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2018.09.19
260年の歴史を繋ぐフィフティーシックス「マルタ十字の尊厳」
1755年に創業したヴァシュロン・コンスタンタンがマルタ十字をロゴに採用したのは、1880年のこと。その形は当時のジュネーブ製時計にあった部品に似る。すなわちジュネーブ時計製作の歴史を表す形でもある。1950年代、マルタ十字をラグで象るモデルが誕生。今年登場した新作「フィフティーシックス」は、1956年製モデルをモチーフにマルタ十字のラグを再現した。美徳を象徴し、ジュネーブ伝統の部品形状に似るマルタ十字は、美を重んじるジュネーブ・スタイルの時計製作を今日まで貫く、ヴァシュロン・コンスタンタンの矜持の表れである。フィフティーシックスはマルタ十字をケースで表現し、老舗メゾンの美意識と尊厳とを未来へと繋げる。
260年の歴史を繋ぐフィフティーシックス「マルタ十字の尊厳」
最新コレクションに受け継がれたリファレンス6073の格調
新作フィフティーシックスが規範としたのは、1956年製のリファレンス6073。腕時計が華やかさを競った時代の格調の高さは、新コレクションによって現代に再解釈された。特徴的なマルタ十字を成すV字を象るラグは、より穏やかで気品あるたたずまいに仕立て直され、ダイヤルはよりレトロな当時のスタイルを継承。上質で新鮮なヴィンテージ感が、創出された。
ディテールの随所に配した格調高き50年代スタイル
4つのラグが、それぞれV字を象り、それらを組み合わせるとマルタ十字を成す。シンボリックで格調高き造形美は、1880年に誕生し、メゾン最初期の1956年製自動巻き腕時計「リファレンス6073」にも、しっかりと受け継がれている。さらにそこから60年以上を経た今年、マルタ十字を象るラグは、新コレクション「フィフティーシックス」へと捧げられた。同時に、コレクションを構成する全モデルが自動巻きを搭載。巻き上げ機構でも6073をなぞらえている。
そんな自動巻きは、象徴的なマルタ十字を成すケースに搭載するにふさわしい。何故なら、前述した19世紀当時のジュネーブ製時計にあった、マルタ十字に似たパーツとは、香箱の巻き留め装置だったから。そして自動巻きの香箱に備わるスリップ機構は、巻き留装置のいわば進化形だからだ。
6073でV字を強く表していたラグは、フィフティーシックスでは小さな三角プレートをラグ間に重ねたさり気ない、それゆえ気品ある表現に仕立て直された。それでいて適度な存在感も持ち、シンボリックさを失っていない。
また6073がインデックスもV字としてマルタ十字をより強く意識させていたのに対し、フィフティーシックスはアラビア数字が主体。そのスタイルは、1950年代に多用されたセクターダイヤルからの引用であり、ヴィンテージな装いだ。中央のレイルウェイを境にオパリンとサテンとで切り替えた、仕上げの美しさは見事。さらにサファイアクリスタルをボックス型に設えて、レトロな印象はより高まった。
さらに特筆すべきは、フィフティーシックスには、現行の他のクラシックラインでは珍しいSSケースが用意されている点(インデックスや針は18KWG製!)。格調高き1950年代スタイルが、SSでより身近になった。
■1956年モデル
■2018年モデル
受け継がれたリファレンス6073の格調
Ref.6073が生まれた1950年代、時計のデザインはより華麗に進化した。フィフティーシックスは、Ref.6073に備わるラグ形状と機構とともに誕生当時にあった格調高きスタイルを現代に受け継いだ。
[時計Begin 2018 AUTUMNの記事を再構成]
文/髙木教雄 構成/市塚忠義
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