ルイ・ヴィトンのミニッツリピーターで鳴り物時計をお勉強

【学ぶぞ、本格時計】パーツで分けて、すべてを理解しよう！

なんとなくは分かっているけど、人には説明できない……。そんな時計の専門用語を一度しっかりマスターすれば、本格時計の真の価値が見えてくるはずだ！

［ムーブメント編］
“鳴り物”の格を知る3つのキーワード
ルイ・ヴィトンで学ぶ【リピーター】

ゴングを打ち分けて現在時刻を音色で知らせる

ボタンやスライダーを操作すると、鐘を打つ音で現在時刻を知らせる複雑機構をリピーターと呼ぶ。17世紀末に発明されたとされ、まずクロックに搭載され、後に懐中時計にも用いられた。複雑なメカニズムであるにもかかわらず、早くに実現されていたのは、照明がなかった当時、夜間に時間を知る必要性に追われたからだ。懐中時計に搭載された初期には、ケースバックの内側を打ったり、鐘を収納していたが、前者は音が悪く、後者は時計が大きくなってしまう。アブラアン-ルイ・ブレゲは1783年、ゴングをリング状にしてムーブメントの周囲に取り付ける構造を発案し、美しい音色と機構の小型化を実現した。現在のリピーターの大半が、同じ構造を採っている。

ゴングの音色が知らせる時間の最小単位は、主に15分、5分、1分。うち1分単位のミニッツリピーターがもっとも機構的に複雑となる。多くは音程が異なる2本のゴングが備わり、まず低音側で時単位（1～12回）を、次に2本の連続打刻音で15分単位（0～3回）、最後に高音側で分単位（0～14回）を打ち分ける。またより音色が複雑で美しくなる3ゴング式はカリヨン、音楽を奏でる4ゴング式はウエストミンスターの名で呼び分けられている。

ミニッツリピーターを作動させると時・15分・分の各ラックが現在時刻に合わせて移動し、もとの位置に戻る際に移動した分の数だけハンマーを動かし、ゴングを打つ。またハンマーの動きを一定に保つ調速機（ガバナー）が備わり、板バネを接触させて調速する機械式と、遠心力と慣性モーメントを応用した無音の慣性式が主に使われる。

キャリバーLFT AU14.02

今年完成した、7つの動きのオートマタとミニッツリピーターが備わる自社製キャリバー。459個ものパーツから成り、組み立てには220時間を要するという。美しい時打ちの音を邪魔しない無音の慣性ガバナーが、ハンマーの間に備わる。

①《ミニッツ・リピーター》
現在時刻を1分単位で打ち分ける複雑機構。例えばもっとも打刻数が多い11時59分なら、低音側が11回、続いて15分単位の連続音が3回（15×3＝45分）、次に高音が14回鳴り、11時と45＋14で59分であることが分かる。

②《カテドラルゴング》
設置されるムーブメントの外周の1周半以上の長さを持つ長尺ゴングのこと。カセドラルゴングと呼ばれることも。時打ちの音色が大聖堂（cathedral）の鐘の音のようにより深く響き渡ることから、この名が付けられた。

③《ガバナー》
ハンマーの動作速度の調速機。慣性式は2つの細長い錘を板バネでつなげ、回転速度が早くなると広がって慣性モーメントが大きくなり速度を落とし、遅くなると近づき慣性モーメントが小さくなって速度を上げる仕組み。

459個の全パーツに手仕上げが行き渡る

459個の部品を並べると、壮観。取り外されたゴングを見ると1周半分の長さがあると分かる。その並びの一番下にあるのが、15分単位を司るクォーターラック。下側の台に乗る中ほどにある風車状の部品が、ミニッツカム。

リピーターとソヌリって何が違う？

上で詳しく述べたリピーターはボタンやスライダーを操作した時にだけ作動し、現在時刻をゴングの音で知らせてくれる。対してソヌリは、時計が自動で一定周期でゴングを打ち、時の訪れを知らせる機構。毎正時から15分毎に鳴るグランソヌリと、30分周期のプチソヌリがあり、ソヌリ機構が備わる現行モデルのほとんどにグランとプチの両方が備わり、またミニッツリピーターも統合されている。

LOUIS VUITTON（ルイ・ヴィトン）
タンブール タイコ ギャラクティック ジャックマール

彫金と七宝をダイアルに駆使
リピーターを作動させると宇宙飛行士が旗を立てようと宙を舞い、ソーラーパネルや太陽など計7カ所が動き出す。その動作が実にリアル。手巻き。径46.7mm。チタン＋18KWGケース。ラバーストラップ。1億7578万円。

問い合わせ：ルイ・ヴィトン クライアントサービス
ルイ・ヴィトン公式サイト

[時計Begin 2025 AUTUMNの記事を再構成]

※表示価格は税込み