2021.12.18

達人が選ぶフィールドの「相棒」とは?アウトドアのプロ、冒険家とその時計

写真:Royal Geographical Society/アフロ

達人が選ぶフィールドの「相棒」とは?
アウトドアのプロ冒険家とその時計

さまざまな世界での偉業達成の陰に、タフネスを追求した名作時計の存在あり。野外活動の達人である冒険家たちはいったいどんなモデルを選んだのか?

その時代渾身のタフな姿で命がけの挑戦をサポート

アウトドア時計がその実力を発揮するのは、雪山や寒冷な平原といった極限の地。当然ながら各時代の冒険家たちも当時最高峰のタフ仕様を求めた。

1950年代に人類初のエベレスト制覇を達成したエドモンド・ヒラリーは、英国のスミス「デラックス」を選んだ。完全な防水時計すらないこの時代、名門デニソン社のSS製防水ケースを採用し、ムーブに特殊オイルを施すことで、極寒の雪山を乗り切った。

また、日本が誇る冒険家の植村直己は、北極圏での犬ぞり旅にセイコーのダイバーズを選択。150m防水、4時位置リューズを堅牢に守る特殊ケースを携え、長期にわたる過酷な旅を支えたこの名作は、植村の名とともに人々の記憶に刻まれた。その遺志を継ぐ野口健が、質実剛健で知られるIWCのモデルを愛用しているのも、けっして偶然ではないだろう。

彼らにとり冒険とは、常に死と隣合わせの危険な挑戦。その相棒となる時計には一切の妥協が許されないのだ。

1953年、エドモンド・ヒラリーは英国エベレスト隊に参加。同年3月よりネパール側から入山し、5月29日にテンジン・ノルゲイとともに山頂に到達した。

エベレスト登頂に貢献した英国時計
エドモンド・ヒラリー×
スミス
デラックス

エドモンド・ヒラリー(1919~2008)は、ニュージーランド出身の登山家。1953年に人類初のエベレスト登頂に成功し、英国王室からナイトの勲位が授与された。ヒラリーがエベレスト登頂時に着用したのが、英国の時計会社スミスの「デラックス」。前年の’52年に販売を開始した同社を代表するモデルである。

ヒラリーがエベレスト初登頂時に使用した1953年製のスミス「デラックス」。英国の名門デニソン社によるSS防水ケースを備えたスモールセコンド付きモデルで、搭載ムーブには低温に対応する特別な潤滑油が施されていた。

植村氏は1974~76年に犬ぞりで北極圏12000kmを走破。’78年には世界で初めて単独の犬ぞりで北極点に到達した。’84年に国民栄誉賞を受賞。
写真:毎日新聞社/アフロ

歴史的冒険に同行したダイバーズ
植村直己×
セイコー
1970メカニカルダイバーズ

植村直己(1941~1984)は兵庫県出身の日本を代表する登山家、冒険家。1970年に日本人初のエベレスト登頂に成功し、同年、世界初の五大陸最高峰登頂者となる。また、’74~’76年には北極圏犬ぞり冒険旅行を行うが、その際に着用した時計が’70年発売のセイコーダイバーズであった。

セイコーが1965年に開発した国産初ダイバーズに続き、’70年に発表されたモデル。150mの防水性を備え、個性的形状の流線型ケースを採用した。植村氏が愛用したことから"植村ダイバー"の名でも親しまれる。

1960年代以降、ライバルのエンゾ・マイオルカと記録更新を競い合ったマイヨール。その戦いは映画『グラン・ブルー』で描かれ、世界中で感動を呼んだ。
写真提供/オメガ

100mオーバーの潜水競技に採用
ジャック・マイヨール×
オメガ
シーマスター120m

ジャック・マイヨール(1927~2001)は上海生まれのフランス人フリーダイバー。1976年、49歳のときに、イタリア・エルバ島で人類初となる素潜りでの100m潜水記録を達成する。その後、’81年に101m、’83年に105mと続けて記録を更新。’81年にはオメガの「シーマスター 120m」を腕に着けて臨んでいる。

マイヨールが101mの潜水記録達成時に着用した初代「シーマスター120m」。Cal.1337搭載のクォーツモデルで、逆回転防止ベゼルとねじ込み式リューズを採用した。リューズで時、2時位置のボタンで分・秒を調整する。

「深みある青文字盤がヒマラヤの空を思わせる」と、次回ヒマラヤに愛娘と挑む際の時計に選んだのがIWCの「パイロット・ウォッチ・クロノグラフ」だ。
写真提供/野口健事務所

歴代のIWCモデルを登山時も愛用
野口健×
IWC
パイロット・ウォッチ・クロノグラフ”ブルーエンジェルス”

日本を代表するアルピニスト、環境活動家の一人である野口健氏。時計好きで知られ、なかでもIWCのモデルを愛用。インヂュニアやポルトギーゼなどを着用してきたが、最近のお気に入りは「パイロット・ウォッチ・クロノグラフ」。軽量で凍てつく気候でもセラミックケースは肌にやさしいから、と語る。

軟鉄インナーケースの装備により耐磁性能を高めたフライバック機能付きクロノグラフ。12時位置に同軸の時分積算計を備える。自社製Cal.89361搭載。自動巻き。径44.5㎜。セラミックケース。137万5000円。問い合わせ:IWC