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2018.07.20
腕時計ロングセラー変遷記 HAMILTON(ハミルトン)【ベンチュラ】
誕生と同時に大ヒットを記録、唯一無二の左右非対称ケース
名作ロングセラー時計の誕生と歴史、そして変遷を辿るこのシリーズ。
今回はロックンロールの王様も愛した世界初のエレクトリック時計について。
斬新な機構とデザインでたちまち人気モデルに
世界初のエレクトリックウォッチとして登場したベンチュラ。小型電池を動力とするCal.ハミルトン500を搭載し、リチャード・アービブによる左右非対称デザインを採用。この画期的な機構とデザインが大いに話題を呼び、発売と同時に1万2000個以上という驚異的なセールスを記録した。
Original model
オリジナルモデル
エレクトリックからクォーツへ
初登場から約30年後、ベンチュラがオリジナルデザインを踏襲して復活。左右非対称のトライアングルケース、羽を広げたようなラグ部分、ドットインデックスを配した文字盤などをほぼ忠実に再現した。一方、内部には新たにクォーツムーブメントを取り入れた。
安定性のあるクォーツを搭載
最大の変更点はやはり内部システム。電池式の超小型電気モーターによるエレクトリック機構に代わり、一般的なクォーツシステムを採用。これにともない、文字盤6時位置の「ELECTRIC」文字が取り除かれた。
初のクロノグラフ
2002年登場の「ベンチュラ クロノ」。エレクトリック時代にはなかったシリーズ初のストップウォッチ機構を搭載。文字盤に1/10秒計、30分計、スモールセコンドの3つのインダイヤルを装備。ケースデザインは維持したまま、右側にプッシュボタンを設置した。
実用的レトロなレイルウェイ
文字盤センターのクロノ秒針を読み取りやすくするため、ドットインデックスから延びるバーを排し、3つのインダイヤルを結ぶレイルウェイサークルをセット。また、4時位置には新たにデイト表示を取り入れた。
60年を経ていまだ斬新な奇跡のトライアングル
1960〜70年代、自動巻きクロノグラフ・ムーブ「キャリバー11」、LEDデジタル時計「パルサー」をはじめ、画期的な機構やモデルを次々に生み出していったハミルトン。その嚆矢となったのが「ベンチュラ」である。
1957年に誕生した本作は、従来のゼンマイの代わりに小型電気モーターでテンプを動かす、クォーツに先駆けたエレクトリック機構を備えていた。
また、キャデラックなどを手がけたインダストリアルデザインの鬼才、リチャード・アービブによる左右非対称のトライアングルケースも多くの人々を魅了し、記録的な大ヒット商品に。
その中には、かのエルヴィス・プレスリーも含まれ、のちに“エルヴィスウォッチ”の名でも親しまれた。
その後ハミルトンは米国からスイスに拠点を移し、スウォッチ グループ傘下となった新体制のもと、「ベンチュラ」は1988年にクォーツを搭載して復活する。
2000年代に入ると映画『メン・イン・ブラック2』でも使われたクロノグラフ、そして話題を呼んだ自動巻きモデルが登場。デザインも時代の趨勢に合わせた特大ブラックやスケルトンなどが加わった。
一方で、初代を忠実に踏襲したタイプは定番モデルとして人気を誇り、クォーツと自動巻き、レトロとハイテクデザイン、サイズもレディスから超大型まで、幅広いラインナップから好みの機種が選べるのが、このシリーズの特徴。
しかも価格はアンダー10万円から揃う。あの類まれな歴史的デザインが今も身近に楽しめるのは、時計界の財産といえる。
自動巻きのXXLモデル
ベンチュラの愛用者エルヴィス・プレスリーにオマージュを捧げた「ベンチュラ XXL エルヴィス限定モデル」。左右非対称デザインを維持しながら、ガンブラック仕様の特大ケースを採用。内部機構には2007年に初導入された自動巻きキャリバーを搭載する。
ダイナミックなブラック仕様
縦54×横46㎜の特大SSケースに、ガンブラックPVDを施して、迫力あふれるオールブラックスタイルを実現。文字盤は車のフロントグリルを模したメッシュ仕様で、赤と白がアクセントに。自動巻きETA 2824-2搭載。
伝説のエルヴィスモデルを復刻
誕生60周年を記念したベンチュラのフレックスブレスレットモデル。エルヴィスが1965年にプライベートで購入し、蛇腹式のフレックスブレスにアレンジしたホワイトゴールドモデルを再現。クォーツ。縦50.3×横32.3㎜。SSケース&ブレス。9万1000円。
随所を現代化しつつ忠実に再現
ケース、文字盤、サイズ感ともオリジナルを踏襲。エルヴィスが標準装備のレザーベルトをフレックスブレスに付け替えたのに倣い、同タイプのSSブレスを採用。クォーツを搭載し、風防はサファイアクリスタル製に。
ロングパワーリザーブの高性能
エルヴィス・プレスリーの生誕80周年を記念した「エルヴィス80 オート」。80時間パワーリザーブの自動巻きキャリバーを搭載。縦44.6×横42.5㎜。SSケース。ラバーストラップ。15万1000円。お問い合わせ先:ハミルトン/スウォッチ グループ ジャパン Tel.03-6254-7371
立体感を醸す多面カットケース
2015年発表の自動巻きモデルはPVD加工のブラックケースだったが、今年の新作ではポリッシュ仕上げのSSケースに。多面体カットの輝きがより際立つ仕様となる。内部には引き続き約80時間持続のCal.H-10を採用。
[時計Begin 2018 SUMMERの記事を再構成]
文/岡崎隆奈 構成/市塚忠義