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2018.08.12
【シャネルの工房へ行ってきた #1】セラミックのスペシャリストはムーブメントも超一流だった!
ベールに包まれていた念願の工房へついに初潜入!
シャネルは世界屈指のセラミック加工技術を持つ。さらにムーブメントでも優れた英知を発揮。
その時計製作の現場には、外装でも機械でも最上級の美を目指すシャネルの熱意に満ちていた。
行ってきたのはココ!
完璧な美を追求し生まれた独自のセラミック加工技術
2000年、シャネルはオールセラミックの腕時計「J12」を発表し、時計界に衝撃を与えた。そのケースとブレスレットを製作するのが、メゾンの時計部門の本拠地でもある、ここ「G&F シャトラン」だ。
2003年頃からセラミック製造にとりかかり、その後セラミック専用棟が増築され、完全自社製造が可能になったという。その製作プロセスは、実に手が込んでいた。
主原料は、人造ダイヤモンドと同じ酸化ジルコニウム。これにバインダーと呼ばれる添加物を混ぜペースト状にし、金型に圧入して成型する。その際の圧力は、実に1平方センチあたり40トン! またリューズなど小さなパーツの場合は、圧入ではなくインジェクションで行う。
工房で型から外されたケースの原型を目にした際、違和感を覚えた。何故ならケースバック部分がソリッドな状態だったから。これが、独自のノウハウのひとつ。ケースバック部分を開けた円状に成型すると、高温焼成した際に歪みが生じやすい。美を追求するシャネルは、これを嫌った。
そこでソリッドな状態で焼き上げた後、くり抜くという工程を選んだ。硬質なセラミックをくり抜くため、高圧と超音波によるウォーターカッターを導入。切削後は砥石で磨き上げ、完璧な造形を得ているのだ。1000度以上で焼き上げる前には、型から外した原型の表面を滑らかに仕上げてもいる。さらに水洗いした後、350度で熱して色味に悪影響を与えるバインダーを完璧に除去。形と色とを高温焼成前に整えているのだ。
焼成後には、砥石と専用のポリッシャーやサンドブラスターを使い、入念な仕上げを施している。ポリッシュ仕上げだけでも要する期間は、約2日間。ブレスレットやリューズなども同様の工程を経る。こうして生まれたセラミックの外装は、完璧な美感を末永く留めてくれる。
くり抜かずに焼くシャネル独自の技術
[時計Begin 2018 SUMMERの記事を再構成]
文/髙木教雄 構成/市塚忠義