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2026.03.19
モリッツ・グロスマンなら、もし止まっても大丈夫!
メゾン初のパーペチュアルカレンダーは “弱点あるある” を見事に克服
他社を圧倒する手仕上げの美しさで魅了するモリッツ・グロスマンから、待望のパーペチュアルカレンダーが登場。CEOと開発責任者が語る、新たな複雑機構に込めた思いとは?

モリッツ・グロスマンCEOクリスティーネ・フッター氏。1964年生まれ。ミュンヘンで時計製作技術を学び、ヴェンペ、モーリス・ラクロア、A.ランゲ&ゾーネなどを経て、2008年モリッツ・グロスマン/グロスマン・ウーレンを設立。
「私たちは、トゥールビヨンに並ぶ複雑機構のコレクションを拡充したいと、長く願っていました。その1つをついにお披露目できる日が訪れたのです」。満面の笑みでそう語りながら、モリッツ・グロスマンのクリスティーネ・フッターCEOは、トレーに載せられた時計を隠す布をサッと取り去った。現れた新作の素性は、説明されなくとも3つのインダイアルとムーンフェイズから成るダイアル構成から明か。そう、ブランド初のパーペチュアルカレンダーが、誕生したのである。CEOとともに来日した開発責任者のイエルン・ハイゼ氏によれば、「構想から3年半かかって、ようやく完成した」とか。

モリッツ・グロスマン開発責任者イエルン・ハイゼ氏。
懐中時計の時代からある伝統的な複雑機構のパーペチュアルカレンダーは、基本的な仕組みが十分に練られ、確立している。にもかかわらず長い開発期間を要したのは、モリッツ・グロスマン独自のメカニズムとしたからだ。目指したのは、「シンプルかつ便利な操作性でした」(ハイゼ氏)。
パーペチュアルカレンダーのムーンフェイズを含む暦修正は、ケースサイドに埋め込んだ各表示用のコレクターで個別に操作する仕組みが大勢を占めてきた。そこに1985年、リューズで全表示が一斉送りできる機構が登場。多くの他社が、これに追随した。一斉送りは便利だが、誤って送り過ぎた場合、ゼンマイが巻き戻って時計が止まり、進めすぎた暦表示に追い付くまで待つしかない。ストップセコンドを使う手もあるが、ムーブメントへの負荷が大きい。そこでハイゼ氏が選択したのは、一斉送り+個別修正の合わせ技だった。

「パーペチュアルカレンダー」。左右のインダイアルは、3時位置が月+閏年表示、9時位置が曜日+昼夜表示。12時位置に配したムーンフェイズは、極小の銅片が星のように煌めくブルーゴールドストーンにMOP製の月をはめ込み、優れた審美性を創出した。針合わせの際、巻芯の隙間からホコリや湿気が侵入することを防ぐ独自のプッシャー付きグロスマン・ワインダーを装備する。手巻き。径41mm。アリゲーターストラップ。右・左/18KRGケース。各1760万円。中/Ptケース。1980万円。
「我々のパーペチュアルカレンダーには、4つのコレクターが備わっています。うち1つは、一斉送り用。そして残り3つは、月・曜日・ムーンフェイズの個別修正用です。一斉送りによる至便性と、誤操作した際のフォローを両立させたわけです」(ハイゼ氏)。カレンダー修正の際、一斉送りコレクターで誤って進めすぎたら、そのまま送り続けて日付を合わせた後、個別コレクターで月・曜日・ムーンフェイズを合わせれば、すぐに調整が終わる。これは便利でユーザーフレンドリーだ。
搭載するCal.101.13はブランドの旗艦ムーブメントCal.100.1とパーペチュアルカレンダー・モジュールとの組み合わせ。日付表示はダイアル外周のデイトインデックスを外側から小さなポインターがその日の数字を囲んで示すモリッツ・グロスマンお馴染みの独自機構となっている。モジュールのパーツ数は、211個。ダイヤルとその下のプレートを取り外すと現れるモジュールには、一般的なパーペチュアルカレンダーでお馴染みの4年分の月の大小を溝の深さの違いでプログラミングした48ヶ月カムが見当たらない。代わりに平年の月の大小をプログラミングした12ヶ月カムを用い、閏年の2月29日は閏年表示と連動するレバーで送る仕組みとした。

ダイアルを取り外した状態(左)と、その下に潜むパーペチュアルカレンダー機構(右)。さらにその下には、4つの修正レバーが備わる。右の写真3時位置付近に重なるのが、12ヶ月カムと閏年表示機構。12ヶ月カムに接するレバーは継ぎ手を持ち、6時位置でスネイルカムと組み合わせた日送り車を送る。さらに9時半位置では上下に分岐した別のレバーを動かし、曜日とムーンフェイズをそれぞれ進める。
「48か月カムは、どうしても各溝間のピッチが短くなり、それをなぞり読み取るレバーが衝撃で外れやすくなりなます。それを避けるため、溝間のピッチが長くできる12か月カムと閏年表示の連携機構としました」(ハイゼ氏)。優れた操作性に加え、頑強であることもモリッツ・グロスマンのパーペチュアルカレンダーはかなえたのである。待望の複雑機構の新作は、3つのバリエーションが同時に用意された。

「RGケースモデルは、シルバーと濃いグレーの2つのワントーンダイアルでクラシカルな雰囲気にしました。そしてPtケース仕様のダイアルは、シルバー×グレーの2トーンとすることでスポーティな印象を併せ持たせました」と説明するフッターCEOの表情は、いずれの出来栄えにも満足げの様子だ。

香箱に施した3重のサンバースト仕上げやハンドエングレービングを施したテンプ受け、ゴールドシャトンなど、グラスヒュッテの伝統を継承したムーブメントの美しさは、見応え十分。細部にまで手仕上げが行き渡っている。
「2026年は、時計師モリッツ・グロスマンがグラスヒュッテに工房を構えてから200周年に当たります。アニバーサリーモデルなど新コレクションを発表する予定です」(フッターCEO)。初のパーペチュアルカレンダーに続いてモリッツ・グロスマンは今年、新たな扉を再び開く。
問い合わせ/モリッツ・グロスマン公式サイト
文・取材/髙木教雄
写真/角田 進