2020.09.03

機械式時計が完全復活! 本格時計ブームの再来 ―1990年台前半―【歴代時計グランプリの「今」】

クォーツ時計の登場によって、完全な低迷期に突入したスイスの機械式時計。しかしその価値が見直され、1990年には、再び高級時計のメインストリームに。

アナログなチクタクやっぱりゼンマイがいい

1969年、正確無比なクォーツが誕生。価格競争で手頃な価格になると一気に普及し、腕時計の主導権を獲得。機械式ブランドの多くは倒産に追い込まれる。いわゆる「クォーツショック」だ。そんな暗黒時代を迎えるも、1980年代の後半には復活の兆しが見え始める。カメラやレコードなどと比べ、デジタル化が圧倒的に早かった腕時計。1990年には、その工芸品的な価値も見直され、完全復活を果たす。

1993年、月刊誌「Begin」から時計部門が独立。本格時計ブームを予見し、1998年には「時計Begin」が誕生する。この頃のバーゼルやSIHHといった見本市と言えば、商談がメイン。今のようなプレス対応はなく、海外発表会は未知の世界であったに違いない。しかし我々の先輩達は早くも2大見本市に潜入。より多くの本格ブランドを発見しようと試みた。

そんな努力もあってか、本誌には早くも「時計マニア」と言われる層が定着。時計の真の価値を見極める嗅覚は、急ピッチで磨かれていった。そのマニア達から絶大な支持を受けていたのが、パテック フィリップの「3796」。1995年のジャパンスペシャル部門(当時はまだ総合グランプリがなかった)でグランプリに輝いた。

「3796」は、3針時計の王道スタイル。その風貌はシンプルそのものだ。ケースは30・5㎜と小さく、一見するとフツーの時計。しかし、全てのディテールは異常なまでに磨き上げられ、その存在感は別格。普通であって普通じゃない時計。「このオーラ、本当にわかってる?」時計マニア達は、究極の審美眼を競い合った。

「3796」が、今も高級時計の指針になっていることに変わりはない。受け継がれた現行モデルは「5196」。文字盤の完璧な黄金バランスはそのまま、ケースは37㎜に大型化されている。昔と変わらない手巻きキャリバー215 PSの搭載は、このムーブメントの完成度の高さの証。96(クンロク)は、いつの時代であっても、時計マニア憧れの存在なのである。

1995
グランプリモデル

PATEK PHILIPPE(パテック フィリップ)
3796
受賞の理由
日本でしか手に入らない数量限定の裏スケ仕様

 

日本のマーケットの力を証明する限定モデル
通常、3796の裏蓋は通常のスナップバック。このモデルは日本限定100本という希少な裏スケルトン仕様だ。裏スケが珍しかった時代、パテック フィリップのムーブメントを見れた衝撃は絶大。3796は1982年~2000年まで製造。

「キューロク」ではなく「クンロク」
時計マニア達の間で、3796の下2桁である96から「クンロク」と呼ばれるように。イラストは、少々「繊細」なパテック愛好家を風刺した、故・中野 豪氏によるもの。当時の人気連載であった。

 

ディテールを極めた3針モデルの頂点!

今買える後継モデル!
パテック フィリップ
5196
ココが進化
ケース径が30.5㎜から37㎜に大型化

パテック フィリップを代表するクラシックモデル
現行モデルは、1932年の初代96をオマージュして2004年に誕生。一切の無駄のないデザインは今も健在。手巻き。径37㎜。18KYGケース。アリゲーターストラップ。3気圧防水。219万円。<strong>問い合わせ:</strong>パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター

 

30年以上変わらない手巻きムーブメント
後継機モデルに搭載する手巻きのキャリバー215 PSは、基本的に1995年当時と変わらない。毎時2万8800振動で時を刻み、ジャイロマックステンプで精度を司る。ちなみにPSとはPutti Second(スモールセコンド)の意味。パーツ数は130個。

ケースのバリエーションは全部で4つ
現在発売されている5196のケース種類は4つ。プラチナケースのみ、文字盤のデザインが異なり、ブレゲ数字スタイルとなる。右からプラチナケース403万円、18KWGケース240万円、18KYGケース219万円、18KRGケース240万円。

<b>30年以上変わらない手巻きムーブメント</b><br>後継機モデルに搭載する手巻きのキャリバー215 PSは、基本的に1995年当時と変わらない。毎時2万8800振動で時を刻み、ジャイロマックステンプで精度を司る。ちなみにPSとはPutti Second(スモールセコンド)の意味。パーツ数は130個。
<b>ケースのバリエーションは全部で4つ</b><br>現在発売されている5196のケース種類は4つ。プラチナケースのみ、文字盤のデザインが異なり、ブレゲ数字スタイルとなる。右からプラチナケース403万円、18KWGケース240万円、18KYGケース219万円、18KRGケース240万円。

 

[時計Begin 2020 SUMMERの記事を再構成]