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2025.09.10
薄型時計の名手ピアジェ、ここに極まる
ムーブメント厚2㎜じゃなくて、ケース厚2㎜!

「アルティプラノ アルティメート コンセプト トゥールビヨン」。G0A50530。手巻き。ケース径41.5㎜。コバルト合金ケース。カーフスキンストラップ。1億1352万円。
実力派の時計メゾンが、その実力を証明するために薄型キャリバーを発表することは、いま始まったことではない。手巻き、そして自動巻きへの過渡期である1950年代は特に盛んで、ピアジェは1957年に厚さ2㎜の手巻きムーブメント「キャリバー9P」を発表して、薄型時計の金字塔を打ち立てた。
ピアジェというメゾンは、ときに誤解されることも多い。ピアジェというと、大胆なハイジュエリーに代表される「宝飾ブランド」というイメージが強いからだ。しかし、その歴史は「時計ブランド」として始まっている。
スイスのジュラ山脈、ラ・コート・オ・フェ(フランス語で「妖精の丘」という意味)にあるピアジェの時計工房は、1874年の創業当時から変わらない場所で、現在も時計作りの重要拠点。複雑時計を手がけることで有名だが、もっとも得意とするのは、エレガントな腕時計には欠かせない超薄型のムーブメントだ。
多くのトップブランドが、このピアジェの薄型キャリバーを採用してきた歴史があり、その完成度の高さに絶大なる信頼を寄せている。一方、ジュエラーとしての実力はジュネーブで開花した。1959年に「サロン ピアジェ」をオープンさせラグジュアリーなジュエリーの数々を展示。金細工とジェムセッティングに特化したアトリエも構え、本格的なクリエイションを自社で行うようになったのだ。
先にも述べたが、時計メゾンが薄型時計を手がけるのは、その技術力の高さをアピールするため。いつしかそれは、数字の競い合いとなり「厚さ●㎜」という言葉が、真っ先に語られるようになった。つまり薄ければ薄いほど、素晴らしい。薄い時計を作ることが最終ゴール。
しかし、ピアジェが薄型時計を作る理由は、他にある。ピアジェが追い求める腕時計は、エレガントで美しい腕時計。エレガントを極めるのに、薄型キャリバーの存在は絶対に欠かせない要素。つまりエレガントな時計を作るために薄型に挑み続けているのがピアジェで、他社とは優先順位が「逆」なのである。
そのエレガントさの「格」が、他と一線と画していることは、ここに紹介する2本の新作アルティプラノを見れば、一目瞭然だろう。
1本目に紹介するのは、「アルティプラノ アルティメート コンセプト トゥールビヨン」。このモデルの経緯を簡単に説明すると、ピアジェは、2018年にケース厚2㎜「アルティプラノ アルティメート コンセプト」を発表。
2020年、その後続モデルでGPHGの最高賞「Aiguille d’Or(金の針賞)」を受賞すると、創業150周年を迎えた2024年には、ケース厚2㎜はキープしながら、そこにトゥールビヨン機構を組み込むという偉業を成し遂げた。写真のモデルは、その新バリエーションである。
10時位置のトゥールビヨン機構の周りにはイエローゴールドのパーツ、時分針のある右側はカーキグリーンのプレートが採用され、ストラップも同色で統一。ゴージャスでありながらも落ち着いた大人の印象に仕上がっている。
2024年の周年モデルでは、コバルト合金のケースにブルーのPVD加工が施されていたが、こちらの本作はPVD加工がされておらず、素材本来の質感を楽しむことができる。ちなみにピアジェがケース厚2㎜の腕時計を実現できたのは、ケースバック自体がムーブメントのメインプレートとして機能するという、他にはない構造を持っているため。その独自構造に最適な素材として選んだのが、耐久性に優れるコバルト合金である。
一見すると、この時計にはリューズが見当たらない。実はリューズもケース内に一体化されたデザインになっており、3時位置をよく見ればスクエア型のパーツが組み込まれているのが、確認できるだろう。
もし、この時計に通常の丸いリューズを取り付けるのであれば、ケース厚に合わせて直径2㎜程度にするはずだが、その極小リューズで時刻調整や巻き上げを行うのは困難。このスクエア型のリューズは、機能的にも優れているのだ(リューズの巻き上げは専用の工具を使う)。

「アルティプラノ アルティメート オートマティック」。G0A50126。自動巻き。ケース径41㎜。18KYGケース。アリゲーターストラップ。585万2000円。
そして2本目の「アルティプラノ アルティメート オートマティック」。こちらの新作は、初のイエローゴールドケースが採用され、やはりカーキグリーンのダイアルが組み合わされている。先に紹介したトゥールビヨンモデルが手巻きムーブメントなのに対し、こちらは自動巻きムーブメント。
それでもケース厚4.3㎜に収めることができたのは、自動巻きローターにペリフェラルローターを採用しているから。そのペリフェラルローター(910Pとロゴの入っているパーツ)はスレートグレーとカーキグリーンに彩られ、ケースとメインプレートのコントラストをさり気なく際立たせている。
アルティプラノの最大の魅力は、通常ならケースの裏側でしか見ることのできないムーブメントの動きを、ダイアル側から楽しめること。ケースとムーブメントの反転構造によって時刻を知ると同時に、ピアジェ独自のメカニズムをいつでも堪能できる。

「アルティプラノ アルティメート オートマティック」を着用した、グローバルアンバサダーのイ・ジュノ。
問い合わせ/ピアジェ公式サイト
文/市塚忠義