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2020.06.23
時計の第一印象は「文字盤」で決まる! ダイヤル専業サプライヤー
時計の「顔」を受け持つ、超一流サプライヤー
"フェイス"とも呼ばれるように、ダイヤルは時計のまさしく"顔"である。高級時計に特化したダイヤルサプライヤーは、ラッカー、エナメル、ギョーシェなどそれぞれに伝統的な工芸技巧を駆使して、美しさと個性とを育んでいる。
超一流の技術を持つ
ブランド傘下の文字盤工房
近年、時計の顔の作り手であるダイヤル専業のサプライヤーを、高級時計ブランドが傘下に収めるケースが多い。優れた技術を、安定して供給するためだ。ここで取り上げた3社も、いずれも時計ブランドの傘下だが、前出のお抱えサプライヤー同様に、他社の仕事も請け負い、技術を研鑽している。
1860年創業の老舗「カドラン・フリッキゲル社」は、2004年にパテック フィリップの子会社となった。スイス最高峰の時計メゾンが、絶大なる信頼を寄せるのは、伝統的な製作技術を継承しながら、独自のノウハウも培っているから。イタリア産の軽石から作った研磨材と金属ブラシによるサテン仕上げ、昔ながらの手動旋盤を使ったギョーシェ彫りなどなど。植字インデックスの製作も担当し、手仕事で完璧な鏡面仕上げを叶えている。
スイス随一のエナメル技術を持つ「ドンツェ・カドラン社」は、ユリス・ナルダンの傘下。他社が電気炉を用いる中、燃えさかる炎の中で焼成する伝統的なグラン・フーを堅持。クロワゾネ、シャンルベといったエナメル技術も持ち、特別な美を創造する。
F.P.ジュルヌもダイヤル工房「カドラニエ・ジュネーブ社」を子会社に持つ。ラッカー、メッキ、エナメル、ギョーシェなどダイヤル装飾に関する多彩な技巧を持ち、それぞれに長ける。子会社になる前から、老舗高級時計メゾンのダイヤル製作を一手に担ってもきた。シャネルが、F.P.ジュルヌに資本参加したのは、このダイヤル技術が欲しかったからとも言われている。
3社とも、技術は超一流。高級時計にふさわしい顔が、ここで創られる。
手作業にこだわる
カドラン・フリッキゲル社
パテック フィリップが認めた最上級の職人技術
1860年に創業した老舗ダイヤル工房。伝統的な製作技術を持ち、高級時計メゾンにダイヤルを提供してきた。パテック フィリップもその中の1つで、2004年に完全子会社化した。各種技巧を持ち、そのすべてが手作業。植字インデックスは、ダイヤルへのセッティングまで担当する。
圧巻のグラン・フー
ドンツェ・カドラン社
最高峰の技術を持つエナメルマイスター
1972年、フランシス・ドンツェが創業したスイスきっての実力派エナメル工房。2012年にユリス・ナルダン傘下となった。17世紀に確立された高温焼成のグラン・フー、クロワゾネ、シャンルベ、フランケのエナメル技術を継承し、多くの高級メゾンから絶大な信頼が寄せられている。
シリコンひげの新キャリバー!
新工房の落成式。スイスの国務院議長もテープカットに参加。右から2人目が、メゾンを率いるフランソワ-ポール・ジュルヌ氏。
名だたる高級ブランドに供給
カドラニエ・ジュネーブ社
天才時計師の美意識を
すべて叶える技術力
2000年にF.P.ジュルヌとハリー・ウィンストンが共同でジュネーブ郊外に設立。2011年にF.P.ジュルヌの完全子会社となり、その翌年に新ファクトリーが完成した。同じ建物内には、ケース工房のボワティエ・ジュネーブ社も入っている。
立体的な造形美をダイヤルに与える
ダイヤルの外周に、連続したファセットカットを施す。立体的な造形美が、これで生まれる。このほかにも多様な装飾加工を得意とし、その多くが手作業で行われている。天才時計師と老舗メゾンの審美眼に適う美を織り成す。
植字の製作も担う
ズラリと並んだ植字インデックス。ダイヤルに差し込む脚も、精密に加工されている。これもまた手作業で磨かれて、上質な鏡面に仕立てられる。インデックスを植え込むのも、むろん手作業。外れぬよう、丁寧に作業する。
最終仕上げは手作業
手作業は、ハイエンド・ダイヤルには不可欠との理念を持つ。真ちゅう製のダイヤルプレートは、最終的にサンドペーパーを用いて手で磨かれる。こうすることでラッカーやエナメルなどの仕上げが、より一層美しさを増す。
昔ながらのゼラチン転写
インデックスの転写。反転したインデックスを彫ったプレートに、専用インクを載せている。これを転写用パッドに移し、ダイヤルにプリントする。パッドには一般的なシリコンではなく、より厚く載せられるゼラチンを使用。
裏面も手で仕上げる
ダイヤル裏面のバリ取り。鋭利な工具を用いてキサゲ加工することで、完璧な平滑を得る。インダイヤル用のホールの内縁も、丁寧に磨き上げることで、別体のインダイヤルをはめ込んだ際、メインダイヤルと美しく調和する。
[時計Begin 2020 SPRINGの記事を再構成]