2025.06.10

H.モーザー「ストリームライナー」の新たな挑戦

レインボーカラーのグラデーションをジェムセッティング

「ストリームライナー・トゥールビヨン スケルトン レインボー」。リファレンス 6814-1201。自動巻き。径40㎜。SSケース&ブレスレット。12気圧防水。2236万3000円。

クオリティを重視した少量生産にこだわり、1点1点がアートピースのような希少性の高さを持つH.モーザーの腕時計。現在、シンプルな単色のダイアルではなく、ニュアンスのあるグラデーションダイアルに注目するブランドが増えてきているが、それは紛れもなくH.モーザーの影響によるところが大きい。

H.モーザーは、グラデーションダイアルを徹底して美しく見せるため、ダイアルからブランドロゴを外したモデルを製作。こうした大胆な決断によって、時計好きであれば、そのダイアルをみただけでH.モーザーの時計だと認識できるまでになった。

そのH.モーザーで、近年最も手に入りにくい人気モデルとなっているのが「ストリームライナー」である。これまでにない有機的なケースと一体型のブレスレットを備えたスポーツウォッチは、同メゾンの新たな可能性の扉を開いた。

「ストリームライナー・トゥールビヨン スケルトン レインボー」。リファレンス 6814-0401。自動巻き。径40㎜。5Nレッドゴールドケース&ブレスレット。12気圧防水。3130万6000円。

その新作となるのが、ここに紹介する「ストリームライナー・トゥールビヨン スケルトン レインボー」である。ダイアル6時位置でトゥールビヨンが浮かんでいるかのように主張するスケルトン仕様は、ムーブメントをダイアル側から楽しめるのが最大の魅力だ。

しかしダイアルをスケルトンにした場合、H.モーザーの代名詞であるグラデーションは、諦めなければならないのか……。その答えが、まさにこの時計。クッションケースのミドルケース部分にレインボーカラーのグラデーションで、60石のカラーサファイア(2.90カラット)をセッティングしたのだ。

写真を見ればわかると思うが、ストリームライナーは緩い角をもつクッション型のケースを持つため、そのミドルケースのベゼル部分の幅は、均等ではない。そのためセッティングするサファイアは、カラーが異なるだけでなく、その大きさや形も1つとして同じものがない。

H.モーザーがジェムセッティングをしたモデルを製作するのは、極めて稀。レインボーカラーのジェムセッティングにおいて、これだけの完成度を実現できたことは、見事というしかない。かつてない新しい表現力への挑戦だといえよう。

通常、ジェムセッティングをした腕時計は、その宝石が腕時計の“主役”となるパターンがほとんど。しかしこのモデルは、レインボーカラーのサファイアが、ムーブメントやその機構をより美しく見せる“引き立て役”として、ちゃんと機能しているところが素晴らしい。

それゆえ、これだけゴージャスなバゲットカット サファイアを持ちながらも、ストリームライナーのスポーティさは、少しも失われていない。極限まで削ぎ落とした三次元構造のHMC814スケルトンキャリバーの透明感も、透きとおるサファイアの色味と、見事に調和している。見るたびに感性を刺激するこの腕時計は、「もう見飽きた」なんてフレーズとは、無縁の腕時計である。

問い合わせ/H.モーザー公式サイト

エグゼス TEL 03-6274-6120

文・構成/市塚忠義