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2019.10.19
【H.モーザーの工房へ行ってきた!!】世界中で「ひげゼンマイ」を自社製造できるメーカーは数社だけ
ひげゼンマイのマイスターシャフハウゼンにあり!
世界でもこのパーツを作れるのはわずかなメーカーだけ
美しいフュメダイヤルで知られるH.モーザーは、ムーブメントの内製率もスイス屈指を誇る。テンワや脱進機、さらにひげゼンマイも自社製造する技術と設備を持ち、高精度を約束する。
何度も何度もひたすら伸ばすシュトラウマン合金の安定性
鉄、ニッケルなど8種類を配合したPE4000合金!
行ってきたのはココ!ノイハウゼン本社工場
許される誤差は5ミクロン。超精密加工が高精度を生む
ムーブメントを自社で設計・開発し、パーツ製造や組み立ても行う──そうしたマニュファクチュールは、スイスでは決して少なくはない。しかしテンプや脱進機、ひげゼンマイは専門サプライヤー頼みであるケースがほとんどだ。H.モーザーは、これら時計精度を司るキーパーツまでも自社製造している。中でもひげゼンマイまで自社製というのは、スイスでも5社程度しかない。その製作は同じMELBホールディングス傘下にあり、H.モーザーの本社と同じ屋根の下にある兄弟会社プレシジョン・エンジニアリングが担う。
ひげゼンマイの原料は、鉄とニッケルを主成分とし、ほか6つの金属を合わせたシュトラウマン合金PE4000。さらに2017年からは、耐磁性に優れたチタンとニオブとの合金PE5000も一部のモデルで用いている。
PE4000は、金属メーカーから直径0・6㎜のワイヤーとして納品される。これをまず、専用の伸線機で必要な細さに引き伸ばす。スタンダードなひげゼンマイだと直径0・08㎜。
マシンに掛けられたワイヤーは、600℃前後に熱した後、小さな丸穴を持つダイスに通しながら、繰り返し引き伸ばされて真円を保ちながら、必要な直径を得る。0・08㎜にするには、6回の伸線工程が必要だという。
引き伸ばされたワイヤーは洗浄後、圧延機のある特別な部屋に運ばれる。この部屋には、1人の技術者しか入れない。丸いワイヤーは、圧延によってひげゼンマイ用の平たい状態となる。その最終段階での厚みと幅の許容誤差(公差)は、わずか5ミクロン。圧延時の熱膨張まで管理しなければ、この公差はかなえられない。だから体温で室温が大きく変化しないよう、1人しか入室できないのだ。圧延機の中にはいくつも測定器があり、常に厚さと幅が計測されている。ひげゼンマイ製造工程は、極めて繊細にして慎重だ。
深い青のグラデで華やぐ
エンデバー・センターセコンド・オートマティック
ベーシックな中3針も、ミッドナイトブルーのフュメで個性的に。ケースはリューズ周りのみサテンとし、仕上げに凝る。72時間駆動の自動巻きを搭載。メッシュストラップが、お洒落。自動巻き。径40㎜。18KRGケース。アリゲーターストラップ。240万円。
時の表示に独創性を発揮
エンデバー・フライングアワーズ
3つのディスクの数字の色が黒→白に変わることでアワーを示す仕掛け。中央のリングは分表示で、アワーの数字の内側の三角の指標で読み取る設計になっている。限定100本。自動巻き。径42㎜。18KWGケース。アリゲーターストラップ。425万円。
[時計Begin 2019 AUTUMNの記事を再構成]
写真/岸田克法 文/髙木教雄 構成/市塚忠義