2022.05.19

デジタル表示時計の元祖とは?

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デジタルの元祖らしい斬新すぎる復刻スタイル

2020年にパルサー50周年を記念して発表されたハミルトン「PSR」。ケース右下の刻印を除き、”P2”のデザインを忠実に再現している。

ハミルトンから一昨年「PSR」の名で復刻され、ちょっとした話題になった「パルサー」。筆者が愛してやまない70年代レトロフューチャーモデルである。

パルサーは正式名称「ハミルトン パルサー タイム・コンピューター」として19
70年に登場。セイコーが初のクォーツ腕時計を発表した翌年のことである。名前に”コンピューター”が付くのは、このモデルがディスプレイに数字で時間を示す世界初のデジタル表示式腕時計だったからだ。今ではごくありふれたデジタル時計だが、本作が登場した時の衝撃は想像に難くない。ただし現在の液晶デジタルとは違い、電池を多く食う発光ダイオ
ード(LED)方式のため常時点灯させることはできず、ケース横のボタンを押した際にのみ時間を表示する仕組みとなる。

初代パルサー/1970年に世界で初めてLEDによるデジタル表示を実現したパルサー。写真はその第2世代モデル”P2”。’73年公開の映画『007/死ぬのは奴らだ』でジェームズ・ボンドが着用した。

パルサーの初号機は”P1”と呼ばれ、流通量が非常に少なかったようで、現物はほとんど残っていない。今も中古市場で目にできるのは第2世代の”P2”から。このP2は映画「007」シリーズでジェームズ・ボンドの最新道具として紹介されたことでも名を残している。また、復刻版「PSR」で採用されたのもP2のデザインである。その後、日付表示用の左ボタンを備えた”P2 デイトⅡ〟も登場し、P3、P4……と機種変更を重ねていったが、70年代末にパルサーの商標をセイコーに売却したことで”ハミルトンパルサー〟の歴史は幕を閉じた。

じつはパルサーが復刻されたのは、今回の「PSR」が初めてではない。筆者の知るかぎり、最初の復刻は2002年、映画『メン・イン・ブラック2』のコラボモデルである。本作ではLEDに代わって液晶デジタルが採用され、元祖パルサーと同じTV画面のような横長のディスプレイに曜日・時・分・秒を常時表示。ケースはP3をモチーフにしたと思われる肉感的なデザインで、やはりP3同様、蛇腹状の一連ブレスレットを備えていた。

主人公たちが秘密組織のエージェントであるこの映画とのコラボは、オリジナルのP2を007が着けていたことを考えると運命のように思えてならない。

そして最大の問題作は2010年、パルサー誕生40周年記念に発売された「パルソマティック」だ。本作はオリジナルの意匠を継承しつつも、かなり現代的なアレンジを加えた横長のケースデザインが特徴に。重厚でシャープな作りのケースに、サファイアクリスタル風防を装備した高級仕様となる。

2010年発表の「パルソマティック」(筆者所有)。自動巻きシステムにより液晶デジタル表示を行う特殊モデル。もちろん電池は必要ない。通常のSSのほか、ブラックまたはゴールドPVDケースがラインナップした。

だが問題はそのデザインではない。時計のディスプレイには時・分のデジタル表示。リューズの切り替えで日付は表示するものの、それ以上の追加機能はなく、ライトを点灯させることもできない。ずいぶん不便なクォーツ時計だと思いきや、ケースを裏返せばそこには自動巻きムーブが。

筆者所有のパルソマティック。表は通常のデジタル表示だが、裏返すとなんと機械式!

なんとこのモデルは自動巻き機構で液晶デジタル表示を可能にする、特殊システム搭載の機械式デジタルウォッチなのである。オリジナルの外観そのままの「PSR」を含め、近年は10年周期で驚きと喜びを提供するパルサー。60周年にはどんなスタイルのデジタルが登場するだろうか?

 

ハミルトン公式サイト

[時計Begin 2022 SPRINGの記事を再構成]

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