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2025.12.29
伝説の音叉(おんさ)時計「アキュトロン」が電撃復活!
キーンという振動音を、新品で買えるという喜び

「チューニングフォーク スペースビュー 314」。26A211。音叉時計。径39㎜。SSケース。カーフストラップ。3気圧防水。99万円。
機械式時計に比べ、圧倒的な精度を叩き出すクオーツ時計の登場によって、時計業界の勢力図は激変した。スイスの高級時計ブランドに代わり、主導権を握ったのは日本。ゼンマイで駆動する機械式時計に対し、電池で駆動するハイテクウォッチが世界を席巻した。
このクオーツ時計が誕生する1969年よりはるか前、「電子制御」という意味では世界に先駆けた時計がある。それが1960年に誕生したブローバの音叉時計「アキュトロン」だ。音叉(おんさ)とは、ピアノやギターといった楽器などを調律するあの音叉である。
音叉がパッと思いつかない人は、「アキュトロン」のロゴを思い出してほしい。先端が二股に分かれた金属で、叩くと「キーン」と音がする道具のことだ。最近では、心身のリラクゼーションや瞑想アイテムとしても人気が高い。

音叉時計とは、機械式時計のテンプが行う役割を、このU字型のパーツが行う時計のこと。もちろん音叉は、手のひらサイズではなく腕時計サイズに縮小したものを採用。そして共通するのは、どちらも「振動」するということ。ただし、その数字(振動数)が音叉時計はケタ違いなのである。
機械式時計ではハイビートムーブメントと言われるものでも、振動数は毎秒10振動。一方、音叉時計の振動数は毎秒360振動。この圧倒的な数字の振動子によって動力を制御するわけだから、その正確さは想像できるだろう。当時の「アキュトロン」は1日約2秒以内、月差にすると1分という高精度を誇っていたのだ。
多くのクオーツ時計の秒針は、1秒ごとにジャンプして動くステップ運針だが、音叉時計の「アキュトロン」は、機械式時計と同じように滑らかに動くスイープ運針が特徴。見た目も中身も画期的な腕時計は、クオーツ時計の登場によって1976年に幕を下ろすが、その後もカリスマ的な人気は継続。状態の良い「アキュトロン」を探すマニアが途絶えることはなかった。

こうした根強い人気の高さに、メーカー側が反応しないわけがない。アキュトロン生誕65周年の今年、ついに伝説の腕時計が再び製造を開始する! それがここに紹介する「チューニングフォーク スペースビュー 314」である。
モデル名の「314」とはかつて発売していた音叉時計が「スペースビュー 214」だったことから、その進化版として314と名付けられた。かつてのアキュトロンから聞こえた360Hzからなる「♯Fのハム音」はもちろん健在。キーンというハム音に、心躍らないファンはいないだろう。
ちなみにこの「アキュトロン」が復刻されたのは、これが初めてではない。アキュトロン生誕60周年となる2010年に復活(復刻版1000本は一瞬で完売)が実現しており、その後2020年に「アキュトロン」は、ブローバから独立した新ブランドとなった。そのため、昔のアキュトロンには「BULOVA」のロゴも入っているが、新生アキュトロンに「BULOVA」の文字はなく、「ACCUTRON」のみが刻まれている。

ただし、2010年の時に復活したモデルに比べると、今回の新作「チューニングフォーク スペースビュー 314」は、初代をより忠実に復刻したモデルになっている。ダイアル側から見える剥き出しになった2つのコイルや電子回路の姿は、初代の姿を色濃く反映している。

初代アキュトロンは、ダイアルがスケルトンであったことから中身の画期的なムーブメントが丸見えとなり話題となったが、実は当初、通常のダイアルがセットされていた。店頭販促用にあえて中身が見えるようにスケルトンにした巨大なディスプレイが大反響を呼び、ダイアルのないアキュトロン スペースビューが誕生したのだ。

最新のアキュトロン「チューニングフォーク スペースビュー 314」では、電子回路で超小型の音叉を振動させ、その先にある爪で歯車を動かして秒針を進める。音叉の振動を動力に置き換えるインデックス車はLIGA工法(微細構造物形成技術)を取り入れ、わずか3.6㎜ の部品に400歯という精密さを実現。スイープ運針する秒針は、その証である。

チタンケース仕様の26A213は、102万3000円。
オリジナルモデルは通常のケースバックだったが、この復刻版ではシースルーバックを採用することで、表からも裏からもこの革新的ムーブメントの姿を楽しむことができる。また時計のケースには、904Lのステンテススティールケースに加え、グレード5のチタンケースのモデルもラインナップ。
発売は2026年1月下旬の入荷次第順次。今回、限定モデルという扱いではないが、ムーブメントの複雑さから全てのムーブメントが1つ1つ丁寧な手組みとなることから、製造される本数は少なく、希少性の高いモデルになることが予測される。
問い合わせ/ブローバ公式サイト
文/市塚忠義