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2020.09.10
<新企画!>気になるあの人は、どんな時計?
男性が身に着けるアイテムのなかでも、高額かつ種類も星の数ほどある本格時計。それだけに時計選びは難しいと言われています。ではセンスが良いと評判のあの人は、一体どんな時計に行き着いたのでしょう? 出会いのきっかけから目の付け所、実際の着けこなし方など、気になるポイントをうかがいました。
「装いのバランスを考えて選びます」
鴨志田 康人さん
ユナイテッドアローズ
クリエイティブ アドヴァイザー
穏やかなエレガンスに惚れ込みました
セレクトショップの雄として名高いユナイテッドアローズ。多くのファッション誌もこのショップをお手本に、スタイル提案のページを組んだりするほどの名店です。なかでも鴨志田康人さんは、創業時から同ショップにて企画からバイイング、店舗装飾監修などまで手掛けてきた羅針盤的存在。それと同時に、国内はもちろん世界的にも注目を集めるファッショニスタであり、メンズファッションシーンのご意見番として、広くリスペクトを受ける存在なのです。そんな装いの達人は、いったいどんな時計を愛用しているのでしょう? 「僕はそこまで時計のフリークではありません」と前置きをつけて見せてくれたのが、オーデマ ピゲのオートマチック。1970年代のそれを思わせる流麗なケースが目を引くビンテージウォッチです。
「この時計は、ユナイテッドアローズの六本木店で購入しました。細身のバーインデックスにシャープなペンシル型ハンドの二針というシンプルさ。でありながら、丸みのあるスクエアケースが真面目すぎない色気を感じさせます。そしてお気に入りのもうひとつのポイントが、グレーのクロコダイルストラップ。流麗な造形のケースの色気を高めてくれる、絶妙なコンビネーションだと思っています」
ファッション関係者が選ぶオーデマ ピゲといえば、ロイヤル オークがつとに有名。しかしその“定番”をあえてハズすところに、ファッショニスタならではの視点があるように思われます。
ちなみに今日の着こなしは、鴨志田さんが現在日本部門のディレクターを務めるアメリカのクロージングブランド、ポール・スチュアートのスーツを軸としたもの。
装いはバランスこそが大切です
「個人的にはもっと多くの人に自由にスーツを楽しんでもらいたいと考えています。ビジネスマンのユニフォーム的なスーツではなく遊び心のあるスーツ 。この一着はまさにそんな思いを込めたもの。柔和なオリーブカラーや品格ある仕立て、男らしいワイドラペルなど、1970~80年代を意識した一着です」
鴨志田さんいわく、Vゾーン次第でシリアスな装いにも作れるが、今日は“個性をアピールする必要のある、砕けたビジネスシーン”を想定しており、それゆえシャツも遊び心のあるカラーストライプシャツを選んだのだそう。そんなエレガントな着こなしにCの形をアレンジしたような薄型二針時計は非常にマッチしています。
「装いはバランスが大事。なにか突出した要素が入り込むと、すぐにバランスは崩れてしまいます。ソフトでエレガント、そして寛ぎをポイントとしたスーツスタイルには、時計も同じような要素のものがベター。このオーデマ ピゲは穏やかながらエレガントな雰囲気を秘めています。中間色であるグレーのストラップも非常にオリーブスーツにマッチしているように思います」
これだけでも鴨志田さんのセンスが見て取れますが、せっかくですから編集部はさらに鴨志田イズムを見せていただきたいとリクエスト。そこでご紹介いただいたのがロレックスのデイトジャストです。
「これもビンテージものを入手したもの。ティファニーのダブルネーム仕様で非常に珍しいものですが、個人的に目に留ったのはダイヤルのブロンズカラー。それとコンビブレスレットの時計はアクのあるルックスがひとつのポイントです。基本的にロレックスは自分にはイカツイと思っているのですが、そういう点でこれはギラツキ感がちょうど良いかなと(笑)。 装いに少々強めのスパイスを取り入れたいときなど非常に役立ちます」
自分の服装とマッチするかどうかがポイントに
では、そのデイトジャストを実際にはどんな感じで着用するのでしょう? 鴨志田さんいわくどちらかというとカジュアルな服装に合わせることが多いとのこと。
「たとえばこのオリーブのスーツは着崩すことができるところも特徴的。そもそもカラーが寛いでいるし、コンストラクションも現代的にソフトな仕様。だからインナーをストライプなどのカットソーに換えるだけで、非常に砕けた軽妙な雰囲気にチェンジできるのです」
マルニのカットソーはグリーン×イエローのボーダー柄。さり気ない組み合わせのようですが、デイトジャストもSS×ゴールドのコンビであり、文字盤とスーツのカラーが似ているだけでなく、黄色の縞柄と時計のゴールドが揃っているのです。だからこそのこのまとまり感。実に参考になる合わせ方と言えるでしょう。そんな鴨志田さんは、時計にどんな要素を求めているのでしょうか?
「正直、メカニズム的なことを意識することはありません。職業柄もあって、一番気にするのはやはり服装とのマッチングです。僕はネックレスやブレスレットなどがまったく似合わないキャラクター。だから、その代わりに時計を身に着けているんです。アクセサリーとしての時計において、大事なのはカラーやデザイン。服に合わせたとき、大人らしくエレガントに見えるかどうかは、僕の時計選びにおける大事なポイントと言えるでしょう」
構成・文/長谷川 剛(zeroyon)、写真/鈴木克典
スーツを気軽に楽しむというこだわりを実践し続けている鴨志田さん。お気に入りのポール・スチュアートのスーツに合わせたシャツはシャルベ。タイはユナイテッドアローズのソリッドタイ。硬軟のバランスが絶妙です。
有機的なフォルムのスクエアケースが目を引く1970年代のオーデマ ピゲ。「ロイヤル オークも好きなモデルですが、こういった装いにはソフトな印象の小物がマッチするように感じます」
ロレックスのデイトジャストはティファニーとのダブルネーム。SSとゴールドのコンビ仕様がポイント。「僕はブレスレットなどアクセサリーを着けませんので、この時計はいわば自分にとってのブレスレット。腕元が艶っぽい印象に仕上がります」
スーツのカラーとリンクさせたグリーン×イエローのボーダーニットでカジュアルに。SS×ゴールド仕様のロレックスが適度な重みを添えています。