腕時計の真の価値が分かる「現地」訪問ツアー あの工房へ行ってきた!! vol.17/Parmigiani Fleurier(パルミジャーニ・フルリエ)

修復からひげゼンマイまで、
なんでもできる時計ブランド 「神の手」を支える6つの拠点を完全制覇 !!

神の手と称賛される修復師が、自らのメゾンを1996年に設立。以降パルミジャーニ・フルリエは、内製化を推進してきた。
今も修復を請け負う本社に加え、5つの工房を傘下に。時計製作のほぼすべてを統合し、真の独立性を堅持する。 写真/岸田克法 文/髙木教雄 構成/市塚忠義

パルミジャーニ・フルリエの拠点1 本社

パルミジャーニ・フルリエの拠点1 本社のイメージ

自社製品以外の修復もする
サンド財団の時計の守護神

スイス・フルリエに建つ神の手の居城。開発部門に加え修復部門も持つ。
450年にわたる時計製作の技術を修復で受け継ぎ、未来へと歴史をつなぐ。

  • メゾンを率いる凄腕修復師

    メゾンを率いる凄腕修復師

    サンド・ファミリー財団のタイムピースやオートマタの修復で名を馳せたミシェル・パルミジャーニ氏。同財団のバックアップにより、1996年にブランドを創設した。

  • 複雑なオートマタも完全修復を可能に

    複雑なオートマタも完全修復を可能に

    トリガーを引くと、銃口から鳥が飛び出しさえずる。超複雑なオートマタ、ピストル型シンギングバードの修復の際は、拡大模型で動きを検証した。外装も当時の技術で修復。

パルミジャーニ・フルリエの拠点1 ヴォーシェ・マニュファクチュール・フルリエ

パルミジャーニ・フルリエの拠点1 ヴォーシェ・マニュファクチュール・フルリエのイメージ

新ムーブメントを開発するフルリエのシンクタンク

メゾン専用ムーブに加え、名だたるブランドのオーダーにも対応。
ヴォーシェは、スイスの高級機械式時計を支える陰の主役だ。

  • 日本人が陣頭指揮を執る

    日本人が陣頭指揮を執る

    浜口尚大(たかひろ)氏。ルノー・エ・パピ、オーデマ ピゲを経て、2012年10月にヴォーシェに入社。現在は開発と製造両部門の責任者を兼ねる。

  • 全自動の精度・防水検査

    全自動の精度・防水検査

    ムーブメントの1 次精度検査とケースの1次防水検査を自動化するマシンを導入。ロボットアームがムーブメントやケースを検査機にかけ、合否を判定し、振り分ける。

  • メゾン初の一体型クロノ

    メゾン初の一体型クロノ

    トンダ クロノール

    アニヴェルセール

    昨年迎えたメゾン創設20周年記念モデル。初の一体型クロノを、毎秒10振動のスプリットセコンドで実現した。18金製の地板とブリッジで、節目の年を祝す。限定25本。手巻き。径42.1㎜。18KWGケース。アリゲーターストラップ。1435万円。

  • SSクロノグラフの新顔

    SSクロノグラフの新顔

    トンダ

    メトログラフ

    6時位置の12時間積算計内にあった日付表示を、12時位置に独立。重ねていた3つのインダイヤルも切り離され、クラシックな印象に仕立て直した。ダイヤル外周にはタキメーターを置く。自動巻き。径40㎜。SSケース。カーフストラップ。125万円。

神の手の故郷フルリエに主要な2つの拠点を置く

19世紀より時計産業の街として栄えたスイス・ヌーシャテル州フルリエにパルミジャーニ・フルリエの本社はある。その社屋は、1820年に建てられた歴史ある建造物。メゾンを率いるミシェル・パルミジャーニ氏は、ここで新作時計の構想を練り、道路を挟んだ別棟では、彼の時計製作の原点である修復が、今も継続して行われている。
この本社と双璧を成す重要な拠点が、街の郊外に建つ「ヴォーシェ・マニュファクチュール・フルリエ」だ。まずパルミジャーニ・フルリエのムーブメント製作部門として設立され、2003年に改組・分社化。メゾンのムーブメント製作を継続して行うのと並行して他社への供給も行う高級ムーブメント・メーカーの顔を持つに至った。
ここで開発と製造の陣頭指揮を執る浜口尚大氏は、「高度な工業化と手仕事とを組み合わせ、5つのベースキャリバーを顧客のニーズに合わせてカスタマイズできるのが強み」だと語る。
ドライ切削とオイルを用いる多軸の各CNCマシンを使い分け、真ちゅうやゴールド、チタンなど多様な素材の地板・ブリッジに対応。面取りなどの仕上げは伝統的な手作業を受け継ぐ一方、精度・防水の1次検査を完全自動化するなどして、年間1万個もの製造を可能にしている。また近年は、「繰り返しの加工精度が圧倒的に優れている」からと、昔ながらの金型による部品製作を導入。高性能と美観が高次元で融合した機械が、ここで生まれる。

