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2025.07.16
IWCからちょっと特別な限定100本のポルトギーゼ
複雑時計をデイリーユースするという贅沢

「ポルトギーゼ・トゥールビヨン・レトログラード・クロノグラフ」。Ref.IW394009。自動巻き。径43.5㎜。18K Amor Gold®️ケース。サントーニ製アリゲーターストラップ。3気圧防水。世界限定100本。2309万4500円。
かなり個人的な見解ではあるが、腕時計のケースとダイアルカラーで文句なくカッコイイと思うのが、ゴールドケースにブラックダイアルという組み合わせである。素晴らしくゴージャスゆえ「いつでもどこでも」という感じではないが、時計ファンなら1本はコレクションしておきたい憧れの時計だ。
ゴールド&ブラックという点では同じカテゴリーに入るかもしれないが、さらに独自のアプローチを加えた魅力的な新作がIWCからリリースされた。それが写真の「ポルトギーゼ・トゥールビヨン・レトログラード・クロノグラフ」である。
ケースは、従来の18Kゴールドより硬度が高いとされるIWC独自の18K Amor Gold®️。2019年に初めて採用した18Kゴールドの合金は耐摩耗性にも優れており、IWCの新たな“顔”として定着した感がある。
そしてダイアル。こちらの新作のダイアルは、厳密にいうとブラックダイアルではない。見れば一目瞭然。その透き通るような透明感と表情豊かな奥行きを見れば、安易にブラックダイアルと大別することはできない。
IWCは、このダイアルカラーをオブシディアンと命名。オブシディアンとは、溶岩が急激に冷えることで形成される天然ガラス(黒曜石)のこと。この美しいツヤを表現するため、ダイアルには透明ラッカーを15層も塗り重ねているという。
このオブシディアンカラーの他にIWCは、ホライゾンブルー、デューン、シルバームーンといった独自のカラーを、2024年から最新ポルトギーゼ・コレクションのデザインコードとして取り入れている。
ここまで素材と色の話しかしていないが、この新作ポルトギーゼが本領を発揮しているのは、搭載されている複雑機能。ダイアル6時位置のフライング・ミニッツ・トゥールビヨンに加え、9時位置にはレトログラードによる日付表示、12時位置にはフライバック・クロノグラフの積算計が備わる。
フライング・ミニッツ・トゥールビヨンを構成するパーツは56個、総重量は0.675グラム。またアンクルとガンギ車にはシリコンを採用しており、IWC独自のダイヤモンド・シェル(Diamond Shell®)テクノロジーを応用したコーティングを施すことで摩擦が軽減。68時間のパワーリザーブを実現している。
また1分間で1回転するトゥールビヨンは、リューズを引いて完全に機構を停止させることができるので、秒単位で時刻を調整することも可能だ。これらの3つの複雑機能を有する自社製キャリバー89900の姿は、シースルーバックケースから楽しむことができる。
以前、IWCの頭脳と言われるクルト・クラウス氏をインタビューしたとき、IWCでは極端に薄型のムーブメントは作らないという教えを、恩師のアルバート・ペラトンから受け継いだと聞いたことがある。
理由は、耐久性。薄い時計に耐久性がないという意味ではないが、世代を超えて長く時計を使い続けるには、ある程度の厚みがムーブメントには必要だという。IWCは、エレガントなクラシックモデルにしても、タフなスポーツモデルにしても、そして今回の新作のような複雑時計にしても、あくまで「実用」を前提に開発しているのだ。
独自のカラーリングに、3つの複雑機構を搭載したポルトギーゼ。こんなスペシャルな腕時計を「実用」できる人がいるなんて、羨ましい限りだ。時計の価格は2309万4500円、生産数は世界限定100本となっている。
問い合わせ/IWC公式サイト
文・構成/市塚忠義