2018.08.16

【英国発はこんなにスゴイ!】ひげゼンマイ

ひげゼンマイ

1660年 ロバート・フックがひげゼンマイの原理となる弾性の法則を発明

今や当たり前のようにテンプに使用される「ひげゼンマイ」。その弾力の特性を見極め、時計のムーブメントに活用することを考案したのは、英国の物理学者・時計師であった。

バネを引っ張る力が弱いと伸びが小さく、強いと伸びが大きい。つまりバネの伸びは、加えた力に比例するというのが「弾性の法則(フックの法則)」だ。

 

時計の小型&高精度化に貢献したひげゼンマイ

テンプの中央に取り付けられ、一定の速度で往復運動を行い、時計に精度をもたらすひげゼンマイ。この非常に繊細な螺旋状のパーツは、17世紀の英国人物理学者・時計師ロバート・フックが発案した「弾性の法則(フックの法則)」に基づいて開発されたものである。
フックはクリスチャン・ホイヘンスらが発明した振り子時計に興味を抱き、重力と計時機構の研究を進めるなかで、1660年、弾性をもつバネの伸びに対して張力が比例するという法則を発見。その法則をもとにゼンマイバネを使った懐中時計も製作した。ところがフックは、これに関する特許は取得せず、発明をそのままにしておいたことで巨額の富を得る機会を逃してしまう。
結局、1675年にホイヘンスがゼンマイ時計の特許を取得し、記録上はホイヘンスの発明ということになった。
振り子の仕組みを大幅に縮小し、のちにひげゼンマイに進化するこのゼンマイ機構がなければ、時計の小型化および高精度化は実現しなかっただろう。

 

発案した英国人はこの人

時計の進化に大きく貢献した英国物理学界の偉大な頭脳

ロバート・フック(Robert Hooke)

英国のワイト島で生まれ、幼い頃から機械に興味をもったフック。オックスフォード大学時代に物理学者ロバート・ボイルの助手を務める傍ら、天文学や力学の研究を進め、1660年、バネの弾性に関するフックの法則を発表する。その後は物理学界の権威となり、アイザック・ニュートンらと激しい論争を繰り返した。また、時計の世界では自らの法則を具現化したゼンマイ時計や、退却式アンクル脱進機を発明。

 

[時計Begin 2018 SUMMERの記事を再構成]
文/岡崎隆奈 イラスト/WADE LTD