セイコー プレザージュの最新モデル漆・白檀(びゃくだん)塗りの只ならぬオーラ
ベースとなる黒漆が夜空を、2つのインダイヤルの濃赤がわずかな陽の光に染まった空を表す。そして蒔絵によるパワーリザーブ計の金色が、夜明け前の空に浮かぶ二十三夜過ぎの月、すなわち有明の月を見事に象った。
ベースとなる黒漆が夜空を、2つのインダイヤルの濃赤がわずかな陽の光に染まった空を表す。そして蒔絵によるパワーリザーブ計の金色が、夜明け前の空に浮かぶ二十三夜過ぎの月、すなわち有明の月を見事に象った。
漆芸の技法を駆使し、日本の美を表現
ベースとなる黒漆が夜空を、2つのインダイヤルの濃赤がわずかな陽の光に染まった空を表す。そして蒔絵によるパワーリザーブ計の金色が、夜明け前の空に浮かぶ二十三夜過ぎの月、すなわち有明の月を見事に象った。
夜明け前、漆黒の空にほのかに陽が差して、わずかに茜に染まる中に、月が浮かぶ。
この二十三夜過ぎの月を、有明の月と称する。
古くから月を愛でてきた日本人の感性で、
雅(みやび)な名前が与えられたこの月と夜明け前の空を、
セイコー プレザージュは、ダイヤルに映し取った。
黒に茜色を浮かばせる独特の質感は、漆芸による。
古来より伝わる日本を代表する工芸技術が、世界に通用する腕時計の新たな美を生み出した。
写真/谷口岳史 文/髙木教雄 構成/市塚忠義
漆塗りによる初の2トーンダイヤルは、黒1色よりもはるかに製造が困難。
職人の手作業で、時間をかけて多様な技巧を組み合わせたところに、最上級の美が生まれる。
濃赤のインダイヤルは日付と曜日表示。金色のパワーリザーブ計が寄り添い、工芸的ダイヤルの濃密さを増す。自動巻きCal.6R21搭載。裏蓋ガラス部分にも金色で三日月を表現している。デュアルカーブサファイアガラス。限定2000本。自動巻き。径40.5㎜。SSケース。クロコダイルストラップ。10気圧防水。27万円。
濃赤のインダイヤルは日付と曜日表示。金色のパワーリザーブ計が寄り添い、工芸的ダイヤルの濃密さを増す。自動巻きCal.6R21搭載。裏蓋ガラス部分にも金色で三日月を表現している。デュアルカーブサファイアガラス。限定2000本。自動巻き。径40.5㎜。SSケース。クロコダイルストラップ。10気圧防水。27万円。
栴檀(せんだん)は双葉より芳し──この栴檀とは、芳香を放つ熱帯性常緑樹で、別名は白檀。お線香の香りとして、聞き覚えがあるだろう。燃やさずとも高貴に香るその香木は、飴色を呈している。古来の中国で考案された漆芸技法の一つ白檀塗りは、出来上がりが香木の飴色に似ていることがその名の由来だ。
2015年、セイコー プレザージュに漆ダイヤルをもたらした漆芸家の田村一舟氏は、この白檀塗りで有明の月のイメージを見事に表現してみせた。
漆の木の樹液をろ過し、精製したものは半透明の飴色をしている。これを称して透き漆。白檀塗りは、漆に金属の箔や粉を蒔いた上に透き漆を施して金属の色を透かすことで、白檀の香木が持つ高貴な飴色を再現する。田村氏は、透き漆の中でも飴色が強い朱合蝋色(しゅあいろいろ)漆を用い、塗りと研ぎを3度繰り返して、茜色の空をインダイヤルに表すことに成功した。その製造には、実に膨大な手間と時間を要する。
