2023.10.23

ジラール・ペルゴの「コンスタント エスケープメント」から 10年分の進化を遂げた新モデルが誕生

新たに13件の特許を追加

2013年、ジラール・ペルゴは、画期的なエスケープメントを搭載した腕時計「コンスタント・エスケープメント L.M.」を発表。同年のジュネーブ時計グランプリで「金の針」賞を獲得し、圧倒的な技術力の高さを証明してみたが、その続編となる新作「ネオ コンスタント エスケープメント」が10年の歳月を経て、ついに発表された。

コンスタントフォースとは、なんなのか。ハイエンドな時計の説明で希に聞くことはあっても、完璧に理解している人は少ないかもしれない。コンスタント(=一定している)フォース(=力)と言葉を分ければ、日常的にも使うことも多く、感覚的に捉えることができるだろう。

機械式時計の動力源は、ゼンマイの解ける力。この時、例外なく問題となるのが「フル」で巻き上がった時のパワーと、解け切る直前のパワーに大きな差が出ること。完全に巻き上がっている時では調速機構(=エスケープメント)に伝わる力が大きくなりすぎてしまい、逆に解ける直前で力が不十分となり精度が低下する。

コンスタントフォースとは、香箱(ゼンマイ)の状態が不安定となる「前・後」であっても、一定した力を調速機構に伝えるための機構である。では、この機構を搭載していない時計は正確ではないのかというと、決してそんなことはない。コンスタントフォースとは「究極の精度」を求めて、トップクラスの時計師だけがチャレンジしている超絶機構なのである。

ここでポイントとなるのが「湾曲した」ブレードの形状である。シリコン素材に関わらず、薄い板状のものをC型曲げると形状が不安定になる。そこに横方向から力を加える(左右から挟み込む)と、折れ曲がったC型形状は、逆方向に一気に跳ね上がって元に戻り、今度は横方向がC型形状となる。コンスタント エスケープメントは、このシリコン製ブレードの「弾性と双安定性」を利用している。

見た目にも鮮やかな紫色のシリコン製ブレードが、テン輪にエネルギーを伝達。その精密な動きは、1振動につき20回も行われるという。コンスタントな力が伝達されることで、テン輪の振幅も一定に。さらにブレードの形状を左右対称にしてテン輪の両サイドにガンギ車を配置したことで、エスケープメントの中心で力が作用するため、スムーズな回転運動を得ることができる。

新作「ネオ コンスタント エスケープメント」のムーブメントのパーツ数は、266個。2013年の前作が280個であるから、パーツ数は少なくなっている。これは最適化を優先した結果ということだが、実際に「脱進機の効率とパワーリザーブの向上」「テン輪の効率と計時性能の向上」など新たに13件の特許が追加されている。

「ネオ コンスタント エスケープメント」。手巻き。径45㎜。チタンケース。ラバーストラップ(ファブリック仕上げ)。公認クロノメーター。パワーリザーブ7日以上。予価1310万1000円。

数十年の開発期間を得て2008年にコンセプトウォッチ、2013年についに市販化モデルを完成させたジラール・ペルゴの「コンスタント エスケープメント」は、進化を続けなから究極の時計メカニズムを目指す。

お問い合わせ:ジラール・ペルゴ公式サイト

文・構成/市塚忠義