2020.06.19

ムーブメントの主要サプライヤー #量産可能なベーシック・キャリバー編

数多くの時計ブランドがこぞって採用
ムーブメント主要サプライヤー

2000年代以降、多くの時計ブランドがマニュファクチュール化を推進してきた。しかしムーブメントをサプライヤーに依存するブランドが、今も多数派だ。ベーシックな量産型キャリバーのサプライヤーの存在意義は大きく、また近年は複雑機構や高級機を提供する技巧派の新規参入も増えている。機械式時計文化はムーブメント・サプライヤーが支えるのだ。

量産可能なベーシック・キャリバー編

2002年に勃発したETA問題以降、基幹キャリバーのサプライヤーが注目されている。28系や7750系の代替機を供給し、エントリー~ミドルレンジの機械式を高品質に保つ。

ETA問題の行く末を担う実力派サプライヤー

2002年、スウォッチ・グループは、2010年までにETAのエボーシュのグループ外供給を段階的に停止すると発表した。しかしスイス連邦競売政策委員会の裁定で、供給停止は10年延長された。つまり2020年である。今年は、時計業界の転換期。そして2002年以降、ETAの代替機を供給するムーブ会社が、多数名乗りを上げてきた。その筆頭が「セリタ社」だ。

まず2005年にETA2824︲2の代替機SW200を発表。現在は2892A2に代わるSW300、7750の互換機SW500をラインナップする。ラ・ジュー・ペレ社の協力も得て、これらを量産。ETAに代わるベーシックキャリバーとして信頼を勝ち得て、圧倒的なシェアを獲得する。

また「ソプロード社」も、2892A2の代替機としてキャリバーM100を持つ。モジュール開発にも長け、レトログラードなどを提供している。

また機械式とクォーツとをラインナップするシチズン傘下の「ミヨタ」にも、欧州のブランドが注目。エントリーラインで搭載モデルが見受けられる。

これらエボーシュメーカーと一線を画するのが、「デュボア・デプラ社」。ETAのモデファイでも知られるが、モジュール開発の実力派でもある。世界初の自動巻きにして初のモジュールクロノとして1969年に誕生したクロノマティックの開発にも参画。現在もクロノや永久カレンダーのモジュールのシェアは、スイスでも群を抜く。また既存キャリバーのモデファイも、近年はETAではなくセリタを採用。同様の動きは、ムーブサプライヤー各社に見られ、ETA問題解決に向かう。

信頼を勝ち得てシェアNo.1に
セリタ社

所在地
Crêt-du-Locle 11CH-2301 La Chaux-de-Fonds Switzerland
URL
http://www.sellita.ch
採用ブランド
オリス、タグ・ホイヤー、モンブランなど、スウォッチ・グループ傘下以外で、これまでのエタ社製キャリバーを使ってきたブランドの多くが、セリタ社製に切り替えている。採用ブランドは、枚挙にいとまがない。

ETA主要キャリバーの互換機を大量生産

ETAの主要サプライヤーの1つとして、今も一部のキャリバーの組み立てを請け負う。同時に2003年以降は、ETA代替機の製造にも着手。順次ファクトリーを拡張し、今では年間100万個を超えるETA主要キャリバーの互換機を製造。ETA問題を解決しただけでなく、品質も申し分ない。

主要キャリバーであるSW200の組み立てライン。技術者がズラリと並び、流れ作業で量産する。各工程ごとにチェックし、品質も保持される。代替機だけではなく、自社ムーブも開発。

代表キャリバーはコレ!

SW200

2005年に発表されたETA2824-2の互換機。すでに著作権期間が過ぎている設計を流用した、いわゆるジェネリック・キャリバーである。エタ社の下請けとして2824-2の組み立てもしていたため、同等以上の品質を約束。組み立て会社からエボーシュ・メーカーへと転身を叶えた、記念すべき初号機である。

オリスはレトロ&モダンなダイバーズモデルに採用

ORIS(オリス)
オリス アクイス デイト レリーフ
探検スイマー、ブロメイスとのコラボ・モデル。ダイヤルの色は嵐の海を、ベゼルの数字で水の質感を表現した。自動巻き。径43.5㎜。SSケース。ラバーストラップ。23万4000円。問い合わせ:オリス ジャパン

ORIS(オリス)
オリス ダイバーズ65
1965年製ダイバーズを復刻したレトロな顔付きを、ディープグリーンに染めた新色。蓄光塗料にはベージュ色を用い、レトロ感がアップ。自動巻き。径40㎜。SSケース&ブレスレット。24万6000円。

<b>ORIS(オリス)<br />オリス アクイス デイト レリーフ<br /></b>探検スイマー、ブロメイスとのコラボ・モデル。ダイヤルの色は嵐の海を、ベゼルの数字で水の質感を表現した。自動巻き。径43.5㎜。SSケース。ラバーストラップ。23万4000円。<strong>問い合わせ:</strong>オリス ジャパン
<b>ORIS(オリス)<br />オリス ダイバーズ65<br /></b>1965年製ダイバーズを復刻したレトロな顔付きを、ディープグリーンに染めた新色。蓄光塗料にはベージュ色を用い、レトロ感がアップ。自動巻き。径40㎜。SSケース&ブレスレット。24万6000円。

 
 

互換性を持つ万能選手を輩出
ソプロード社

所在地
Rue de la Blancherie 63,CH-1950 Sion Switzerland
URL
http:/soprod.com
採用ブランド
クエルボ・イ・ソブリノス、ジン、ボーム&メルシエ、リシャール・ミルなど幅広く供給。クォーツも製作する実力派サプライヤー

