日付を戻せる!? “パーペ顔”してないパーペチュアルカレンダー

【学ぶぞ、本格時計】パーツで分けて、すべてを理解しよう！

なんとなくは分かっているけど、人には説明できない……。そんな時計の専門用語を一度しっかりマスターすれば、本格時計の真の価値が見えてくるはずだ！

［ムーブメント編］
使いやすさを追求した万能カレンダー 【パーペチュアルカレンダー】その②

カムに備わる溝の深さで月の大小をプログラム

今ある多くの永久カレンダーは、月の大小をディスクに切った溝の深さと溝間のピッチで記録した、4年で1周する48ヶ月カムを日送りレバーと連動するレバーツメが読み取る設計になっている。月末にレバーツメが48ヶ月カムの外周部にあれば、日送りレバーは1日分だけを送り、ツメが溝に落ちた場合はその深さに応じて連動する日送りレバーの移動距離が変わって2～4日分が送られる仕組みだ。

オーデマ ピゲは1978年、他社に先駆けて閏年表示を活用し、平年の月の大小を記録した二層のカム（12ヶ月カム）と閏年の2月29日を表示させるためのマルタ十字型のカム（閏年カム）を組み合わせる構造を発案。永久カレンダー機構のモジュールを劇的に薄型化することに成功した。この12ヶ月カム＋閏年カムという構成は、現在では複数の他社が採用している。

いずれの仕組みでも日付はレバーで送られるため、修正操作は進めることしかできない。レバーは、逆回し動作させられないからだ。天文台三部作で知られるルードヴィッヒ・エリクスン博士は1996年、31歯の日車に月末が30日・28日・29日の各送り車を遊星歯車としてユニット化した永久カレンダーを発案。すべて歯車で構成しているため、戻し修正を可能とした。同様に戻し修正ができる永久カレンダー搭載モデルは、現在でも極めて稀。パネライは、戻せる永久カレンダーを有する稀有なブランドの1つ。GMT機構と組み合わせ、ローカルタイムの調整時に日付も連動させることに成功した。

《キャリバー P.4100》
パネライのパーペは“戻せる”

GMTと永久カレンダーを統合した、極めて稀少なキャリバー。リューズで主時針を1時間刻みで調整して渡航先の現地時間に合わせる際、前後いずれに操作しても日付表示が連動する。この仕組みで日付修正も行う。

PANERAI（パネライ）
ルミノール パーペチュアルカレンダー GMT プラチナテック™

GMTで暦を修正
裏蓋側に背面に月・閏年、西暦表示が備わる。これらと曜日表示は時針を進めたときだけ連動し、午前０時を境にGMT機構で時針を連続して前後させれば修正できるのでコレクターは不要。ブティック限定。自動巻き。径44mm。Ptケース。アリゲーターストラップ。1213万3000円。

問い合わせ：オフィチーネ パネライ
パネライ公式サイト

12ヶ月カムと48ヶ月カム

伝統的な48ヶ月カムは、日送りレバーを起点にできるので修正がリューズ式にしやすい。12ヶ月カム＋閏年カムは生産性に優れ、量産化に向き、また薄型化しやすい。

【48ヶ月カム】

4時位置の歯車の下にあるのが48ヶ月カム。それとレバーでつながる3時位置の歯車が日送り車で、これとは別にIWCのモジュールには全体を取り囲むデイトリングが備わり、それをリューズで送ると全暦が一斉送りされる。

IWC（アイ・ダブリュー・シー）
ビッグ・パイロット・ウォッチ・パーペチュアル・カレンダー

見やすい大型パーペ
大口径ダイアルはインダイアルも大きくなり、視認性を高める。12時位置に南北両半球のムーンフェイズを装備。3時位置のパワーリザーブ計は7日間をカウントダウン。自動巻き。径46.2mm。SSケース。カーフストラップ。516万4500円。

問い合わせ：IWCシャフハウゼン
IWC公式サイト

【12ヶ月カム】

3時位置にあるのが、12ヶ月カム。1時位置には上下の歯車に挟まれた閏年カムが見えている。その突起部が12時位置のレバーを押し、中央近くにある日送りレバーの動きを制御することで、閏年の2月29日を表示させる。

FREDERIQUE CONSTANT（フレデリック・コンスタント）
クラシック パーペチュアルカレンダー マニュファクチュール

手が届くパーペ
2016年に実現した自社製永久カレンダーが、72時間駆動へと進化。モジュール設計も改められ、より信頼性を高めている。サーモンピンクのダイアルが、スタイリッシュ。自動巻き。径40mm。SSケース。アリゲーターストラップ。176万円。

問い合わせ：フレデリック・コンスタント相談室
フレデリック・コンスタント公式サイト

[時計Begin 2025 AUTUMNの記事を再構成]

※表示価格は税込み