全体の黒漆塗りは、ベースの金属盤を木炭を使い、手で研ぐことに始まる。続いて下塗りとして精製前の生漆を全体に塗り乾燥。全体を平滑に木炭で研ぎ、黒漆の塗り・乾燥・研ぎを数度繰り返す。そしてもう一度黒漆を塗り、乾燥後にまた研ぎ、専用の磨き粉で磨いてから、指先に特殊な粉を付けて慎重に撫で艶を出す、ろいろ仕上げという工程を経て、ようやく完成する。
こうして出来上がった漆黒の盤の上に、位置と大きさが均一になるようインダイヤル部分を紅殻(べんがら)漆(赤漆)で慎重に描いて銀色粉を蒔き、乾燥させるとやっと白檀塗りの準備が完了。前述のように朱合蝋色漆の塗り・乾燥・研ぎを3度繰り返して乾かしてから、同じく田村氏の指で、漆ならではの艶やかな濃赤へと、ろいろ仕上げされる。
そして最後に、パワーリザーブ計を漆で描き、上から金色粉を蒔いて有明の月をクッキリと黒の上に浮かばせる。
ダイヤルは椀などよりもはるかに薄く、また厚さに厳密な数値が要求される。各工程の塗りも研ぎも、厚みを合わせるためにより慎重さを要する。田村氏の技術をもってしても、求められる厚さが得られるようになるまで、かなり時間がかかったという。かくして出来上がった有明の月のダイヤルは、世界に誇るべき高貴な工芸品となった。
1957年生まれ。金沢に伝わる加賀蒔絵の第一人者・清瀬一光氏に師事し技術を修得後、独自の細密技法を生み出す。精緻な技術による繊細な美しさは、海外での評価も高い。
下塗りも含め、塗りと研ぎは計5回も繰り返す。最終の黒漆の塗りには、厚みを最適に保ちつつ、表面を平滑にする熟練職人ならではの技が要求される。研ぎに使う木炭は、油桐を用いた柔らかな駿河炭だ。
下塗りも含め、塗りと研ぎは計5回も繰り返す。最終の黒漆の塗りには、厚みを最適に保ちつつ、表面を平滑にする熟練職人ならではの技が要求される。研ぎに使う木炭は、油桐を用いた柔らかな駿河炭だ。
黒塗りの上に、赤漆でインダイヤルを描いて銀色粉を蒔き、乾燥した上から朱合蝋色漆を施す。ダイヤルに厚みが出ないよう朱合蝋色漆を極力薄く塗りつつ、美しい濃赤を出す。その匙加減の見極めにも、時間がかかったという。
黒塗りの上に、赤漆でインダイヤルを描いて銀色粉を蒔き、乾燥した上から朱合蝋色漆を施す。ダイヤルに厚みが出ないよう朱合蝋色漆を極力薄く塗りつつ、美しい濃赤を出す。その匙加減の見極めにも、時間がかかったという。
漆に金属粉を蒔いて絵にするから、蒔絵。月に見立てたパワーリザーブ計の形を漆で描いた上から、毛棒で金色粉を蒔く。乾燥後、金色粉を固定し、かつ発色が保たれるよう、透き漆が極めて薄く塗られる。
漆に金属粉を蒔いて絵にするから、蒔絵。月に見立てたパワーリザーブ計の形を漆で描いた上から、毛棒で金色粉を蒔く。乾燥後、金色粉を固定し、かつ発色が保たれるよう、透き漆が極めて薄く塗られる。
金色のパワーリザーブ計と針が調和する。3針も含め、ストラップには金色の止め縫いが効く。カーブサファイアガラス。自動巻き。径40.5㎜。SSケース。クロコダイルストラップ。10気圧防水。13万円。
漆黒のダイヤルに浮かぶ金色の針は、金蒔絵を見ているかのよう。セイコー初の懐中時計「タイムキーパー」のダイヤルデザインを受け継ぐ。カーブサファイアガラス。自動巻き。径40.5㎜。SSケース。クロコダイルストラップ。10気圧防水。11万円。