2026.03.12

IWCシャフハウゼン「ポルトギーゼ・クロノグラフ」に初のセラタニウム®️採用モデル!

クロノグラフの永世定番にカッコ良すぎる「真っ黒」バージョン

「ポルトギーゼ・クロノグラフ・セラタニウム®️」。自動巻き。ケース径41㎜。ケース厚13.1㎜。セラタニウム®️ケース。ラバーストラップ。3気圧防水。世界限定1500本。220万3300円。

現代の腕時計において「傑作クロノグラフ」を問われたら真っ先に名前があがる筆頭、それがIWCシャフハウゼンの「ポルトギーゼ・クロノグラフ」だ。無駄を削ぎ落としたシンプルな縦2つ目クロノグラフのカッコ良さに、異論を唱える時計ファンはいないだろう。

今更ではあるが、この時計について簡単におさらいすると、ポルトギーゼの由来は2人のポルトガル商人がマリンクロノメーター級の精度を持つ腕時計をIWCに注文し、1939年に誕生した腕時計が原点となっている。なおポルトギーゼは、IWCシャフハウゼンの中で最も歴史の長いコレクションである。

ポルトギーゼ誕生時に使われたムーブメントは、ポケットウォッチ用の大きな高精度ムーブメント。よって腕時計のポルトギーゼは、その大きなケースが特徴となった。ケースの直径は42㎜。当時の腕時計としては、極めて大型の腕時計であった。

この時に誕生したポルトギーゼは、マリンクロノメーターを思わせる6時位置スモールセコンドのシンプルな3針スタイル。まだクロノグラフではない。現行の「ポルトギーゼ・クロノグラフ」の直接的なルーツになっているのは、1998年に誕生したモデル。初代ポルトギーゼの上品でエレガントなスタイルを受け継ぎ、傑作クロノグラフが完成したのだ。

30年近くロングセラーを続ける「ポルトギーゼ・クロノグラフ」。驚くべきは、その姿がほとんど変わっていないことだ。IWCシャフハウゼンのクリエイティブ・ディレクターであるクリスチャン・クヌープ氏は、かつてのインタビューの中で「ポルトギーゼ・クロノグラフほど、モデルチェンジが難しい時計はない」と語っている。

誕生と同時に完璧なバランスが備わっていった「ポルトギーゼ・クロノグラフ」は、もはや手を加える余地がないのだ。素性を無視して大きく改良すればファンの怒りを買い、かといって何も変えなければセールスを伸ばすことはできない。傑作品ならではのジレンマと「ポルトギーゼ・クロノグラフ」は戦ってきた。

そんな「ポルトギーゼ・クロノグラフ」に、待望の最新作が登場した。それが写真の「ポルトギーゼ・クロノグラフ・セラタニウム®️」である。クラシックなクロノグラフに、オールブラックという意外性。この時計のクールさを、素通りできる時計ファンは、いるのだろうか。

ケースのシェイプやダイアルのデザインを変えるのではなく、素材とカラーで強烈なインパクトを与える。ケース素材は、IWC独自の「セラタニウム®️」だ。この素材は、チタニウムの持つ軽さと堅牢さに加え、セラミックに匹敵する硬さと耐傷性を兼ね備えている。

ベースはチタン合金としながらも、高温の釜で焼成するのはセラミックと同じ。IWCが特許を取得する「セラタニウム®️」は、2017年にアクアタイマーの50周年記念モデルで初めて採用され、その後は「トップガン」をはじめとしたパイロット・ウォッチでも使われてきたが、このクールなマットブラックの質感が、「ポルトギーゼ・クロノグラフ」にこれほどマッチするとは、全く予想できなかった。

「セラタニウム®️」を採用しているのは、ケースだけではない。特徴的な大型のリューズとキノコ型のプッシュボタンもセラタニウム®️製である。この外装に合わせ、ダイアルを構成するパーツも、全てブラックで統一。そのオールブラックのダイアルだが、しばしば問題となるのは、その視認性である。

ダイアルに加えて、針やインデックスまで黒いオールブラックのダイアルは、視認性を確保するのが難しい。オールブラックを求めるユーザーは、そもそも視認性の高さなど気にしないと割り切って、時間の読みやすさは二の次という時計ブランドも少なくない。

しかし、IWCシャフハウゼンのオールブラック「ポルトギーゼ・クロノグラフ・セラタニウム®️」は、どの角度からみても、時間をはっきりと読み取ることができる。これはマットなブラックダイアルにブラックミラー仕上げの針やインデックスを組み合わせているため。

さらに針やインデックスはシャープな面で構成するのではなく、わずかにカーブする曲面を持たせることによって、どの角度から見てもベースダイアルの「黒」と見分けることができるようになっている。IWCシャフハウゼンという堅実ブランドが、視認性をおざなりにすることはない。

搭載するムーブメントは、レギュラーモデルと同じ自社製のクロノグラフ・ムーブメント、キャリバー69355。このムーブメントは2019年のIWC設立150周年の時に誕生し、限定モデルに搭載。翌年2020年には「ポルトギーゼ・クロノグラフ」がそれまでのETA7750からこの自社製キャリバー69355に置き換わった。

その時、熱心なポルトギーゼ愛好家が心配したのがは「あのポルトギーゼ・クロノグラフの完璧なダイアルバランスが、新ムーブメントによって変わってしまうのではないか」ということ。しかしこうしたファンの思いも熟知しているIWCシャフハウゼンは、ゼロから新しいムーブメントを設計し、これまでのダイアルレイアウトをほぼ変えることなく新しい「ポルトギーゼ・クロノグラフ」を作り上げたのだ。

IWCシャフハウゼンの「ポルトギーゼ・クロノグラフ」がロングセラーを続けているのは、ファンの期待を裏切ることなく、その姿を進化させているから。この誠実な努力の積み重ねが、歴史を築いていくのであろう。

問い合わせ/IWC公式サイト

文/市塚忠義