2025.06.23

目覚ましい進化の理由は、工房にあり。ルイ・ヴィトン ファクトリー探訪【第1回】

ルイ・ヴィトンのハイウォッチメイキングの進化が加速している。新しい「タンブール タイコ スピン・タイム」や「タンブール コンバージェンス」は、それを象徴するものだ。その製造拠点であるウォッチメイキングアトリエ「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」を訪ね、その全貌を探った。

日に日に拡大するウォッチメイキングアトリエ
「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」の戦略

R&Dやアッセンブリーはもちろん、コンポーネンツの製造、デコレーション、メティエダールまで、全てを統合、内製化し、そのメリットを最大限生かした製造現場に潜入した‼

アッセンブリー部門は、奥から3針、スピン・タイム、トゥールビヨン、リピーター&複雑懐中時計と、“島”ごとに担当を分けている。ワンモデルを一人の時計師が組み立てる。

ジャン・アルノー氏が押し進める理想を目指して

今年1月、ニューヨークとパリで開催されたLVMHウォッチウィークで、ルイ・ヴィトンは全く新しい「タンブール」コレクションを披露した。機構、外装、仕上げ、どれを取っても時計に精通した愛好家を唸らせるに十分なクオリティを備え、ハイウォッチメイキングをさらに前進させるスタンスを鮮明にした。その原動力こそウォッチメイキングアトリエ「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」である。

R&Dでは、3Dプリンターで作成した大型の模型でシミュレーションが行われていた。

リューズの耐久性テストでは、マシンで10万6000回も回転させるという。

「タンブール タイコ スピン・タイム アンティポード」の2つの都市名を刻んだキューブに、転写技術を使ってプリントが施される。

「タンブール タイコ スピン・タイム エアー トゥールビヨン」のムーブメントの組み立ても行われていた。

R&Dでは、3Dプリンターで作成した大型の模型でシミュレーションが行われていた。
リューズの耐久性テストでは、マシンで10万6000回も回転させるという。
「タンブール タイコ スピン・タイム アンティポード」の2つの都市名を刻んだキューブに、転写技術を使ってプリントが施される。
「タンブール タイコ スピン・タイム エアー トゥールビヨン」のムーブメントの組み立ても行われていた。

 

ミシェル・ナバス氏とエンリコ・バルバシーニ氏という、有力メゾンでキャリアを重ねた辣腕時計師の二人が、2007年に設立。当初から高い評価を受けていたが、スピン・タイムの開発をきっかけとしてルイ・ヴィトンの時計製造に関わり始める。そしてモノづくりやメティエダールに対する価値観とスタンスを共有するべく、2011年にルイ・ヴィトン傘下に。2014年には現在のジュネーブ郊外のメイランの地に移転し拡充を図る。2021年にLVMHグループを運営するアルノー家の四男ジャン・アルノー氏がウォッチ部門ディレクターに就任すると、戦略を大きく転換し、すべてに於いて前例のない洗練されたレベルへと進化させるべく投資が進められ、ケース、文字盤製造部門、さらに伝統的なハンドクラフトを手掛ける部門なども統合し、生産体制を盤石なものにしていった。

宙に浮かんだ2つのコンプリケーション

「タンブール タイコ スピン・タイム エアー トゥールビヨン」。キューブのフローティング表示と、センターに配置したモノグラム・フラワーのケージが印象的なフライングトゥールビヨンとを融合。限られたスペースに2つの複雑機構を盛り込んだ技術力は見事。自動巻き。径42.5㎜。18KWGケース。カーフストラップ。5気圧水。2783万円。

今回の取材でまず訪れたのが、「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」のすぐそばの「レ・キャビノティエ」というファクトリー。2023年に内製化を進めるために傘下に統合され、主にハイエンドピース用のケース、文字盤、受け、バネ類などのコンポーネンツの製造や仕上げを担当。ゆとりあるスペースにCNCマシンが並ぶ部門にはロボットによる24時間製造体制も整い、マシンの増設も視野に入っているようだった。さらに研磨や面取り、ペルラージュなどのデコレーション、穴石の取りつけ作業に従事する部署も。ジュネーブシール認定のための高度な仕上げも行われていた。

ルイ・ヴィトンのタイムピースの新時代の到来を告げるコレクション

「タンブール タイコ スピン・タイム」。全身にシックなドルフィングレーカラーを纏った、やや小ぶりなクローズドダイアル仕様。自動巻き。径39.5㎜。18KWGケース。ラバーストラップ。10気圧水。1171万5000円。

「タンブール タイコ スピン・タイム エアー アンティポード」。世界24タイムゾーンの時刻を昼夜表示と同時に示す画期的なワールドタイム。自動巻き。径42.5㎜。18KWGケース。カーフストラップ。5気圧水。1611万5000円。

「タンブール タイコ スピン・タイム エアー」。時を示すキューブが浮いているかのように見えるフローティング表示に目を奪われる。自動巻き。径42.5㎜。18KWGケース。カーフストラップ。5気圧水。1320万円。

「タンブール タイコ スピン・タイム」。全身にシックなドルフィングレーカラーを纏った、やや小ぶりなクローズドダイアル仕様。自動巻き。径39.5㎜。18KWGケース。ラバーストラップ。10気圧水。1171万5000円。
「タンブール タイコ スピン・タイム エアー アンティポード」。世界24タイムゾーンの時刻を昼夜表示と同時に示す画期的なワールドタイム。自動巻き。径42.5㎜。18KWGケース。カーフストラップ。5気圧水。1611万5000円。
「タンブール タイコ スピン・タイム エアー」。時を示すキューブが浮いているかのように見えるフローティング表示に目を奪われる。自動巻き。径42.5㎜。18KWGケース。カーフストラップ。5気圧水。1320万円。

ルイ・ヴィトン 公式サイト

[時計Begin 2025 SUMMERの記事を再構成]

※表示価格は税込み
写真/村松史郎 文/まつあみ靖 構成/市塚忠義