2018.08.21

【英国発はこんなにスゴイ!】クロノグラフ

クロノグラフ

ジョージ・グラハムがクロノグラフの原型を開発

任意の時間計測が可能なストップウォッチ機能を搭載した「クロノグラフ」。スポーツ系の代表格となるこの機構・機種も、その起源は18世紀前半の英国に辿ることができる。

グラハムの偉業を称え、1995年に彼の名を冠したブランドが設立された。トリガー式プッシュボタンを備えたクロノグラフ「クロノファイター」などで人気を博す。

 

18世紀にすでに存在した"元祖"クロノグラフ

任意のタイミングでスタート/ストップボタンを押すことにより、特定の事象の経過時間を計測するストップウォッチ機能。この原理を考えたのが、17〜18世紀に活躍した英国人時計師のジョージ・グラハムである。「グラハム脱進機」と呼ばれる直進式脱進機を発明したことでも有名なグラハムは、1720年頃、クロノグラフの原型となる時間計測機構を考案。このシステムでは原理上、1/16秒単位で計測することが可能だった。しかし、時計の発展を妨げたくなかった彼は、特許を取得することなく、自らの発明を他の時計師たちに自由に使わせることを選んだ。1821年、フランス人のニコラ・リューセックが、文字盤にペンで経過時間を記録する機械を発明。ギリシャ語に由来し「時間(chronos)を記録する(graph)」という意味で「クロノグラフ」と名付け、翌年に特許を取得した。それでもグラハムの名は、クロノグラフの父として歴史にしっかりと刻まれている。

 

発案した英国人はこの人

数々の画期的な時計のシステムを発明した"クロノグラフの父"

ジョージ・グラハム(George Graham)

1688年にロンドンに渡り、“英国時計の父”トーマス・トンピオンのもとで腕を磨いたグラハム。1715年にフックのアンクル脱進機を改良した「直進式脱進機」を発明、1720年にはトンピオン考案の「シリンダー脱進機」を実用化した。また同じ頃にクロノグラフを考案したほか、天体観測機器を開発するなど、時計・天文分野の発展に大いに貢献。その業績により死後はウェストミンスター寺院に埋葬された。

 

[時計Begin 2018 SUMMERの記事を再構成]
文/岡崎隆奈 イラスト/WADE LTD