1966年創業。当初はETAの組み立てサプライヤーであったが、その後エボーシュ製造にも進出。2003年に逸早く2892A2の代替機を発表。レトログラードやGMTなどを搭載した多彩な機械式を取り揃える。

実用機能が満載

CUERVO Y SOBRINOS(クエルボ・イ・ソブリノス)
ヒストリアドール・レトログラード

クル・ド・パリを施したダイヤルに、レトログラードデイトと曜日表示、パワーリザーブ計を装備。自動巻き。径40㎜。SSケース。アリゲーターストラップ。48万円。問い合わせ:ムラキ

9094
ETA互換機をベースに、モジュールで付加機能を与えるのを得意とする。このモデルでは、3つの機能を追加。特にレトログラードデイトは秀逸。

<b>CUERVO Y SOBRINOS(クエルボ・イ・ソブリノス)<br />ヒストリアドール・レトログラード</b><br />クル・ド・パリを施したダイヤルに、レトログラードデイトと曜日表示、パワーリザーブ計を装備。自動巻き。径40㎜。SSケース。アリゲーターストラップ。48万円。<strong>問い合わせ:</strong>ムラキ
<b>9094</b><br>ETA互換機をベースに、モジュールで付加機能を与えるのを得意とする。このモデルでは、3つの機能を追加。特にレトログラードデイトは秀逸。

 
 

世界に羽ばたくシチズン品質
ミヨタ

所在地
埼玉県所沢市大字下富840番地
URL
https://miyotamovement.com/
採用ブランド
シチズン、クロノトウキョウといった国内ブランドに加え、ロックマンをはじめ欧州でも採用。

機械式もクォーツも多彩にラインナップ

シチズン傘下のムーブメント会社で、国内に17カ所の製造拠点を持つ。左の写真は2016年に建設された長野県佐久市の巨大工場。機械式ではベーシックな3針で多くのバリエーションを持ち、クォーツではクロノグラフなど多彩な機能をラインナップ。

薄型の高級機はコレ!

AORIS(クロノトウキョウ)
クロノトウキョウ クラシックTiCTAC×HAJIME ASAOKA
独立時計師・浅岡 肇氏が外装の設計とデザインを担当。ブロンズカラーがお洒落。自動巻き。径37㎜。SSケース。カーフストラップ。24万円。問い合わせ:TiCTACupdate 渋谷パルコ店

90S5
3.9㎜厚の薄型自動巻き。42時間パワーリザーブにストップセコンドを備えるなど十分なスペックを持つ。地板のテンプ部分はオープンハートに。

<b>AORIS(クロノトウキョウ)<br />クロノトウキョウ クラシックTiCTAC×HAJIME ASAOKA<br /></b>独立時計師・浅岡 肇氏が外装の設計とデザインを担当。ブロンズカラーがお洒落。自動巻き。径37㎜。SSケース。カーフストラップ。24万円。<strong>問い合わせ:</strong>TiCTACupdate 渋谷パルコ店
<b>90S5</b><br>3.9㎜厚の薄型自動巻き。42時間パワーリザーブにストップセコンドを備えるなど十分なスペックを持つ。地板のテンプ部分はオープンハートに。

 
 

機能を増し増しのモジュール構造
デュボア・デプラ社

所在地
Grand-Rue 12 1345 Le Lieu Switzerland
URL
http://www.dubois-depraz.ch/
採用ブランド
タグ・ホイヤー、モンブラン、カール F.ブヘラ、フォルティス、ジンなど。クロノモジュールは、年間数万個を各社に提供している。クロノの歴史を語る上で欠かせぬ名門

1901年に創業し、クロノグラフを得意としていたマルセル・デプラが前身。現在もファミリー経営が続く。1969年にはクロノマティックのモジュール製作を担当した。今もクロノと永久カレンダーのモジュールは高く評価され、多くのブランドが採用。他にも多彩なモジュールを展開し、高級自社製キャリバーも開発・製造している。

自動巻きクロノといえばコレ!

TAG HEUER(タグ・ホイヤー)
ホイヤー モナコ キャリバー11 クロノグラフ
左リューズの機構だけでなく、1969年の初代の姿を忠実に再現。自動巻き。ケース39×39㎜。SSケース。カーフストラップ。66万円。問い合わせ:LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン タグ・ホイヤー

キャリバー11
現行モデル

クロノマティックと同じ右リューズのクロノグラフCal.11は、セリタ社製のベースムーブメントとデュボア・デプラ社製のモジュールとの組み合わせ。実力派がタッグを組んだ。

1969年
オリジナル

初代Cal.11=クロノマティックは、当時のホイヤー社とブライトリング、ハミルトン、デュボア・デプラとの共同開発。クロノ機構のモジュール化はデュボア・デプラの発案だ。

<b>TAG HEUER(タグ・ホイヤー)<br />ホイヤー モナコ キャリバー11 クロノグラフ<br /></b>左リューズの機構だけでなく、1969年の初代の姿を忠実に再現。自動巻き。ケース39×39㎜。SSケース。カーフストラップ。66万円。<strong>問い合わせ:</strong>LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン タグ・ホイヤー
<b>キャリバー11<br>現行モデル</b><br>クロノマティックと同じ右リューズのクロノグラフCal.11は、セリタ社製のベースムーブメントとデュボア・デプラ社製のモジュールとの組み合わせ。実力派がタッグを組んだ。
<b>1969年<br>オリジナル</b><br>初代Cal.11=クロノマティックは、当時のホイヤー社とブライトリング、ハミルトン、デュボア・デプラとの共同開発。クロノ機構のモジュール化はデュボア・デプラの発案だ。

 

[時計Begin 2020 SPRINGの記事を再構成]