2023.04.25

ウォッチズ&ワンダーズの主役たち W&W2023 速報 Part8 チューダー/ユリス・ナルダン/ヴァシュロン・コンスタンタン/ゼニス

W&W2023 速報 Part8

チューダー/ユリス・ナルダン/ヴァシュロン・コンスタンタン/ゼニス

3月27日からスイスのジュネーブで開催された「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ」。3回目となる今年は、48のブランドが参加した。新作の詳しい情報は、2023年6月8日発売の『時計BeginVol.110』でも紹介する予定だが、ここでは華やかな時計展示会の主役となった、人気ブランドの注目モデルだけを厳選。全8回にわたり、約50本を紹介する。

チューダーの新作

伝説のダイバーズが37㎜ケースで登場

チューダー初のダイバーズウォッチとして、1954年に誕生したRef.7922。そのイメージを彷彿させる新作が、ブラックベイから登場した。「ブラックベイ 54」のケースサイズは37㎜。ブラックベイの本格ダイバーズウォッチの中では、最小径となる。これでブラックベイラインのケース展開は、「41㎜」「39㎜」「37㎜」の3サイズに。初代モデルに近いバランスの最新作は、3サイズのうち最後に登場した「本命」の感がある。コンパクトになっても、これまでとスペックは変わらず、200mの防水機能と、約70時間のパワーリザーブを誇るCOSC公認のキャリバーMT5400を搭載。ブレスレット仕様においては、3サイズの中で、唯一アンダー50万円を達成している。

「ブラックベイ 54」。自動巻き。径37㎜。SSケース&ブレスレット。49万600円。

2021年、それまでオメガしか取得してこなかったMETAS(スイス連邦計量・認定局)によるマスタークロノメーター認定を、チューダーのブラックベイが取得したことは、業界に衝撃を与えた。METAS第一号のブラックベイは、オールブラックのブラックセラミックケースモデルだったが、今回新たに、SSケースのバーガンディベゼルがその仲間に加わった。バーガンディといえば、2012年のオリジナルのブラックベイが採用していた由緒あるカラー。その伝統色に、METAS公認のムーブメントを搭載したことは、今後のMETAS拡大にも「本気」であると言えるだろう。

「ブラックベイ」。自動巻き。径41㎜。SSケース&3列リンクブレスレット。55万8800円。

お問い合わせ:日本ロレックス / チューダー 公式サイト

 

ユリス・ナルダンの新作

まだまだ進化を止めないフリーク

文字盤がなく、針がなく、リューズがない。2001年に天才ルードヴィヒ・エクスリン博士によって発明されえた「フリーク」は、この3つの「ない」で定義される唯一無二の腕時計だ。ムーブメント自体が分針の役割を果たし、60分で1回転。時間の調整はベゼルで行うという画期的な時計は、シリコンパーツを業界で初めて採用した「早すぎる」時計でもあった。その最新作が「フリークONE」。特大シリコン製オシレーターとひげゼンマイ、合成ダイヤモンドとシリコンのプラズマ加工(=ダイヤモンシル)を施した脱進機、時刻を調整するスポーティな回転ベゼル。歴代フリークの集大成ともいえる内容で、よりモダンでエッジの効いた最新フリークが完成した。

「フリーク ONE」。自動巻き。径44㎜。ブラックDLCチタンケース。5Nローズゴールドベゼル。ラバーストラップ。926万2000円。

ユリス・ナルダンの探究心の象徴「X」。そのシンボルを、極限まで贅肉を削ぎ落としたスケルトンムーブメントとダイヤルで大胆に表現したダイバーズウォッチに、オールホワイト仕様が加わった。チタンケースの回転ベゼルのトップには、窪みのあるホワイトラバー。白いラバーストラップと相まって、非常に清涼感のあるモダンなダイバーズウォッチに仕上がっている。シリコン製のガンギ車、アンクル、ひげゼンマイを搭載する自社製キャリバーUN-372は、回転ローターの形状も「X」型で徹底。直線的なライン取りと、回転するパーツのコントラストで、見るものに刺激を与える。

「ダイバー X スケルトン ホワイト」。自動巻き。径44㎜。200m防水。チタンケース。ラバーストラップ。356万4000円。

お問い合わせ:ソーウインド ジャパン

 

