2025.09.23

ロジェ・デュブイ「ナイツ オブ ザ ラウンドテーブル」に新たなる伝説

魔術師マーリンと12人の騎士の物語

「エクスカリバー ナイツ オブ ザ ラウンドテーブル 魔術師マーリン」。Ref.DBEX1117。自動巻き。径45㎜。18KPGケース。ホワイトカーフレザーストラップ。限定28本。ジュネーブ・シール認定。5918万。

小さな腕時計に、これだけストーリー性を感じる腕時計が、他にあるだろうか。ロジェ・デュブイの「エクスカリバー ナイツ オブ ザ ラウンドテーブル」のことである。円卓に見立てたダイヤルを、12人の騎士が囲む腕時計といえば思い出す人も多いだろう。

第一作目の発表は、2013年。アーサー王とグィネヴィアの結婚を祝って贈られたとされるテーブルを模したグラン・フー・エネメルのダイヤルを12人の騎士が取り囲む様子は、一度見たら決して忘れることのできないインパクトを残した。

通常、こうした“スペシャル”な腕時計は、一回キリの場合が多い。しかしロジェ・デュブイは、この腕時計をシリーズ化し、以後2年の1本のペース(1年に2本の時もあった)で製作。2022年には、センタートゥールビヨンを組み合わせたモデルにまで進化している。

こうした特別モデルがシリーズ化したのは、シンプルに人気があるから。価格もなかなか“スペシャル”だが、ロジェ・デュブイお約束の「限定28本」は、瞬く間に完売。世界中に多くのファンを持つコレクションへと成長したのだ。

そもそもロジェ・デュブイの多くの時計に命名されている「エクスカリバー」とは、アーサー王伝説に何度も登場する、真の王だけが石から引き抜くことができる伝説の剣「エクスカリバー」のことである。つまり「エクスカリバー ナイツ オブ ザ ラウンドテーブル」は、そのコレクションを最も象徴する腕時計といえよう。

そして、「エクスカリバー ナイツ オブ ザ ラウンドテーブル」シリーズ12作目となる最新作「 魔術師マーリン」が、ついに発表された。これは昨年2024年に発表された前作、「全知全能のマーリン」に続く、第二章となる。

第一章では、マーリンの魔法によって作り上げられたとされる巨人の石道、北アイルランドのジャイアンツ・コーズウェイの神秘的な地形を表現。本物の玄武岩のブロック28個、ソリッドピンクゴールドのブロック9個、ブラックのムラノガラスのブロック10個を、全て手作業で積み上げた。

続くこちらの第二章では、マーリンが思いを寄せた湖の貴婦人を守るために築いたとされる水晶の宮殿をダイヤルで再現。18Kピンクゴールドのベースプレートには、時計職人の手作業によりムラーノ風ガラス9本、ポリッシュ仕上げのホワイトエナメル 19本、マット仕上げのホワイトエナメル10本、18Kピンクゴールド9本、六角形カットダイヤモンドをセットしたピンクゴールド9本を配置。

この56本の柱は、0.2mmから3.7mmという高低差で絶妙のバランスを保ちながらセットされており、それぞれの持つ素材独自の質感とコントラストは、12人の騎士に負けないほどの存在感を放っている。

ロジウムメッキが施された9本のゴールドの柱の上部には、六角形にカットされたダイヤモンドが。ロジェ・ デュブイは今回初めて「インビジブルセッティング」という技法を採用している。ゴールド柱の上部に彫られた溝にダイヤモンドを爪を使わずに固定しているのだ。この高度な技術によりダイヤモンドとゴールドが一体化し、まるでダイヤモンドが宙に浮かんでいるかのような美しいダイヤルを実現している。

そしてこの時計を、さらに幻想的な世界へと導いているのが、ダイヤルに敷き詰められた希少金属のルテニウムクリスタル(結晶化したルテニウム)だ。プラチナ族に属する貴金属ルテニウムの結晶を六角形デザインで敷き詰め、その輝きを高さの違う柱が反射することで、煌めく湖を表現している。ルテニウムクリスタルは美しいだけでなく、酸化や腐食に強いことからも腕時計には適している素材である。

その湖を見守るのが、今にも動き出しそうな12人の騎士。高さ6㎜の実にリアルな英雄たちは、まず3Dスキャンした後、18Kピンクゴールドで型取りと鋳造を行う。さらに手作業によって剣やヘルメット、マントなどの細かいディテールが彫刻されていくわけだが、その作業には3日間を要することもあるという。

ロジェ・デュブイが名門たる理由は、こうした誰も真似できない芸術的なセンスの高さに加え、信頼性の高いムーブメントも自社製造できること。この時計に搭載されるキャリバーRD821は、もちろんジュネーブ・シール認証だ。

またスケルトンのケースバックから覗く360°回転のオシレーションウェイトの全面ローターは、古城のステンドグラスからインスピレーションを得ており、従来のローターより小型で軽量でありながらも高いパフォーマンスを実現。そしてこのコレクションのケースバックには、2013年の初代モデルから、変わらず下記のメッセージが刻まれている。

「Around this table, the bravest knights will gather as equals. They will set forth in search of adventure, righting wrongs, protecting the weak and humbling the proud.(この円卓には、い ずれも勇猛な剣士たちが平等に集うであろう。彼らは真実を求める冒険の旅に向かい、不正を正し、弱きを助け、強きをくじくことになる。)」

問い合わせ/ロジェ・デュブイ公式サイト

文/市塚忠義