意向もあったため、アワーグラス ジャパンがエクスクルーシブで取り扱いましょう、ということになりました。ローンチのイベントの際には、実機の完成前にも関わらず、日本国内のみならず海外からも非常に多くの声を頂いたことに驚くとともに、大きなポテンシャルを感じています」

独立時計文化の祭典「IAMWATCH2026」へ

来たる11月には、ザ アワーグラス グループの本拠地であるシンガポールで、独立系マイクロメゾンが一堂に会するイベント「IAMWATCH2026」が開催される。現在、iamwatch.comで参加登録受付中だ。時計師、愛好家、コレクター、時計のスペシャリストなどが集い、交流イベント、講演、パネルディスカッション、映像上映などが予定されている。これを通じて、ペテルマン ベダをはじめとする注目のマイクロメゾンが、さらに存在感を高めることは間違いないだろう。このイベントについても、追って報告したい。

「リファレンス1826」 2025年に発表された「リファレンス1825」をベースに、小径化とプロポーションの見直しにより、さらに洗練された雰囲気をまとった、アワーグラス銀座のみでの取り扱いとなる日本限定モデル。手巻き、ケース径36.4㎜、RGまたはWGケース、アリゲーターストラップ。各限定5本。各9万6000スイスフラン。

問い合わせ:アワーグラス銀座  TEL 03-5537-7888
https://www.thehourglass.com/ja-JP/boutique/ginza

文/まつあみ 靖