2023.06.06

着けて納得インプレッション! 今年もっとも「アガッた」カルティエの「タンク」と「サントス」

時計の存在感は、大きさとは関係ないことを痛感

2023年3月にジュネーブで開催した高級時計見本市、W&W 2023 GENEVA。今年はその世界最大のイベントを「お留守番」した筆者にとって、各社の新作情報はいつもにも増して気になるものばかりだった。初日からオンラインで新作をチェックしまくったわけだが、写真で見て、一番実物を見てみたかったのが、カルティエの「タンク ノルマル」、そして「サントス デュモン」のスケルトンウォッチである。

今年1月に「タンク フランセーズ」のリニューアルがあり、「タンク」の魅力を再認識したばかりだった。直線的なケースデザインの「タンク」は、ブレスレットも似合う数少ない角型ウォッチ。7種類リリースされたカルティエ プリヴェの「タンク ノルマル」のうち、私が一番心を奪われたのはプラチナケース&ブレスレットのモデルだ。カルティエ プリヴェとは、メゾンの伝説的なモデルをルーツにもつ、愛好家向けのコレクション。ちなみにカルティエはプラチナを腕時計ケースに最初に用いたメゾンであり、初代「タンク」もまたプラチナ製だった。日本で行われた展示会で、この希少なプラチナモデルを早速に装着させてもらった。

「重っ……」。プラチナとは分かっていたがこの時計、想像以上にズシリと来る。重さの大半は、ケースよりむしろブレスレットだ。7連タイプのブレスレットは、横から見るとケース厚と変わらないぐらいの「厚み」がある。繊細でミニマルなフェイスに、存在感たっぷりのブレスレット。このバランス感覚は、カルティエならではであろう。ケースとブレスレットの全面をサテン仕上げとし、オリジナル当時の雰囲気も見事に再現して見せた。世界限定数は100本。日本で手に入れられるのは数人だけというコレクターズウォッチだ。

2本目に紹介するのは、スケルトンの「サントス デュモン」。同じく展示会会場で見た、もう1つの角型の名作は、思った以上に「小さい」。カルティエが2年をかけたという完全新設計のムーブメントは、奥行き感が半端ではない。その存在感から、もっと大きい時計だと思っていたが、このコンパクトさが堪らなくいい。

会場に来ていた、カルティエ本社の時計デザイナーに「もっと大きく、分かりやすいメンズサイズにする考えはなかったのか?」と尋ねたところ、「ムーブメントで“魅せる”現代の時計でありながらも、1904年オリジナルの美しさとサイズ感に、こだわりたかった」との回答が。歴代モデルにキチンと敬意を払うのが、カルティエの流儀なのだ。

そのオリジナルの生みの親、飛行家アルベルト・サントス=デュモンの愛機「ラ ドゥモワゼル」が、マイクロローターの上で回転するところが最大の特徴だが、ローターと最も離れた1-2時位置に香箱、そしてシンメトリーな10-11時位置に香箱と同じサイズでテンプをセットしたのも、かなりの高得点。やはりカルティエは、スケルトンウォッチの“見せ場”を心得ている。

「タンク ノルマル」。手巻き。ケース36.2×25.7㎜。Ptケース&ブレスレット。限定100本。778万8000円。

「サントス デュモン」。自動巻き。ケース43.5×31.4㎜。18KYGケース。アリゲーターストラップ。限定150本。予価605万8800円。

「タンク ノルマル」。手巻き。ケース36.2×25.7㎜。Ptケース&ブレスレット。限定100本。778万8000円。
「サントス デュモン」。自動巻き。ケース43.5×31.4㎜。18KYGケース。アリゲーターストラップ。限定150本。予価605万8800円。

 

(文・構成/市塚忠義)

商品の問い合わせ/カルティエ公式サイト