2018.04.04

おたくの細道 銀座・有楽町の街なかで時を刻む大時計「マリオンのからくり時計」


毎度マニアな時計情報をお伝えするこのコーナー。今回は、先日映画館が閉鎖してしまった有楽町マリオンのからくり時計について。実は日本初の大型からくり時計だった!?

人形の演奏が心を和ませるからくり時計ブームの先駆け

去る2月4日、東京・有楽町の映画館「TOHOシネマズ日劇」が、惜しまれつつ歴史の幕を下ろした。この場所は元々、1933年にオープンした「日本劇場(日劇)」という日本初の高級映画館。戦争で辺り一帯が焼け野原になるなか奇跡的に被害を逃れ、占領軍の接収もまぬがれた。そして戦後は、日劇ダンシングチームのレビューや人気歌手のショー、ロカビリーブーム最中の「ウエスタンカーニバル」などで大盛況となり、娯楽の殿堂として名を馳せた。しかし老朽化には勝てず’81年に閉鎖。その後に完成したのが有楽町マリオンで、映画館としては、全7スクリーン、計4500席超の国内最大シネコンへと生まれ変わり、日劇の名も受け継がれた。こうした歴史ある劇場だっただけに、営業最終日は多くのファンが訪れ、別れを惜しんだ。

ところでこの有楽町マリオンの正面に“マリオン・クロック”と呼ばれる大きなからくり時計があるのをご存知だろうか。毎時、ファンファーレとともに時計の後ろから、かわいい人形たちが現れ、金管を叩いて時を告げる。演奏が終わるとこちらにお辞儀をして引っ込んでいく。デートなどの待ち合わせスポットとして有名な場所なので、1度は見たことがある人も多いに違いない。

有楽町マリオン数寄屋橋側入り口壁面のからくり時計、通称マリオン・クロック。1984年に設置され、待ち合わせ場所として多くの人々に利用された。かつて、時計の左側には日劇映画館のポスターが飾られていたが、閉館後の撮影時にはすでに撤去されていた。

実はこの時計、日本初の屋外型大型からくり時計なのだ。正式名称は「セイコー マリオン・クロック」。直径2・6m、人形一体の身長は約50㎝、デザインのモチーフは懐中時計である。単に時刻を告げるだけでなく“道行く人々の足を止めるような動きのある時計にしたい”というコンセプトのもと、システムクロックなどを手掛けるセイコータイムシステムとディスプレイデザイン会社の乃村工藝社が共同製作した。完成したのはマリオンのオープンと同じ1984年で、コンピュータ制御による街頭大型からくり時計の草分け的存在であり、さらには現存する最古のものでもある。

毎正時に時計がせり上がり、奥から金色の人形楽団が登場。オリジナル曲に合わせ、約4分間の演奏を行う。演奏後は人形が奥へと戻っていき、時計が降りて終了となる。

当時は人形のパフォーマンスを見ようと何百人も集まり、銀座や有楽町の人の流れを変えてしまうほど人気者だったマリオン・クロック。当時のままの姿で、最近は老朽化も感じられるが、日劇なきいま、時計だけはあの場所にあり続けてくれることを願う。

人形の姿は季節の特別演出も。11月下旬~クリスマス当日はサンタ姿

開業30周年の2014年には白い衣装の人形が、ユーミンの『ANNIVERSARY』を演奏した。

[時計Begin 2018 SPRINGの記事を再構成]
文/岡崎隆奈