ヴァシュロン・コンスタンタンの新作

人気コレクションからレトログラード

今年のヴァシュロン・コンスタンタンは、レトログラード機構に注力している。1994年の「メルカトル」や、1997年の「サルタレーロ」など、昔からレトログラードの名手ではあったが、意外にも「オーヴァーシーズ」では、その搭載機は、まだなかった。「オーヴァーシーズ・ムーンフェイズ・レトログラード・デイト」は、同コレクション初のレトログラード搭載機。ダイヤルの上半分を大胆に使って、レエトログラードで日付表示を行う。またその半円とバランスを合わせるように、ダイヤルの6時位置には、ムーンフェイズ表示をレイアウト。135歯の歯車で、122年に1日しかズレが生じない高精度な月齢表示を行う。

「オーヴァーシーズ・ムーンフェイズ・レトログラード・デイト」。自動巻き。径41㎜。SSケース。カーフスキンレザーストラップ(ラバーストラップ付属)。ブティック限定モデル。予価711万4800円。夏以降発売予定。

レトログラードを搭載した、もう一つの新作がこちら。「パトリモニー・レトログラード・デイ/デイト」は、ダイヤル上部に日付、ダイヤル下部に曜日というWレトログラードが特徴だ。18金ホワイトゴールド製の時分針に対し、レトログラードの針は、伝統的なブルースティール針を採用。各表示も同色のブルーで統一し、視認性も非常に高い。ダイヤル色は、メゾンが1940年代から採用してきたサーモンピンク。近年では「プラチナケース」の目印として組み合わされることが多い特別なカラーは、サンバースト仕上げによって、美しさがより際立っている。

「パトリモニー・レトログラード・デイ/デイト」。自動巻き。径42.5㎜。プラチナ950ケース。アリゲーターストラップ。ブティック限定モデル。予価997万400円。夏以降発売予定。

お問い合わせ:ヴァシュロン・コンスタンタン公式サイト

 

ゼニスの新作

パイロット・コレクション久々の新世代モデル

ゼニスというと、エル・プリメロの不動の存在感からクロノグラフの名手というイメージが強いが、パイロットウォッチとしての歴史も非常に長い。空と人類の密接な時代の到来を予見したゼニス創業者ジョルジュ・ファーブル=ジャコは、1888年に仏語の「PILOTE」、1904年に英語の「PILOT」を商標登録。すなわち、数ある時計ブランドの中で、ダイヤルに「パイロッット」の文字を入れることが許されるブランドは、ゼニスだけなのである。新作「パイロット オートマティック」のダイヤルにも「PILOT」の文字が誇らしげに入るが、ユニークなのは、そのダイヤルの模様。ボーダーの大振りな溝が刻まれているが、これはクラシックな航空機のメタルシートのボディからインスパイアされたもの。太いアラビア数字のインデックス、滑り止めのついた大型リューズと共に、パイロットウォッチとしての力強さが全面に感じられる時計に仕上がっている。フラットベゼルが印象的なブラックセラミックの他に、スティール製のケースも用意されている。

「パイロット オートマティック」。自動巻き。径40㎜。ブラックセラミックケース。コーデュラ・エフェクト ラバーストラップ(ブラックとカーキの2色付属)。121万円。

古くからのゼニスのファンなら、こちらの最新作「パイロット ビッグデイト フライバック」の顔つきに、思い当たるクロノグラフがあるはずだ。1997年に発表され、エル・プリメロの普及に大きく貢献したクロノグラフ「レインボー フライバック」だ。5分間隔で色を変えるレインボーの積算計で、その伝説のモデルをオマージュする。オレンジ色の鮮やかなクロノグラフ秒針とクロノグラフ分針もオリジナルからの継承。色彩で計測時間を判別できる視認性の高さも、初代譲りだ。加えてこのモデルは、6時位置にビッグデイトが備わる新型のキャリバー「エル・プリメロ3652」を搭載する。日付の一の桁と十の桁を示す2枚のディスクが、どちらも0.007秒で瞬間ジャンプするメカニズムは、特許取得のスグレモノ。レインボーの名機が、さらにパワーアップして蘇った。

「パイロット ビッグデイト フライバック」。自動巻き。径42.5㎜。SSケース。ブラックのコーデュラ・エフェクト ラバーストラップ(ブラウンのカーフレザーストラップも付属)。146万3000円。

お問い合わせ:ゼニス公式サイト

 

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(文・構成/市塚忠義)