より高精度な加工を目指し、金型へ原点回帰

より高精度な加工を目指し、
金型へ原点回帰

クロノグラフ用のレバーやバネ、カンヌキといった形状が複雑なスチール製パーツは、昔ながらの金型で製造。同じく複雑な形をくり抜ける最新のワイヤー放電加工機とを使い分けることで高い加工精度を保持し、より高性能なムーブメントを生み出している。

パルミジャーニ・フルリエの拠点1 レ・アルティザン・ボワティエ

パルミジャーニ・フルリエの拠点1 レ・アルティザン・ボワティエのイメージ

個性的なデザインを実現する
ケース製作のスペシャリスト

ラ・ショー・ド・フォンにアトリエを置く、ケースのスペシャリスト。
高度な切削加工技術と手仕上げとで、ラグジュアリーな美観を極める。

  • 3次元で完成形をシミュレーション

    3次元で完成形をシミュレーション

    ケースの設計には、3D CADを使用。ムーブメントやサファイアガラス、リューズ、パッキンまで含む完成形をシミュレーションし、超複雑なフォルムを完璧に作り上げる。

  • 独立ラグを溶接し造形美を豊かに

    独立ラグを溶接し造形美を豊かに

    今年の新作「トリック クロノメーター」のケースは、ラグが別パーツに。溶接することで、ベゼルにラグがわずかにレイヤードした豊かな造形美が生み出される。

高度な切削加工技術で複雑で美しいカタチを実現

「若い頃、時計師になるか建築家になるか、迷っていた」というミシェル・パルミジャーニ氏は、黄金比やフィボナッチ数列に基づいた美しく個性的なデザインでも評価が高い。そのケースのフォルムを作り上げているのが、2000年に傘下となった、「レ・アルティザン・ボワティエ(LAB)」である。旧称は、ブルーノ・アフォルテ。当時から、高級ケースの作り手として時計業界では知られた存在だった。今もパルミジャーニ・フルリエ以外に、20社近くのクライアントを持つ。
時計ケースの製造方法は、鍛造(スタンピング)と切削とに大別されるが、ここが得意とするのは、後者だ。冷間鍛造された素材を仕入れ、高性能な5軸のCNCマシニングセンターを駆使し、時にワイヤー放電加工機までも併用して、複雑な形状のケースの開発・製造を可能に。3Dプリンターによる試作も逸早く導入したという。ラグ側にダイヤルを持つ「ブガッティ スーパースポーツ」のような、ミシェル・パルミジャーニ氏の独創的な発想を実際に形にできるのはLABの高い技術力の賜物。そしてやはり伝統的な手作業による磨き仕上げが、高級時計にふさわしい上質な美観には欠かせない。
さらにミニッツリピーターのスライダー用のバネといったケースのインナーパーツまで自作できるのが、LABの強み。専従の技術者が、バネの強さや長さを綿密に調整しているから、パルミジャーニ・フルリエのミニッツリピーターの操作感は実に快適であり、また信頼性も高い。優れたケース加工技術が、メゾンの複雑機構を支える。

滴型のケースは、何と塊から削り出し!

滴型のケースは、何と塊から削り出し!

「ブガッティ スーパースポーツ」のケースの試作品を発見! 製造工程を検証するための真ちゅう製で、塊からワイヤー放電加工機を使って、まず右のように内側をくり抜き、それを7 軸のCNCマシンを駆使して左にあるようにフレーム状に切削加工する。

  • 名車からインスパイア

    名車からインスパイア

    ブガッティ エアロライト

    パフォーマンス

    左側にプッシャーを置くレーシング・クロノ。そのボタンをラグに融合させた造形が巧みだ。赤×青のフレーム上の針で数字を囲む積算計は、ブガッティ シロンがモチーフ。自動巻き。径41㎜。チタンケース。カーフストラップ。245万円。

  • 斬新で美しい滴フォルム

    斬新で美しい滴フォルム

    ブガッティ

    スーパースポーツ

    運転中でも見やすいよう、ダイヤルをもち上げたドライビングウォッチ。滴型のフォルムで、ブガッティの世界観を表現する。上面にパワリザ計を装備。限定30本。手巻き。ケース50.5×36.3㎜。18KRGケース。アリゲーターストラップ。3230万円。

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