2025.12.05

AMT、ケニッシetc.時計のムーブメント製造は新たな時代へ

【学ぶぞ、本格時計】パーツで分けて、すべてを理解しよう!

なんとなくは分かっているけど、人には説明できない……。そんな時計の専門用語を一度しっかりマスターすれば、本格時計の真の価値が見えてくるはずだ!

サプライヤー

[ムーブメント編]
スイス時計界を裏から支える影の実力者【サプライヤー】

開発力と技術力に秀でた専門メーカーが群雄割拠

スイス時計産業は黎明期に、分業性を採ることで発展を遂げた。ムーブメントも専門の工房にパーツ製造を委ね、それをブランドが組み立てて完成品としてきた。このシステムを、エタブリサージュと呼ぶ。その伝統は今も受け継がれ、いくつものムーブメント会社がスイスの時計界を支えている。

世界最大のムーブメント会社ETAに代わり、2000年代前半から汎用ムーブメントの主要な供給元となったのがセリタだ。同社はETAの3針自動巻きとクロノグラフのジェネリックムーブメントを製造してきた。さらに2018年には、ブランド個々の要望に応えたオリジナルキャリバーを開発製造するAMTを設立。タグ・ホイヤーを筆頭に複数のブランドが採用を決めたことで、注目を集めている。

2016年にチューダーのムーブメント部門として創業したケニッシは、他社にもキャリバーを供給してきた。高精度かつ頑強、さらにブランドが望むブリッジやローターの形状、仕上げに柔軟に対応できるのが同社の強みだ。

アジェノーは、レトログラードや永久カレンダー、クロノグラフといった複雑機構を多くのブランドに提供してきた実績を持つ。他にも高級機と複雑機構に特化したムーブメント会社としては、デュボア・デプラ、ラ・ジュー・ペレ、ヴォーシェ・マニュファクチュール・フルリエ、オーデマ ピゲ ル・ロックル、ル・セルクル・デ・オルロジェ、タイムレス、クロノード、コンセプトなどが知られ、まさに群雄割拠。各社、独創的な技術力を競い合う。

《AMT(エー・エム・ティー)》

ラ・ショー・ド・フォンを拠点とし、既存キャリバーのカスタムメイドと要望に合わせたオーダーメイドに対応。これまで3針自動巻き以外に、フライバッククロノグラフのビスポークにも応えている。

TAG HEUER(タグ・ホイヤー)
タグ・ホイヤー カレラ デイデイト

タグ・ホイヤー カレラ デイデイト

華やかなRG使い
RG製とした針や植字インデックス、デイデイト窓が、ブラックダイアルに華やかに映える。カザピ氏が切望した約80時間パワーリザーブが備わり、100m防水とも相まって日常使いしやすい。自動巻き。径41mm。SSケース&ブレスレット。63万8000円。

タグ・ホイヤー カレラ デイデイト

キャリバーTH31-02
頑強なリバーサーを採用した両方向巻き上げの自動巻きは、メゾンのムーブメント・ディレクターであるキャロル・フォレスティエ・カザピ氏が、すべての仕様を指示し生まれた。ゆえに“自社製ムーブメント”と謳う。

問い合わせ:LVMH ウォッチ・ジュエリー ジャパン タグ・ホイヤー
タグ・ホイヤー公式サイト

《KENISSI(ケニッシ)》

チューダーが2015年に自社キャリバーを開発したことを機に、その製造開発部門として2016年に創設。他社には、まずブライトリングに提供され、2018年にシャネルが資本参加したことで翌年「J12」に採用された。

ケニッシ

ケニッシ

高性能な自動巻きムーブメントをカスタマイズ
サイズの違いで3つのキャリバーファミリーを有し、カスタマイズに応えている。パワーリザーブ計が用意され、クロノメーター取得にも対応。テンプはフリースプラングでチューダーに搭載されるムーブメントのみシリコン製ひげゼンマイを採用。

《AGENHOR(アジェノー)》

1996年に時計師ジャン・マルク・ヴィダレッシュ氏によって設立。伝統的機構のみならず、独創的メカニズムの数々を実現してきた。2003年、H.モーザーを擁するメルブ リュクス グループ傘下に。

アジェノー

アジェノー

新機構を発明し、パーツ製造の根幹も革新
創業者は、2007年にジュネーブ時計グランプリ(GPHG)で最優秀時計師賞を受賞した真の実力者。LIGAプロセスを用いた歯先に弾性を持つ歯車も、彼の発明である。下はエルメスのために開発したゴング式アラーム機構で、ベースムーブメントはヴォーシェ社製だった。

[時計Begin 2025 AUTUMNの記事を再構成]

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