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2025.07.07
目覚ましい進化の理由は、工房にあり。ルイ・ヴィトン ファクトリー探訪【最終回】
ルイ・ヴィトンのハイウォッチメイキングの進化が加速している。新しい「タンブール タイコ スピン・タイム」や「タンブール コンバージェンス」は、それを象徴するものだ。その製造拠点であるウォッチメイキングアトリエ「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」を訪ね、その全貌を探った。
2人のキーパーソンを直撃
今作りたい時計とは⁉
充実の時代を迎えている「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」は、今後どんな進化を遂げようとしているのか?

【ミシェル・ナバス氏】「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」創業者兼マスター・ウォッチメーカー。ブザンソンの時計学校を卒業した後、有力メゾンでキャリアを積んだ、現代の最高峰の時計師の一人に数えられる人物。

【マチュー・エジ氏】「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」アーティスティック・ディレクターを務め、デザイナーチームを統括。アーカイブからも想を得ていると語る。
全員が同じスピリットを共有できる規模を大切に
ファクトリー訪問の最後に、「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」の創業者兼マスター・ウォッチメーカーであるミシェル・ナバス氏と、デザイン部門のチーフであるアーティスティック・ディレクターのマチュー・エジ氏に話を聞くことができた。アトリエ内にクリエイティブないい雰囲気が漲っている印象を受けたことを伝えると、ナバス氏はこう語ってくれた。
「この環境を作り上げられたのは、ジャン・アルノーのおかげでしょう。目が行き届き、皆が同じスピリットを共有できる規模。20年ほどの歴史しかないアトリエですが、過去に縛られない自由さがあり、実績のある人材が集まって、今までになかったものを作り出そうという意欲に満ちている」
新作の超複雑腕時計「タンブール ブシドウ・オートマタ」も、そんな意欲を反映したひとつだろう。マチュー・エジ氏が言う。
「日本は私のインスピレーションの源泉で、日本を意識したモデルを作りたかった。日本の伝統工芸や匠の技をリスペクトしています。我々の時計製作も、常にそのレベルを目指しています」
彫金だけでも140時間を費やす労作

2021年に発表され驚きを誘った「タンブール カルぺ・ディエム・オートマタ」の流れを汲む、和モチーフの新作オートマタウォッチ「タンブール ブシドウ・オートマタ」。その製作中の文字盤。彫金、エナメル、細密画など多彩な伝統技法が用いられているだけに、担当する技術者同士の連携が重要だ。
今後はどんな時計を作りたいのだろうか? 再びマチュー氏。
「数年先のモデルまで既に企画は進んでいます。ルイ・ヴィトンだけでなく、ダニエル・ロート、ジェラルド・ジェンタも手掛けますが、アイデアを生かせる3つのフィールドがあることは意義深く、やりがいがある」

中国の伝統芸能、川劇の変面をモチーフとする「タンブール オペラ・オートマタ」のために、彫金やエナメルで仕上げられた文字盤コンポーネンツ。

同モデルのドラゴンの部分にも、女性技術者によって繊細なハンドエングレービングが施されていた。
ナバス氏がこう締めてくれた。
「クリエイティビティとエレガンス、これを大切にしていくことが肝心。今、このアトリエには個々人を尊重する理想的な環境が整っていますから、さらに充実させていけると思います」
[時計Begin 2025 SUMMERの記事を再構成]
※表示価格は税込み
写真/村松史郎 文/まつあみ靖 構成/市塚忠義