2020.02.20

時計界が驚愕した「真っ赤なセラミック」の製造工程を取材【ウブロの工房へ行ってきた!!】

世界で初めて完成させた難易度の高いセラミックカラー
低温の高圧焼成で克服レッドセラミックへの執念

フェラーリとパートナーシップを組むウブロにとって、鮮やかなレッドは極めて重要なカラーだ。その色を世界で初めてセラミックで実現!不可能を可能とした、驚きの発想力に刮目せよ。

STEP 1:原材料を混ぜ合わせる

レッドマジックの母材は、純度が高い酸化ジルコニウム。容器に入った白いパウダーが、それだ。酸化金属系の赤い顔料を混ぜ、バインダーを加えてフィードストックと呼ばれる粒状にする。赤いセラミックの実現には多くの時間とコストがかけられた。

 

STEP 2:フィードストックを型に

これがグラファイト製の型。円筒状の容器にフィードストックを圧入する。グラファイトの粉末は、鉛筆の芯の原材料。極めて身近な素材だ。硬く、高圧にも耐えられる。

 

STEP 3:型のセットが完了

円筒形の容器に円柱を挿し込めば、準備は完了。これに電気を通すと、発熱して炉の役割をする。電気ストーブが温度調節できるように、グラファイトの発熱量は流す電力の大きさに比例し、温度のコントロールが容易。赤から変色しないぎりぎりの温度で焼成できる。

STEP 4:専用マシンで通電&加圧

レッドマジックのために開発された専用マシン。この中に型をセットし通電して約800℃に発熱させ、円柱を押して600トンで加圧する。焼成・加圧に要する時間は、約1分。ベゼルやケースに必要な大きさと厚みの円盤状のセラミックが1枚ずつ出来上がる。

それ自体が炉の働きをする発熱するグラファイトの型

マジックゴールドに続き2013年、ウブロのR&Dチームはセラミックに赤い“魔法”をかけた。その名もズバリ、レッドマジックである。元来、赤い顔料はどれも熱に弱い。ゆえに高温で焼き上げるセラミックでは、赤を表すことは難しかった。

そこで、赤が変色しないぎりぎりの焼成温度を模索した。たどりついたのは、約800℃。しかしこの温度では、セラミックに求められる硬度に達する高密度が得られない。低温焼成による密度不足を補う解決策を、開発チームは圧力に求めた。

800℃での焼成中、1平方センチあたり600トンもの高圧をかけることで高密度をかなえ、鮮やかな赤いセラミックを実現したのだ。

では、いかにして焼成中に圧力をかけるのか?そのために開発された特別な装置が、今回の取材で公開された。一番の鍵となるのは、円筒形の容器とその穴を両端から塞ぐ2本の円柱から成るグラファイト製の型である。

日本語で黒鉛と訳されるグラファイトは、通電すると発熱する性質を持ち、電気ストーブの熱源にも使われる。つまりグラファイト製の型に電気を通せば、それ自体が発熱して炉の働きをする。

そして発熱中、円筒形の容器に挿された円柱を押せば、同時に圧力もかけられる。型そのものを炉と圧力体にするという発想力が不可能を可能とし、かつてない赤いセラミックを生み出した。

この技術を応用することでブルーやグリーン、イエローのカラーセラミックを実現。さらにこれまでにないセラミックケースのカラーの可能性を研究しているという。セラミック技術でも、ウブロは時計界をリードする。

多面カットの造形美で魅せる
アエロ・フュージョンクロノグラフ
オーリンスキーレッドマジック

彫刻家リチャード・オーリンスキーとのコラボ。ファセットカットによる造形美をレッドセラミックで実現。セラミックを、この複雑な形状に切削するのは至難の業。世界限定200本。自動巻き。径45㎜。セラミックケース。ラバーストラップ。256万円。

鮮烈なるブルーのクロノ
ビッグ・バンウニコ
ブルーマジック

ブルーセラミックは他にもあるがウブロの青は一層鮮やか。リューズやボタンにわずかに差した黒との対比で、青がより引き立つ。自社製Cal.HUB1242〝ウニコ〞搭載。世界限定500本。自動巻き。径45㎜。セラミックケース。ラバーストラップ。222万円。

<strong>多面カットの造形美で魅せる<br/>アエロ・フュージョンクロノグラフ<br/>オーリンスキーレッドマジック</strong><br/> 彫刻家リチャード・オーリンスキーとのコラボ。ファセットカットによる造形美をレッドセラミックで実現。セラミックを、この複雑な形状に切削するのは至難の業。世界限定200本。自動巻き。径45㎜。セラミックケース。ラバーストラップ。256万円。
<strong>鮮烈なるブルーのクロノ<br/>ビッグ・バンウニコ<br/>ブルーマジック</strong><br/> ブルーセラミックは他にもあるがウブロの青は一層鮮やか。リューズやボタンにわずかに差した黒との対比で、青がより引き立つ。自社製Cal.HUB1242〝ウニコ〞搭載。世界限定500本。自動巻き。径45㎜。セラミックケース。ラバーストラップ。222万円。

 

[時計Begin 2020 WINTERの記事を再構成]