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2018.06.07
編集部員の「欲しい!」時計インプレッション(グランドセイコー SBGJ203)第3回「ファッション性」の巻
リポーター : 『時計Begin』編集長・中里 靖
第3回「ファッション性」の巻
グランドセイコー「SBGJ203」のインプレッション、第3回目。今回は、何気に重要な「ファッション性」について書こうと思います。「地蔵みたいな顔して“ファッション性”だとコラ」という空耳が聞こえてきますが、あまり気にしないで書こうと思います。
個人的には「時計そのものにファッション性は不要」と思っています。いやむしろ「あってくれるな」とさえ思っています。
と言いますのも、有名なブランドや評価の高いブランドというのは普通のアクセサリー以上に記号性が高いと思うんですね。つまり、多くの人が認知しやすい。物理的な大きさもあって対する人の目にも留まりやすいですから、時計そのものにファッション性があると、そればかりが“目立ちすぎちゃう”ような気がするわけです。大切なのは、時計も含めた全身・全体のバランス(だと個人的には思っています)。地蔵みたいな顔でも私はあくまでそれを重視したいので、時計そのものにファッション性は求めず、そのときのコーディネイトにすんなり“溶け込む”ことを最優先にして時計を選びたいのです。
耳栓抜きます。
そして、話はいきなり今年(2018年)のバーゼルワールド時期に遡ります。
セイコーさんからこの「SBGJ203」をお借りしたのは、今年の3月中旬。「これ着けて向こうへ行ってね」という無言のプレッシャーをビンビン感じる、バーゼル出張直前でした。
我々、現地ではほぼほぼ一週間に亘って数十ブランドの取材をするんですが、メディアの人間が特定ブランドの時計をしてそれとは違うブランドの取材に行くと、時折ではありますがそこでも「おいコラ」という空耳が聞こえてきたりします。そりゃそうです。阪神タイガースのキャップを被って東京ドームで読売ジャイアンツの取材をしたら下手すりゃあれですし、SSラツィオのユニホーム着てスタディオ・オリンピコでASローマの取材をしたら、それこそあれでしょう。
ので、メディアの人間である我々は①取材先に合わせた複数ブランドの時計を持参して適宜着替える②どこからもヤキモチを妬かれない唯我独尊な時計一本槍で臨む③時計をしない、といういずれかを選択することが多いわけです。
私の場合、懐都合&面倒臭さで①は却下、不便さから③も却下、結果として毎度②で参戦していまして、ここ数年は誰しもが知るであろう某有名スイスブランドのスポーツウォッチをしていくことがほとんどだったんですが、前出のプレッシャー、のみならず色々シュミレーションしてみた結果、今回のバーゼル出張は「SBGJ203」一本槍で臨むことにしました。
とっ散らかっちゃってホント恐縮ですが、以下少々、思い出話にお付き合いください。
私は大学時代、夜景の美しさで有名な都内某ホテルの最上階にあるラウンジでアルバイトをしていまして、そこでよく個室パーティの担当をしていました。そんなあるとき、超有名なスイスの時計ブランドが本国の要人さん含めてそこでパーティをやってくださいました。当時から時計にはある程度興味があったので「皆さんどんな時計をしているんだろう?」と思い、給仕ついでにガンガン覗き見しまくったら、驚くことにグランドセイコーの時計をしている本国の方々(名札のお名刺から推測)が多かったんです。
で、おそらく私が「えっ!?」という顔をしているのに気付いたのでしょう、その中のお一人が「どした?」と訊いてきまして「いやいや、自社の時計じゃないんすか?」と返したら「だってこの時計、すげーいいのよ。ほら、いいっしょ?」的なことを仰いまして、「外国人、しかも本場のプロから見てもグランドセイコーの時計は“いい”んだ!」と感嘆した憶えがあったんです。
そんな遥か昔の経験から海外におけるグランドセイコー機の評価の高さを知っていた(つもりだった)ので、であれば本格機械式時計のメッカであるスイスに「SBGJ203」一本槍で乗り込んでみるのも一興、という判断をした次第です。
但し、取材時は人前に出るため、ファッション性は疎かにできません。一本槍で臨むのならば、道中のどんなコーディネイトにも合う、つまり“溶け込む”のみならず“着回せる”ことも大前提となります。
今回の出張は、往路→レザーブルゾン&スエット、現地→スーツ(取材・会食時)もしくは全裸(ホテル滞在時)、復路→レザーブルゾン&スエット、という振り幅の広いコーディネイトでしたが、ホテル滞在時以外のどのコーディネイトにも「SBGJ203」はハマってくれました。
まず往路&復路。
上述した私の「某有名スイスブランドのスポーツウォッチ」はダイバーズで、SSケース&ブレスレットに黒文字盤。色味に関しては、この「SBGJ203」とほぼ同様です。なので自分的にはなんら違和感なく、いつもの搭乗コーディネイトに合わせました。 前回 でも軽く触れた通り、グランドセイコーの時計はスーツにこそ似合うと勝手に思っていましたが、このときの黒レザーブルゾン+白Tシャツ+黒スエットパンツ+グレースニーカーというすこぶるカジュアルなコーディネイトにも、少なくともこのモデルはドンズバ溶け込んでくれました。キラッキラ由来のドレスな薫りを漂わせつつ、ソリッドな佇まいでスポーティな薫りも漂わせているからだと思います。
そして現地。
これはもう皆さん想像が容易かと思いますが、何しろ端整なのでスーツにはバッチリ合います。今回の取材時はネイビーとブラウンのスーツに、インナーは白かブルー系のシャツ、もしくはネイビーのタートルネックニットを合わせていたんですが、案の定どのコーディネイトにも溶け込んでくれました。正直、ブラウンのスーツに合うかな?とは思っていましたが、 前回 触れた文字盤の墨黒的色味&サンレイ的加工にある種の和らぎがあるからでしょう、それが温かみのある茶色と相まって、むしろいい感じの上品さを醸し出してくれていたように思います。
ホテル滞在時は全裸だったので外してました。すいません。
以降、帰国してから今日までデニムやらTシャツやらポロシャツやらにも合わせてみましたが、この「SBGJ203」は今のところすべてに溶け込んでくれています。実はしっかりとした個性があるのにパッと見はその個が主張しないので、映画の名脇役よろしく、どんなコーディネイトにも対応できるのでしょう。結果的に、出番も多くなっています。
そんな懐の深~い男になりたいものです。
「欲しい!」時計 : GRAND SEIKO(グランドセイコー)「SBGJ203」
バックナンバー:
>> 第1回「選定理由」の巻はこちら
>> 第2回「見やすさ」の巻はこちら
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