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2020.06.16
素材とサイズで勝負するパーツ専業サプライヤー
素材とサイズで勝負する
パーツ専業サプライヤー
分業制で発展してきたスイス時計業界は、今も1つの技術に特化したサプライヤーが多数存在する。最先端のマイクロ加工技術を駆使して、あるいは古い工作機械を手練の職人が微調整しながら操り、機械式ムーブメントには欠かせない微細なパーツを超精密に加工し、生み出している。
ハイテクもローテクも
独自の技術で業界をリード
21世紀の時計界を語る上で、シリコンの存在は欠かせない。2001年、ユリス・ナルダンが「フリーク」でシリコンを初採用。2006年には、アクロテックグループと合弁会社「シガテック社」を設立し、シリコンパーツの量産化に乗り出した。シガテック社は、シリコンの精密成型に欠かせないエッチングと機械加工に関する特許も取得。シリコン製脱進機製造に関して、アドバンテージを持つこととなる。またアクロテックグループは、メッキを積層する超精密成型技術LIGAを得意とする「ミモテック社」も傘下に置き、これにシリコン技術を組み合わせることで、ユリス・ナルダンに革新的調速機をもたらしている。
こうしたハイテク技術と同時に、昔からあるローテク技術も時計製作には不可欠である。例えばネジなどの旋盤加工を専門とする「エルウィン社」が使うのは、1960年代のマシン。構造が簡素で、汎用性が高いからだ。これをCNC化し、職人が入念に微調整を繰り返し、超微細なネジを金属棒から1つずつ精密に削り出している。切削によるネジは丈夫で、ヘッドやネジ山がつぶれにくい。名だたる高級時計メゾンが同社のネジを欲するゆえんだ。
ハイテクでもローテクでも、他にない技術を持つサプライヤーは強い。
シリコンパーツとLIGA部品のスペシャリスト
アクロテック・グループ
シガテック社/ミモテック社
1つ屋根の下に2社が集結
2社とも時計以外にも様々な産業に、シリコンとLIGAとで貢献。シリコン成型に関する特許を持つシガテック社と、シリコンひげの特許を共同で持つパテック フィリップとロレックス、スウォッチ・グループとは、2013年に互いの特許が使えるクロスライセンス契約を締結した。
ULYSSE NARDIN(ユリス・ナルダン)
マリーン トルピユール(モナコヨットショー限定)
ダイヤルは、伝統的なグランフー・エナメル製。質感が、実に豊かだ。限定100本。自動巻き。径42㎜。SSケース。アリゲーターストラップ。110万円。問い合わせ:ソーウインドジャパン
ムーブは、ダイヤモンドシル製脱進機とシリコンひげを採用。
1個から製作する最高級ミクロネジ
エルウィン社
微細なパーツの旋盤加工に特化
1980年、古い旋盤をCNC化するメーカーとして創業。2001年にパルミジャーニ・フルリエを擁するサンド財団傘下になったのを契機に、旋盤加工専業ファクトリーへと転身した。直径7㎜以下のパーツ製造を専門とし、ネジ以外にもリューズの巻芯や歯車、コラムホイールも製造。
超微細なネジも切削加工
製品の1つ。ご覧の通り、ボールペンのペン先よりもはるかに小さく、その直径はわずか0.8㎜。これを切削加工できる技術を持つ。
CNC化した古い旋盤がズラリと並ぶ。日中は職人が付きっきりで微調整し、夜に自動で切削加工する。
[時計Begin 2020 SPRINGの記事を再構成]