2021.02.24

買えないけどやっぱり見たい!これが最新の超複雑時計だ!【おたくの細道】

毎度マニアな時計の情報を届けるこのコーナー。今回は、機械式コンプリケーションウォッチの最新事情について。もはや単純なトゥールビヨンでは太刀打ちできない!?

 

買えないけどやっぱり見たい!これが最新の超複雑時計だ

超一流ウォッチメーカーが渾身で作った時計の最先端

先日、『超弩級複雑腕時計図鑑』という本が出版された。トゥールビヨン、ミニッツリピーター、パーペチュアルカレンダー、スプリットセコンド・クロノグラフの4大機構を中心に、ごく一部のメーカーしか作りえない時計の最高峰として崇められる複雑時計。

だが業界全体の実力が底上げされた近年、もはやそれだけで目新しさはなくなり、それらをどうアレンジし、他の複雑機構と組み合わせるかが勝負となる。そこで今回は複雑時計の最新傾向を読み解き、本書で掲載している75点から筆者がスゴイとうなった3つの時計を勝手に番付。

複雑機構を複数搭載したモデルを”グランドコンプリケーション”と呼ぶが、ジャガー・ルクルトのそれは、フライングトゥールビヨンが1周1分で自転しながら、それを載せた星座表付きの文字盤も約24時間かけて1周する。文字盤ごとダブル回転するトゥールビヨンは他にアントワーヌ・プレジウソなどにも。また、ミニッツリピーターは、ゴングをサファイヤクリスタルに取り付け、それが音響盤となって音を増幅させている。

一方、トゥールビヨン以外で時計の精度を高める複雑機構を取り入れたのが、クロノメトリー・フェルディナント・ベルトゥー「クロノメーターFB 2RE」だ。”ルモントワール・デカリテ”と呼ばれるこの機構は、通常のテンプとは別に専用のひげゼンマイを備え、そこに蓄積したエネルギーを定期的にテンプに送ることでトルクを安定させる仕組み。コンスタントフォース機構に似たシステムだが、どちらも生まれた時代は古く、近年になって再び脚光を浴びた機構だ。

そして、時間表示で斬新だったのがウルベルク「UR‐220 ファルコンプロジェクト」。こちらは3つの回転する立方体が交代でレトログラード分表示をしつつ、立方体の各面の数字が入れ替わって時表示も行う。これも19世紀に開発された機構で、同様のシステムを古典的デザインで仕上げたのがパルミジャーニ・フルリエの「トリック・キャピトル」だ。

この本には他にも「これを機械式でやる!?」と、思わず唸る複雑時計が目白押し。お値段ウン千万円の世界だけにそうそう手は出せないが、世界最高峰の最新作を眺めれば時計の”今”がまるわかりに。

 

横綱

ジャガー・ルクルト
JAEGER-LECOULTRE
マスター・グランド・トラディション・グランド・コンプリケーション
文字盤が回転する超複雑系

トゥールビヨン、ミニッツリピーター、天体表示、3つの複雑機構を搭載。60秒で1周するフライングトゥールビヨンが、天体星座表とともに1恒星日(約24時間)かけて反時計回りに1 周。また、ミニッツリピーターには美しい音色の角型サファイアゴングを取り入れた。4320万円(参考価格)問い合わせ:ジャガー・ルクルト

 

大関

クロノメトリー・フェルディナント・ベルトゥー
CHRONOMÉTRIE FERDINAND BERTHOUD
クロノメーター FB 2RE
Wの特殊機構で高精度を実現

一見エレガントな3針だが、2つの特殊な
複雑機構を搭載。テンプに1秒周期で動力を供給する”ルモントワール・デカリテ”をガンギ車と同心に、滑車(フュゼ)とチェーンからなる”フュゼ・チェーン”を香箱の横に装備。これらが連動してトルクを安定させ、精度向上を図った。2674万円(予価)。問い合わせ:ショパール ジャパン プレス

 

関脇

ウルベルク
URWERK
UR-220 ファルコンプロジェクト
モダン仕様の特殊回転表示

斬新かつダイナミックな時間表示を採用したモダンデザインモデル。三叉状の回転体が”時”をデジタル表示しながら、ポインター付きのフレームと合体して”分”をレトログラード表示。また、ケース裏には累計作働時間を月単位で示し、オイルの交換時期を知らせる特殊インジケーターを装備。日本未展開モデル。

 

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