2025.12.10

昔のGMTはGMT針が、今のGMTは主時針が動くのが主流!?

【学ぶぞ、本格時計】パーツで分けて、すべてを理解しよう!

なんとなくは分かっているけど、人には説明できない……。そんな時計の専門用語を一度しっかりマスターすれば、本格時計の真の価値が見えてくるはずだ!

[ムーブメント編]
ロンジンが切り開いた“第2時間表”
「旅時計」のマスト機能といえばこれ! 【GMT Greenwich Mean Timeグリニッジ標準時】

第2の時針が同軸に備わり1時間毎の時差に対応

現在、さまざまな手段で複数の異なるタイムゾーンの時刻を示すモデルが存在している。これらを、マルチタイムゾーン機構と総称する。その中でもっとも広く普及しているのが、時針に加え、24時間表示の副時針が備わるGMT(機構)である。下で詳しく述べるが、GMTとは世界標準時との意。

ロンジンは1925年、2本の時針が備わり、任意の異なる2つのタイムゾーンの時刻が示せる初の腕時計「Zulu Time」を発表。今に続くGMT機構の道を開いた。このモデル名は、GMTと同義語の航空用語。しかし一般的にあまり馴染みがないため、機構名として定着しなかった。

その後もロンジンは、コクピットクロックと腕時計の両方で、マルチタイムゾーン機構を開発してきた。これに続いたのが、ロレックスだ。1955年に24時間周期の副時針と24時間目盛りを刻んだ回転ベゼルが備わり、ベゼルを時差分だけ回して異なるタイムゾーンの時刻を知るモデルを発表。GMTの名を冠したことで、同機構の名称として広く使われるようになった。

GMT機構はかつて、24時間針がリューズで単独調整できる設計が大半だった。しかし2010年代半ば以降、主時針を前後に1時間刻みで操作できるローカルジャンピングアワー機構を利用したGMTが一般的になっている。この仕組みは、今いる場所の時間が常にメイン表示になり、ホームタイムがサブ表示となるため、“トゥルー(真の)GMT”と呼ばれる。

センターGMT表示の仕組み

センターGMT表示の仕組みカットアウトして内部を見せている銀色の歯車は上が24時車、下が時針車。2つは通常、一緒に動いているが、リューズ操作で時差調整する際には、下側の時差修正車のバネの力で連結が外され、時車だけを単独で動かせるようになる。

そもそもGMTって何?

世界各地の時間の基準となる起点

世界各地の時間の基準となる起点

GMTとはGreenwich Mean Timeの頭文字をとった略称で、本来は1884年10月1日にワシントンで開催された国際子午線会議で決議された、各タイムゾーンの起点となる本初子午線が通るグリニッジ天文台における時刻=グリニッジ標準時を意味する。これを起点に、世界は24のタイムゾーンに分けられた。

現在、各国の標準時は国際原子時に基づいた協定世界時が基準になっているが、その起点がグリニッジ時間なのは変わっていない。また一部のブランドでは、GMT機構を協定世界時の略称UTCの名に置き換えている。下はグリニッジ天文台で1833年から今も稼働している時刻球。午後12:55に球が上がり、13:00に落下してその音で時を知らせる。

世界各地の時間の基準となる起点

LONGINES(ロンジン)
ロンジン スピリット ZULU TIME 1925

ロンジン ロンジン スピリット ZULU TIME 1925

グリッジ天文台の地面には、経度0度を示す本初子午線が銅製の帯で示されている。今年、初代「Zulu Time」誕生から100周年を迎えたことを祝して、その銅を多く含む18KRG製キャップで回転ベゼルのインサートを華やがせた。

ロンジン ロンジン スピリット ZULU TIME 1925

100thアニバーサリー
第2時間表示腕時計生誕100周年の記念モデル。主時針側が操作できるトゥルーGMTであり、日付も連動する。ケースは39mmと小ぶりで取り扱いやすく、クロノメーター取得の高精度と約72時間駆動を誇る。自動巻き。径39mm。SSケース。NATOストラップ(SSブレスレットに付属)。64万2400円。

問い合わせ:ロンジン
ロンジン公式サイト

ロンジンの複数タイムゾーン表示時計ヒストリー

【1908】

ターキッシュ・ウォッチ

ターキッシュ・ウォッチ
時分針がそれぞれ2本ずつ備わるマルチタイムゾーン機構の先駆けとなった懐中時計。日没を起点とする「トルコ時間」を西ヨーロッパの時間に変換するために開発された。

【1925】

Zulu Time

Zulu Time
2本の時針が備わり、コブラ型が協定表示時(UTC±0)を、シリンジ(注射器)型がローカルタイムを示す。ダイアル中央近くの12時位置には「Z」を意味する海上旗を描いた。ケースはWG製。

【1930】

ロンジン ウィームス

ロンジン ウィームス
独立して調整が可能な2組の時分針が備わる、アビエーションウォッチ。それぞれの針は組ごとに色分けされ、ダイアルには各組専用のインデックスが2つ備わる。ケース径は47.5mm。

【1931】

ロンジン コクピット クロック

ロンジン コクピット クロック
上と同じく2組の時分針が備わるが、コクピット用として使いやすいよう時針はいずれも24時間周期となっている。ボタンを押すとムーブメントが停止し、無線時刻信号に同期させられる。

【1935】

ロンジン パイロットウォッチ Ref.3775

ロンジン パイロットウォッチ Ref.3775
ダイアル外周に12時間表示のインナーベゼルが備わり、12時位置のリューズで操作し、1つの時針で2つのタイムゾーンが分かる。この回転式インナーベゼルを実用化したのはロンジンが初。

【1937】

ロンジン コクピット クロック

ロンジン コクピット クロック
上のコクピット クロックと同じく2組の時分針が備わるが、このモデルではいずれも12時間表示。さらに回転ベゼルを装備し、風防内の指標が操作できる。直径82.5mmと、大型だった。

 

[時計Begin 2025 AUTUMNの記事を再構成]

※表示価格は税込み