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2026.10.08
日本に本格上陸した英国時計「ブレモン」ってどんな時計? CEOに聞いてみた

ブレモンCEO ダヴィデ・チェラート
ブレモンが切り拓く、英国時計の新たな章
2002年に創業した英国の時計ブランド、ブレモン。「世界で最も過酷な環境に耐えるツールウォッチを生み出す」という明確な信念のもと、創業当初から個性あるモデルを展開し、本国イギリスを中心に着実に支持を広げてきた。その歩みは、2023年にチューダー、モンブラン、パネライなどで輝かしい実績を重ねたダヴィデ・チェラート氏がCEOに就任したことで、さらに加速している。26年7月には、時計専門店「ISHIDA」を運営する株式会社ベスト販売と直接パートナーシップ契約を締結。日本市場での本格展開が、いよいよ幕を開けた。来日中のチェラート氏に、ブレモンの現在地と未来像を聞いた。
――これまで数々の時計ブランドで実績を築いてこられました。ブレモンのCEOとして、このブランドならではの強みをどのように捉えていますか。
ブレモンは歴史の長いブランドではありません。しかし、その短い歩みとは裏腹に、非常に豊かなストーリー性を宿しています。そもそも英国は時計の発展に大きく寄与してきた国であり、ブレモンがその伝統と強く結びつこうとしている点に、私は大きな魅力と可能性を感じています。
探検や冒険のためのツールウォッチに真正面から向き合っていることも、他にはない個性です。私たちは『Take it further(さらなる高みへ)』という言葉を掲げています。これは、ものづくりにおいて常に限界を超えようとする姿勢そのものです。
ご存じの通り、時計は冒険の現場でナビゲーションの役割を担ってきました。ブレモンの時計は、現代においてもなお、極限状況で最も信頼できる道具のひとつであることを示しています。だからこそ英国軍とのコラボレーションを行うこともできた。ちなみにロイヤル・エアフォース、ロイヤル・ネイビー、ロイヤル・アーミー、それぞれに対応した限定モデルを展開しているのは、現時点においてブレモンだけです
さらに米国カリファルニアの宇宙開発企業との協業も進行中です。そのプロジェクトでは、最新コレクション『スーパーノヴァ・クロノグラフ』が月へ向かうことになっています。皆さんご存じの通り、過去にも月面探査に帯同した時計はありますが、スーパーノヴァ・クロノグラフは地球へ戻ってくる時計ではありません。月面にそのまま永遠に残され、タイムカプセルのような存在になる。だからこそ、より過酷な環境に耐えうる性能が求められるのです。


ブレモンの「宇宙」のカテゴリーを象徴するコレクション「スーパーノヴァ」のクロノグラフ。宇宙探査をモチーフにした新世代スポーツクロノ。宇宙開発企業とのプロジェクトで月へ向かうことも決定しており、そのまま地球に戻らず月に残るという。904Lステンレススティール製41mmケースに、自動巻きCal.BC77を搭載。62時間パワーリザーブを備え、価格は144万円。
――過酷な環境に耐える時計を作るために、どのような点を重視しているのでしょうか。
私たちには、堅牢性に対する強いこだわりがあります。たとえば外装に関しては、904Lステンレススティールをはじめ、セラミック、チタン、アルミニウム、ブロンズなど、それぞれの用途に合わせて、耐久性の高い素材を選択しています。
パイロットウォッチの『アルティチュード』では、英国の航空機関連メーカーであるマーティンベーカー社の協力を得て、戦闘機の射出座席で発生する25Gの衝撃を想定したテストを実施しています。耐磁性や耐振動性についても、もちろん厳格に検証。先に紹介したスーパーノヴァ・クロノグラフでは、NASAで月面環境を想定した過酷な試験を行う予定です
――ブレモンは、50〜120万円台のモデルを中心に展開しています。高級時計の価格が上昇するなか、この価格帯は非常に魅力的です。そこに狙いはあるのでしょうか。
重要なのは、価格に見合う価値、つまりバリュー・フォー・マネーです。この価格帯は、チューダーやモンブランで培ってきた経験もあり、私にとって非常に得意な領域です。目指しているのは、お客様が手に取ったときに『3万ドルの時計かと思ったら、実は7000ドルだった』と感じるような体験です。期待を上回る価値を届けることこそ、ブランドの力を高める最も確かな方法だと考えています。
そのために、サプライヤー選び、素材選び、設計への投資を惜しむことはありません。904Lステンレススティールは、加工にもコストがかかりますが、品質のためには必要な選択です。もちろんブレスレットを容易に交換できる仕様や5年保証も含め、価格を超える満足を提供したい。現在の時計市場には、中間価格帯にひとつの空白があります。2010年にチューダーが再始動した時と似た状況であり、適正価格を旨とするブレモンにとっては、飛躍する絶好のタイミングだと考えています。
――英国時計産業の復興という使命も意識されていますか。
現在、ブレモンは英国における数少ない本格的なウォッチメゾンのひとつです。デザインからサービスまで一貫して担える体制を整え、オックスフォードシャーの『ザ・ウィング』では約100人の従業員が働いています。現在は年産1万本規模のキャパシティで稼働していますが、将来的には3万〜4万本規模まで拡大できる設備も備えています。さらに他の英国ブランドとも連携し、時計師の学校や若い世代への教育、デザイン、セールス、マーケティング人材の育成について、政府への働きかけも進めています。英国時計産業を再び活気づけることは、私たちにとって非常に重要なテーマです。

