文字盤はこうして作られる！ グラスヒュッテ・オリジナルの場合

【学ぶぞ、本格時計】パーツで分けて、すべてを理解しよう！

なんとなくは分かっているけど、人には説明できない……。そんな時計の専門用語を一度しっかりマスターすれば、本格時計の真の価値が見えてくるはずだ！

［ダイアル編］
グラスヒュッテ・オリジナルに学ぶ【ダイアルの作り方】
最新技術とクラフツマンシップの融合

手作業を重んじながら文字盤製造を全て内製化

文字盤は腕時計の“顔”というべき存在。近年、文字盤装飾への注力がトレンド化し、工芸性の高さで鎬を削る動きも見られる。そんな中、ドイツを代表するハイエンドメゾン、グラスヒュッテ・オリジナルは創業180周年を機に、これまでフォルツハイムにあったダイアルマニュファクトリーを閉じ、約3年を費やし本社にほど近いグラスヒュッテの地に、この6月、新工場をオープン。他部門との連携を強化し、文字盤品質の向上を図る構えだ。

グラスヒュッテ製を名乗るためには63%以上がこの地域内で製造されなければならない取り決めがあるが、同メゾンの内製率は約95％。文字盤も例外ではない。文字盤製造は原型となるブランクの製造に始まり、フライスやドリル加工、サンレイやサンドブラスト仕上げ、レーザー加工、インデックスの加工、スプレーガンによるラッカー塗装、電気分解でめっき加工を施すガルバニック処理、パッドを用いた転写印刷などなど、複雑な工程を経て完成に至る。同メゾンの場合、標準的な文字盤でも約75工程。最先端技術も導入しつつ、多くの工程が熟練技術者の手作業で行われる。効率よりも品質を重視するスタンスが、文字盤製造にも反映されている。

GLASHÜTTE ORIGINAL（グラスヒュッテ・オリジナル）
シックスティーズ・クロノグラフ

エンボス×グラデの妙
1960年代のスタイルを踏襲した、レトロモダンなクロノグラフの2023年期間限定カラーバージョン。繊細なエンボス加工が施されたストーングレーのグラデーション文字盤が目を引く。自動巻き。径42mm。SSケース。シンセティックストラップ。135万3000円。

GLASHÜTTE ORIGINAL（グラスヒュッテ・オリジナル）
パノマティックルナ

高度な文字盤技法をシックに
ガルバニックシルバー文字盤の時分とスモセコのサブダイアルには繊細な同心円状のレコード装飾、その外側はプレーンな質感に。針やインデックスは18KRG製。ガルバニックブルーを背景に月と星が輝くムーンフェイズディスクも優美。自動巻き。径40mm。18KRGケース。アリゲーターストラップ。313万5000円（フォールディングバックル仕様価格）。

問い合わせ：グラスヒュッテ・オリジナル ブティック銀座
グラスヒュッテ・オリジナル公式サイト

《プレス加工》

文字盤製造の最初のステップは、原型となるブランクの製造。これをプレスし、ボンベ状やエンボス仕上げなどの加工が施される。後の工程の際、一定の位置を保つため、２本の足を裏面に取り付けるのも重要。

《ペイント（スーパールミノバ）》

文字盤にペイントを施す際、注射器状のシリンジがしばしば用いられる。塗料をシリンジの先端から射出し、繊細な彩色を施す。スーパールミノバのマーカーなども同様の手法で作業が行われる。

《アプライド インデックス》

立体感があり視認性の高いアプライドインデックスは、別体パーツを作成し、面取り、ポリッシュやサテンなどの仕上げを施して、パーツ裏面の足を文字盤上の穴に慎重に差し込み、固定して完成に至る。

《ガルバニック仕上げ》

金属の溶解液に文字盤を浸し、電気分解によって文字盤表面に金属皮膜を形成する技法。耐久性、耐食性を向上させ、美しいカラーを実現することもできる。

《タンポプリント》

インデックスやロゴを刻んだ金属プレートにインクを塗布し、シリコン製パッドで吸い取り文字盤上に転写する技術。立体感を出すため、数回繰り返される。

《サンレイ仕上げ》

真鍮製ブラシを外周部に取り付けた回転する円盤に、文字盤をモーター上で回転させながら押し当て、放射状の光を放つよう表面を仕上げる。セットアップや操作は手作業。力加減や加工時間など、経験値が重要だ。

《サイズチェック》

ブランク製造後、プレス加工後、穴あけ加工後に加工精度の検査を実施。プリント加工の前後に目視検査、さらに最終検品まで６回に及ぶ入念なチェック体制が構築されている。

[時計Begin 2025 AUTUMNの記事を再構成]

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