ロンドンの西方に位置するオックスフォードシャーは、名門オックスフォード大学を擁する英国屈指の知の拠点。近年は航空宇宙や先端技術産業も集積し、ブレモンはその地のヘンリー・オン・テムズに本社兼マニュファクチュール“ザ・ウィング”を構える。英国時計復興の最前線だ。
――現行ラインナップの中で、英国の時計作りの伝統を受け継いでいると感じる部分はどこにありますか。
まず挙げられるのは、マリンクロノメーターの時代から続く、高精度への強いこだわりです。私たちのクロノグラフはクロノメーター基準でテストされ、正確さを重視しています。一方で、トゥールビヨンやパーペチュアルカレンダーといったハイコンプリケーションにも取り組んでいます。スイスのサプライヤーと協業する部分はありますが、組み立ては英国で行う。そこには、確かなものづくりを英国で続けるという揺るぎない意志があります。
もうひとつは、ミリタリーとアビエーションウォッチのDNAです。ブレモンはこれまでに、世界の500を超える部隊と協業してきました。英国軍はもちろん、米国やオーストラリアなどの部隊とも関係を築いています。そうした背景から生まれた時計には、ヴィンテージの軍用航空時計に着想を得たモデルも多く、昔からの時計ファンの心をくすぐる要素も備えていると思います

英国時計復興の象徴ともいえるブレモンの本拠地「ザ・ウィング」。ここで設計から組み立て、品質検査までを担う。英国における数少ない本格時計製造拠点として、その存在感を高めている。
――日本市場では、どのような成長を思い描いていますか。
日本におけるブレモンの物語は、まだ始まったばかりです。しかし今回、日本の高級時計市場で確かな地位を築いてきたISHIDAとパートナーシップを結んだことで、ブランドの認知は大きく広がっていくと期待しています。日本の時計ファンは、非常に高い審美眼を持つことで知られています。そうした方々が店頭でブレモンの時計に触れれば、価格以上の価値を備えていることをきっと感じ取ってくださるはずです。何より私たちには、英国生まれの本格ツールウォッチという強いアイデンティティがあります。そのロマンに惹かれる人も少なくないでしょう。近い将来、チューダー、ブライトリング、IWCと並んで語られる存在になれると信じています

ダヴィデ・チェラートCEO。イタリア・トリノ生まれ。パネライで時計業界のキャリアをスタート。チューダーではマーケティング、デザイン、商品開発を統括し、ブラックベイコレクションを大ヒットに導く。その後モンブランの時計部門のマネージングディレクター、HYTのCEO兼クリエイティブディレクターを経て、2023年5月にブレモンのCEOに就任。

「地」のカテゴリーにあたる、英国陸軍の軍用懐中時計に着想を得たフィールドウォッチ「テラノヴァ」。904Lステンレススティール製38mmケースに自動巻きムーブメントを搭載し、ヴィンテージ感と現代的な堅牢性を高次元で融合。ブレモンが提案する“冒険のための道具”を体現した一本だ。価格53万円。

こちらは「海」のカテゴリー、英国流ダイバーズの真骨頂。スーパーマリン 300M デイトは、904Lステンレススティール製40mmケースに300m防水を備えた本格派。高い耐久性と実用性を誇り、英国ブランドならではの個性が光る一本。72万円。

「空」のカテゴリーとなるブレモンを象徴するパイロットウォッチの最新形。アルティチュード MB メテオ タイムゾーンは、英国の射出座席メーカー、マーティン・ベーカーとの協業から生まれた一本。過酷な耐久試験をクリアした堅牢性に加え、第2時間帯表示を備え、世界を飛び回る現代の冒険者を支える。109万円。
問い合わせ:ISHIDA表参道 TEL 03-5785-3600
https://ishida-watch.com/
文/吉田 巌
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